ペンの役割
ナガサワ文具センターの七本差しマルチペンケースを買つてしまつた。
限定色の六甲アイランドスカイだ。
ナガサワのペンケースは、ボルドー色の五本差しも遣つてゐる。
そんなに差すペンがあるのか。
あるんだな、これが。
しかし、五本差しを持つてゐることを考へると、とんだ無駄遣ひな気がして、買つた直後は落ち込んでゐた。
七本差しは発表された当時からいいなと思つてゐた。
十本差しもいいけれど、重たくなるだらう。
七本差しでも重さはそんなに変はらないかもしれない。
でも「マルチ」といふことでiPhoneやちよつとしたメモ帳や5x3カードを入れられるといふのは、とてもいいかもしれない。
さう思つてゐたのだ。
それでうつかり買つてしまつたわけだが、買つた直後に無駄遣ひに気がつくといふ、とんだ体たらくである。
なぜ無駄遣ひと思つたかといふと、なくてもゐられるからだ。
手元に七本差しマルチペンケースがなくても、生活してゐるぢやあないか。
なのになんで買つてしまつたのだ。
やつがれの莫迦莫迦。
しかし、ペンケースはやつてきて、現在傍らにある。
六甲アイランドスカイはその名のとほり空色で、光の当たりかたによつては「人形劇三国志」の孔明ブルーにも見えるし、水島ブルーつぽくも見える。
問題は、どのペンをさして持ち歩くか、だつた。
七本といへば賤ヶ岳の七本槍だらうか。
賤ヶ岳の七本槍といふと、うつかり「戦国鍋TV」を思ひ出してしまつて、なんだか違ふ方向に向かつてしまひさうな気がした。
七人。
さう、「七人の侍」だ。
といふので、突然手持ちのペンを見ながら「これは勘兵衛、これは勝四郎」とか考へはじめてしまつたのが運の尽きだつた。
これ、なんていふんだらう。
戦艦などや刀を人間に置き換へるのが擬人化なら、擬ペン化?
勘兵衛は決まつてゐる。
金ペン堂で購入したモンブラン146だ。
ほんたうは国産だよなあ、と思ふのだけれども、我が家で頭領格といつたらこのペンだ。
ちよつとあらたまつた手紙を書くときなどはまづこれ、と決めてゐる。
その流れから、七郎次はパイロットのカスタム823細字に決まる。
勘兵衛は中細だ。モンブランの中細だからそれなりに太い字が書ける。
もうちよつと細い字で書きたいといふときに出てくるのが七郎次なのだつた。
しかもたくさん書けるときてゐる。長いからね。
中に入つてゐるインキもモンブランとおなじウォーターマンのブルーブラックだ。
菊千代はピンクのキャップのカクノ。「可愛い」「スチールペン」といふことだけで選んだが、一番イメージが合つてゐるやうな気もする。
菊千代を誤解してゐる?
さうかもしれない。
以下、パイロットのフォルカンが五郎兵衛、ウォーターマンのクルトゥールが勝四郎、セーラーのルクールが平八、中屋の十画軸が久蔵とつづく。
フォルカンはちよつと賢しげな字が書けるやうな気がするから。
クルトゥールはなんとなく若やいだ気分になるので。
とかなんとか、まあ、そんな感じだ。
実際にマルチペンケースに入れてゐるのはこの七本ではない。
七人にあたる役割はないけれど持ち歩きたいペンが入つてゐたりする。
さう、ペンには役割がある。
たくさんあるのはそのせゐだ。
一本でなんでも済めばよいけれど、世の中なかなかさうはいかない。
絶対黒い字で書かなければならないこともあるし、太い字の方がそぐふもの、細い字でないと書けないもの、赤字で書きたいもの、さまざまある。
七本くらゐは必要なんだよね、どうしても。
といふ云ひ訳が実感できたので、七本差しマルチペンケースを買つたのは正解だつたのかもしれない。
と、日記には書いておかう。
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