アウロラのシガロに憧れて
久しぶりにこれはほしいといふ万年筆に出会つてしまつた。
アウロラのシガロである。
たばこは吸はないし吸つたこともない。おそらく今後も吸ふことはないだらう。
家族はみな喫煙者か元・喫煙者ばかりだから受動喫煙はさんざんやらかしてゐるんだけれどね。
なぜ吸はないのか。
おそらくこどものころから気管支などの呼吸器周りが弱かつたからだらうと思ふ。
すぐ喉が痛くなるし、すぐ風邪をひく。
無意識のうちに防衛機能が働いてゐるんぢやないかと踏んでゐる。
それでも、煙管は一度は使つてみたいかなあ、といふ気がする。
小学生のときだつたか、修学旅行先で唯一買つてきたおみやげが煙管だつた。
ちよつと長めの羅宇の黒くて艶消しの、色気もそつけもないやうな煙管だつたが、気に入つてしばらくは手元においてゐた。
「鬼平犯科帳」で鬼平が使つてゐるやうな煙管もいいよねえ。鬼平の父親が京都の職人に頼んで数年がかりで手に入れたといふ、「大川の隠居」のエピソードも思ひ出されるあの煙管。
落語など聞きに入くと、職業によつて煙管の扱ひが違ふのもおもしろい。あれもやつてみたいよなあ。大工のやうな持ち方とかさ。
あとパイプね。
パイプにはあこがれる。
なんだらう。
シャーロック・ホームズかな。
あるいは坂田健かその両方か。
煙管やパイプなら、たばこをつめなくても単に口にくはへるだけていいやうな気もするしね。
たばこだつて、様子よく吸へるのなら吸つてみたい気もしないではない。
ローレン・バコールみたやうにたばこを喫することができるのなら、一度はのんでみたいものだ。
残念ながらローレン・バコールがすてきなのはローレン・バコールだからで、どう逆立ちしてもああはなれない。
だから結局たばこを体験することなくここまできてゐる。
葉巻にはあまりあこがれはない。
ないけれど、アウロラのシガロはいいなあ。
ちよつとたばこを吸ふやうに口元に近づけてみたりさ。頬杖をつくときにちよいと指にはさんでみたりとか。
インキはなにがいいだらう。
紫煙といふくらゐだから、紫を思はせるやうなインキがいいだらうか。
あるいはたばこ自体のやうな色もいいかもしれない。
Pen and message. にはそのものずばり Cigar といふ名前のインキがあつたやうに記憶する。
これ以上ペンは増やさないつもりでゐる。
それに、アウロラのシガロはやつがれには過ぎたペンだ。
万年筆売場のショーケースに展示された姿を見て、うつとりするくらゐかな。
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