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Friday, 31 March 2017

国語の問題なんぢやない?

昨日紹介したBBCの記事で、日本の英語教育の問題のひとつとして「文法や語彙、書くことに重点が置かれてゐて、重圧となるテストをくり返し行ふ」ことがあげられてゐた。

この記事では「英語を喋れるやうになる」ことが重要であるといふことになつてゐる。
ゆゑに、学校の英語の授業で文法や語彙、書くこと(といふよりは「読むこと」ぢやない?)に重点をおいてゐてはダメ、といふことになるのはわかる。

……いや、ほんとはわからない。

日本語で考へてみやう。
新聞を読んでゐると、意味はわかるけれども自分では使はないし使へないことばといふのがいくつも見つかる。
意味がわかるといつても、なんとなくわかる、くらゐのことばも多い。

自分が使へることばには二種類あつて、ひとつは読んだり聞いたりしたらわかるけれど書いたり話したりはできないことば、もうひとつは書いたり話したりできることばだ。
前者の方が数は多い。
読み聞きしてわかることばの量で書け話せることばの量が決まつてくる。
外国語教育において語彙と読むこととを重要視することはごく自然なことだ。
単語がわからなければ喋りやうがない。

文法はどうか。
たとへば英語と日本語とでは、文の形がまつたく異なる。
「I go to school.」を単語単位に訳すと「私は・行く・へ・学校」になる。

また、英語には代名詞や動詞、形容詞などに変化がある。
代名詞には主格・所有格・目的格があり、動詞には現在形・過去形・過去分詞形・現在進行形がある。
名詞には単数形と複数形とがあるし、形容詞や副詞の音節の短い単語には比較級と最上級とがある。

英語圏の人は知らず知らずのうちに身につけるのだらうが、慣れない人間にはさうはいかない。
やみくもに go と went と gone とを別々に覚えるよりは go の過去形が went で、と覚えた方がいい。
go にはたくさん熟語がある。went でも go で覚えたのとおなじ数だけ熟語を覚えるのか?
まさかね。

文法や語彙、読むことに注力するから話せるやうにならない、といふことはない。
話せるやうにならないことにはほかに理由がある。

それに、世の大半の「英語を話したい」と思つてゐる向きの「話したい」内容は、授業で学ぶまでもないやうなことばかりだと思ふんだけど、まちがつてゐるかな。

NHKラジオ講座に「英会話タイムトライアル」といふ番組がある。
「英語の瞬発力を鍛える」と称して、英語で話しかけられたら即座に英語で返す練習をする番組だ。
おほよその「英語で喋りたい」はこの番組で解決できるのではないかと思つてゐる。
この番組を聞いてゐると、「これつて、学校で教へる内容ぢやないよな」と思ふ。
でも求められてゐるのはかういふことなんだよね、きつと。

以前、職場で隣の席にダイヴィングが趣味といふ人がゐた。
海外にも潜りに行くのださうである。
現地の人と話したいと思ふのだが、生憎と英語で喋ることができない。
その人が周囲の人と話してゐていふ。
「英語、勉強したいけど、さういふんぢやないんだよね」
周囲の人も「わかるわかる」と相槌を打つ。
「さういふんぢやない」といふのは、多分に語彙を増やすとか文法的に正しい話し方をするといふのではない、といふことだらう。
潜りに行つて、現地の人と挨拶を交はしたい。
それでいい、といふことだらうと推測する。
あるいは、潮の状態やその日の海のコンディションの話をしたいといふ意味だつたのかもしれない。

挨拶ていどのことであれば、旅行英会話の本でCD付のものでも買へば事足りる気がする。
ダイヴィングに関はる話をするならば、語彙を増やす必要がある。
あるいは、知つてゐる単語をうまく使へるやうになればいいかもしれない。
文法はすでに学んでゐるのならもう学ぶ必要はない。復習は必要かもしれないけれどね。

結局、文法と語彙とは必要だ。

問題は、学校ではダイヴィングに関はる語彙を学ぶ機会がないかもしれないことだ。
それはもう個人でなんとかするしかない。
以前書いた「ほんたうに好きなことなら必要にかられて学ぶだらう」といふのはこれにあたる。

個々の生徒の趣味嗜好に応じた内容で外国語を学べればいいのかもしれないが、大人数の教室ではそれもままなるまい。
一番いいのは、学校で学んだことを自分の好きなことに応用してみる、といふことだ。
やつがれなら芝居とかあみものとかかな。
「先週の土曜日に歌舞伎を見に歌舞伎座に行きました。大好きな役者が出てゐて、夢中で見ました」などといふことは、中学校で学ぶていどの英語で話せることだ。
なにが気に入つたのか、それはなぜかが話せるともつといい。
でもそれつて、英語の授業の範疇なのか?
どちらかといへば、国語ぢやない?
日本人の英語が喋れない問題で重要なのは英語の授業ではなくて国語の授業だと思ふ所以である。

え、聞き取り?
さうねぇ、それは問題ねぇ。

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