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Friday, 07 October 2016

気持ちよく芝居に行つて帰るには

芝居の好きな人は出かけるのも好きなのだらうか。

時々疑問に思ふ。
自分は出かけるのが嫌ひだからだ。
出かけるのが嫌ひといふよりは、人混みの中に出て行くのがイヤだ。

芝居は繁華なところで上演されるものだ。
ちやうど自分の行く時間とおなじころおなじ方向に向かふ人がたくさんゐる。公共交通機関もさうした人を乗せるから必然的にちよつと込み合ふ。
「いい芝居を見たなあ」と思つても、帰りの道や電車の混雑でそのいい気分が全部消へてしまふこともある。
いつたいなにをしに行つたのだらう。
バカげてゐる。
もう芝居になんぞ行くものか。

でも次に見に行くときにはそんなことは忘れてしまつてゐる。
そんな感じでここまで来てしまつた。

家で本を読んだりTV番組を録画したものを見た方がいい気分が続く気もする。
今週は「新・座頭市」で菅貫太郎を見て、また先代の松本幸四郎の「鬼平犯科帳」で天本英世を見て、「いいもん見たー」とかしみじみ感じ入つてしまつた。

舞台を収録したものでも、あまり知らない芝居はTVでおもしろく見られることはある。
でもよく知るものだとむづかしい。
舞台の場合、「ここが見たいのに」といふ部分を写してくれてゐないことがある。
「かう見たいのに」といふやうに写してくれてゐないといふこともある。
見得をする場面などは全身を写しておいてほしいのに、なぜか顔のアップになつてしまふ、とかね。
舞台の手前で派手な立ち回りをしてはゐるけれど、その奥にしづかに座つてゐるお殿さまがゐるのにな、とかね。
さういふもどかしさがTVの舞台中継にはある。

芝居のあとはいつそ飲んで帰ればいいのだらうか。
マチネならそれもいいかもしれない。
ソワレだと飲むと帰りの電車がなくなる可能性が高い。
八時くらゐに終演してくれればそんな心配をしなくても済むのだけれど、それだと芝居自体がもの足りなくなるだらう。
帰りの足を心配しながら飲む。
これほど楽しくないことはない。

まだしばらくは芝居見物をするつもりなので、出かける苦痛をやはらげる方法を探してゐるのだが、いまのところ見つからない。

そのうち交通費さへ出せないやうになるのだし、さうしたら行きたくても行けなくなるんだから人混みくらゐは我慢して出かけることにするか。
さう考へることにしてゐる。

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