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Thursday, 27 April 2017

飯田市川本喜八郎人形美術館 2017 源氏と木曽

三月から四月にかけて飯田市川本喜八郎人形美術館に行つてきた。
二月末に展示替へがあつて、新たな展示内容を見に行つた。

前回は江東の群像のケースについて書いた。
今回は「人形歴史スペクタクル 平家物語(以下、人形劇の「平家物語」)」の「源氏と木曽」のケースについて書く。

江東の群像のケースの右、展示室の奥にあるケースには、左から弁慶、馬上の義経、政子、頼朝、巴、馬上の義仲、葵が並んでゐる。

人形劇の「平家物語」の人形は、TVに登場したものではない。
飯田にゐるのは後に作られた人形だ。
TVに登場した人形は渋谷ヒカリエの川本喜八郎人形ギャラリーで見ることができる。

弁慶は、こちらを向いて立つてゐる。
両足を開いてすつくと立つその姿はとても力強い。
弁慶らしい立ち姿だ。
直接見比べたわけではないけれど、人形劇に出てゐた弁慶と飯田の弁慶とでは、それほど違ふ点は見受けられない。
ブレの少ない登場人物なのだらう。

義経はその後方で白馬に乗つてゐる。
義経は人形劇のときの人形と飯田にゐる人形とではかなり違ふ。
これも直接見比べたわけではないけれど、人形劇に出てゐた義経の方が凛々しい。飯田にゐる義経の方がやさしげで顎がすこし細いやうに思ふ。
義経といふと「実は背が低くてみそつ歯だつた」と云はれたりだとか、「平家物語」などでは鵯越の坂落としを実行したり敵の群れゐる中落とした弓を拾ひに行つたり八艘跳びをしてみたりと非常にアクティヴな武将としての面が伝へられてゐる一方で、文楽や歌舞伎ではそんなことはおくびにも出さないやうな高貴の御曹司として描かれてゐる。
大河ドラマの「草燃える」では国広富之が義経を演じてゐた。腰越で止められて頼朝から拒絶されたと知つて以降のキレつぷりつたらなかつた。後白河院(紀尾井町だ)の腰が完全に引けてゐたもの。
有名なだけにいろいろな切り口のある人物なので、人形劇放映後にまた違つたイメージで作つてみたのかなあ、などと飯田で見てゐると思ふ。

義経の右前方に政子が立つてゐる。
これまで飯田では「え、政子にもこんな面があつたのか」と驚くやうな展示が何度かあつた。
はぢらふ政子とかね。
懐かしい。
今回の飯田の政子は毅然としたやうすで立つてゐて、如何にも北条政子といつた印象を受ける。
人形劇では恋しい頼朝に恨み言を叫んでみたりとか、結構可愛いところもあつたんだけどね。

政子の右後方のやや高いところに頼朝がゐる。
頼朝は、人形劇のときとは全然別人の趣がある。
いま渋谷に人形劇に出てゐたときの頼朝がゐる。
人形劇の頼朝は、曹操によく似てゐる。
曹操にほくろをつけて衣装を黒くした感じだ。
飯田の頼朝はもつとおだやかな表情をしてゐる。茫洋として見えないこともないけれど、その分ふところは深さうだ。
頼朝のイメージといふと、あの肖像画や(頼朝ではないといふ説もあるけれど)、「草燃える」の石坂浩二の佐殿、あるいは二月に歌舞伎座でかかつた「大商蛭小島」の頼朝のやうな、都から来たなまつ白い(エセ)インテリ、といつた感じなのではないかと思ふ。
あまり先頭に立つて戦とかしさうにない。
中村吉右衛門の主演した「武蔵坊弁慶」では菅原文太が頼朝を演じてゐてはじめて見たときにびつくりした覚えがある。
菅原文太が頼朝? あり得ん。
と、そのときは思つたけれど、見てゐるとこれがまたありなんだなあ。
そして飯田の頼朝。
個人的には飯田の頼朝はとても好きだ。
かういふとらへどころのなささうな人だつたのではないかなあ、といふ気がしてくる。

巴・義仲・葵は鎧姿で、馬上の義仲を中心に巴と葵とが脇侍のやうに立つてゐる。

人形劇の巴からは母性を感じる。
義高がゐたからかもしれない。
葵が山吹と義仲をめぐつて争ひ、ともすると巴にもたてつくやうなことをする中で、ぢつと耐へ、ときに強く主張する、そしてその主張は正しい。
飯田の巴はもうちよつと若さのある感じ、だらうか。人形劇のときとそんなに変はつたやうな感じはない。

川本喜八郎は義仲に思ひ入れがあつたのだといふ。
以前、この美術館で上映してゐたインタヴュー番組で聞いた。
人形劇に出てゐた方も飯田にゐる方も、義仲はそれはそれは様子がいい。
草摺も山を思はせるやうな緑でこれがいい色なんだなあ。
今回の展示では、その様子のよさが前面に出てゐる。見とれるで、しかし。

葵も人形劇とそんなに変はつたやうすはないやうに思ふ。
これまでの展示だと、ときに歌舞伎役者の中村福助に似て見えることもあつたりしたのだが、今回はそれはない。
恋に生き恋に死んだ人といふイメージのあるせゐか、巴と比べると若干華やかな感じがする。
伊那の出身といふことで、展示する側も力が入るのかもしれない、と思ふのは僻目かな。

以下、つづく。

「項羽と劉邦」展その一はこちら
「項羽と劉邦」展その二はこちら
「項羽と劉邦」展その三はこちら
エントランスから宮中の抗争まではこちら
連環の計はこちら
玄徳の周辺 その一はこちら
玄徳の周辺 その二はこちら
曹操の王国 その一はこちら
曹操の王国 その二はこちら
江東の群像はこちら

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