寒さと管子と大統領
ひどく寒い。
職場も寒ければ自宅も寒い。
職場が寒いのは全館空調のため細かい制御がきかないからで、自宅が寒いのは手元不如意だからだ。
自宅が寒いのだから、暖房をつければいい。
しかし、つけるには灯油がゐる。
灯油を購ふ代金はなんとか捻出するとして、灯油を入手しに行く時間がない。
以前はガス暖房が使へたが、家人が穴をふさいでしまつた。
電力を使用する暖房は電気代が怖くて使ふことができない。
床暖房を取り入れるなどリフォームするなどもつてのほか。
ましてや引つ越しなど論外である。
そんな余裕はないのだつた。
月曜日も火曜日も、暖房なしで乗り切つた。
今朝灯油を入手する算段がついたので、今夜はファンヒータを稼働することができるだらう。
寒いのは季節のせゐだ。
気候のせゐでもある。
それはもうどうしやうもない。
それに対して有効な対応策がとれないのは、冒頭にも書いたとほり生活に余裕がないからだ。
生活に余裕がないと、即物的なことしか考へなくなる。
以前、「リベラルは抽象的なことばや表現を好む」といふ記事をWeb上で読んで、「なるほどなあ」と思つた。
日々住むところや食べるものの心配をしなければならない人間の心には届かないはずである。
「衣食足りて礼節を知る」といふことばがある。もととなることばは「管子」に掲載されてゐるといふ。
これをもつて「衣食が足りてゐるのに礼節を知らない人間が多すぎる」などと難ずる向きがあるが、それは違ふんぢやないかな。
礼節を知るにはまづ衣食が足りてゐることが必要だ、といふことであつて、衣食が足りてゐれば礼節を知るはずだ、といふ意味ではないんぢやあるまいか。
辞書などには「生活が安定すればおのづから礼儀を重んじるやうになる」といふ解釈が載せられてゐることもあるけれど、「生活が安定すればおのづから礼儀を重んじる余裕も生まれる」くらゐが正しいやうな気がする。
つまり、衣食が足りると余裕が生まれる、といふことだ。
米国大統領選についてはまつたく追ひかけてゐなかつたのでよくわからない。
でも、まづ衣食が足りるやうになれば、自然といろんなことを考へる余裕も生まれるんぢやないか。
すなはち、新大統領が自分の目指すところをあるていど実現できたら、似たやうな人を大統領に選ぶ人は少なくなるのではないだらうか。
さう考へると、あるていどは成功してほしいなあ、と思つたりもするのだつた。
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