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Friday, 04 November 2016

甘えんぼ

先週の月曜日のこと、職場に着いてもなにも手に着かない。
いつものことなんだけれども、なぜだか心がひどくしづんでしまひ(それもいつものことではあるが)、なにもできない状態だつた。
いつもは「なにもしたくない」状態で、「できない」と思ふことはない。

なぜだらうと考へて、もうこの世に平幹二朗が存在しないと知つてしまつたからだなあ、としみじみ思つたことだつた。

そんなに好きといふわけではなかつた。
追ひかけてもゐなかつた。
それでも、訃報を聞けばショックを起こすくらゐには好きだつたわけだ。

「篤姫」を第一話しか見てゐない所以は、第一話で平幹二朗演じる家老が死んでしまつたからだ。
平幹二朗を出しておきながらもう出ることのない(回想場面では出るかもしれないけど)大河ドラマなんて、見る価値がない。
それくらゐは好きだつた。

あんまりにもなにもできる気にならないので、その日、小林正樹監督作品「切腹」を見に行つた。
平幹二朗は出てはゐないが、俳優の死のショックから立ち直るには、なにか優れた芝居・映画・ドラマを見るしかない。
さう思つたからだ。

正解だつた。
「切腹」を見て元気になるつてなにかがとつても違ふ気がするけれど、でも、ちよつと気分を持ち直した。
「切腹」、おもしろいよね。
主題は重たいけれど、エンタテインメントとして楽しく(といつたら語弊があるかもしれないが)見られる。

「切腹」については双方の甘えが原因と思つてゐる。
おなじ武士だもの、云はなくたつてわかつてくれる。云はなくたつて、武士とはかうしたものだらう?
さういふ互ひの思ひ込み、もつといへば甘えがああした事件を生んだ。
当事者たちが侍だつたから、extreme なことになつてしまつた。
それだけのことだ。

なので、「侍としてのあり方の非情さ」とかはあまり感じない。
「云はなくてもわかつてくれる。おなじ人間だもの」といふのは侍でなくても持つてゐるものだからだ。

それにしても平幹二朗の訃報はショックだつた。
生きてゐて好きな俳優がまたゐなくなつてしまつた。
「ま、まだあの人が生きてるもんね」とか「あの人も存命だ」とか、一生懸命指折つて数へちやつたよ。
あまりにもショックで。

そんなことはあんまり口にしたりしないから、全然通じてないんだらうけどね。

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