先代の幸四郎の「鬼平犯科帳」を見てゐる
先代の松本幸四郎の「鬼平犯科帳」を毎回楽しみに見てゐる。
もうすぐ第一シーズンが終はる。
終はるまへになんだし録画できてゐなくて見てゐない回が2つほどあるが、いままで見た中で気に入つた話をまとめておきたい。
ベスト3と思つたが、4になつてしまつた。
順不同で以下のとほり。
第三十話 盗法秘伝
第四十話 かわうそ平内
第五十三話 おせん
第六十一話 あほうがらす
以上。
「鬼平犯科帳」を見ながら夕飯を食べてゐる。
そんなに一生懸命見てゐるわけではないのだが、「あれ?」と思ふ瞬間があつて、引き込まれるやうにして見たのがこの四話だ。
第三十話の「盗法秘伝」は、浜松から帰路についた鬼平が盗人(花澤徳衛)と出会ひ、盗人の心得を伝授されるといふ話だ。
第四十話の「かわうそ平内」は、みるからに乞食とおぼしき男(有島一郎)が実は大変な剣豪で、とても敵を討てないやうな兄弟を短期間で鍛えて敵をとらせる話だ。
第五十三話の「おせん」は、放蕩無頼の息子(草野大悟)を持つた老母(原ひさ子)と息子と関係のあつたおせん(堀井永子)との交流を描いた物語である。
第六十一話の「あほうがらす」は、妾を斡旋する女衒である「あほうがらす」の男(加藤武)が商家の主たる兄(江戸屋猫八)とその息子との仲をとりもちつつ、同業者で殺人犯の疑ひをかけられてゐるものを追ひつめる手助けをする、といつたところか。
「おせん」を除き、いづれも見てゐて楽しい気分になつてくる話ばかりだ。
「おせん」だつて、おせんと老女との仲を見てゐると、なんとも幸せな気分になつてくる。
「盗法秘伝」では、高麗屋と花澤徳衛との会話に引き込まれた。
なんとも間がいい。
相手が火付盗賊改方の長谷川平蔵と知らずして「自分の盗人としての技を伝へられるかもしれない」と期待しつつ鬼平に話しかける花澤徳衛と、仕事の上の興味もありつつ相手に惹かれて話を受ける幸四郎と、ふたりのやりとりの妙に思はず箸を止めた。
夕食を食べながらのTV鑑賞は、見てゐるやうで見てゐない。
耳から入つてきたせりふの端々に注意を引きつけられる。
そんな感じだつた。
「かわうそ平内」は、有島一郎の飄然としたやうすに参つてしまつた。
汚いんだよ、匂つてきさうなほど。
風呂には何日も入つてゐないだらう。忠吾(志ん朝)もそんなことを云つてゐた。
しかるに軽妙かつ自在。
この日は日中いろいろとおもしろくないことがかさなつてくさくさした気分でゐたのだが、「かわうそ平内」を見て、といふよりは自由自在融通無碍な有島一郎を見て、一気にご機嫌になつてしまつた。
「おせん」も、原ひさ子につきる。
第二シーズンで前後篇の「狐火」に出る草野大悟の出来や如何にと思つて見始めたはずが、原ひさ子のこのころからとにかく可愛いおばあさんぶりにやられてしまふ。
最初は老女を邪険にあつかつてゐたおせんがだんだん老女に惹かれてゆき、最後は自分のおつかさんのやうに思ふやうになるといふ話にもじんときてしまつた。
ダメなんだよ、可愛いおばあさんとか。
ずるいよ。
「あほうがらす」は、加藤武が江戸屋猫八や堺左千夫、澤村いき雄とやりとりするときのせりふがいい。
江戸前つてかういふのを云ふんだよね、きつと。
鯔背でね。
猫八がちよつと野暮つたいのがコントラストになつてゐる。
澤村いき雄は七代目宗十郎のもとにゐたことがあるとweb検索で知つた。これがまた粋な爺さんでね。
これもせりふがまづ耳に入つてきて引き込まれるやうに見た回だ。
高麗屋の「鬼平犯科帳」には池波正太郎つぽさがあまり感じられない。
でもその点を気にしたことはほとんどない。
原作はあつても全然別物。
さう思つて見てゐる。
楽しければいいぢやん、みたやうな感じかな。
このあと、第二シーズンも引き続き再放送してもらへるのかな。
してもらへるとして、第一シーズン同様に楽しいのだらうか。
いま気になつてゐるのはそこである。
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