飯田市川本喜八郎人形美術館 2016秋 再訪
九月三十日、十月一日と飯田市川本喜八郎人形美術館に行つてきた。
六月の展示替へ後に行つて以来だ。
今回の展示は人形劇は「人形劇三国志」の人形、人形アニメーションは李白、「花折り」「鬼」「道成寺」「不射の射」「火宅」だ。
どの人形がゐてどんなやうすかといふ話は、六月に見てきたあと書いた。
あらためて書くと、今回はいつにも増して立ち止まる部分が多いやうに思ふ。
何后に見とれる日がやつて来やうだなんて、六月に見に行くまで思つてもみなかつた。
毒の入つてゐるだらう青磁とおぼしき水差しを手にすつくと立つ姿が凛然としてゐる。
とてもドラマチックだ。
すつくと立つて、毒に苦しみ倒れ伏す董太后を見下ろす表情の冷たくも美しいこと。
どの角度から見てもいい。
いきなり展示室のちよいと奥にゐる人形から書いてしまふくらゐ、今回の何后はいいんだなあ。
展示室を入るとすぐゐる呂布と貂蝉ともいい。
貂蝉、やつぱりきれいねえ。
いま渋谷ヒカリエの川本喜八郎人形ギャラリーに行くと、ギャラリーの外にあるケースに貂蝉がゐる。こちらも「きれいねえ」とは思ふのだが、やはり飯田にゐる人形劇に出た方の貂蝉の方が表情がある気がする。
角度によつては微笑んでゐるやうにも見え、また別の角度から見ると無表情でなにを考へてゐるのかわからないやうすにも見える。
mysterious でせう。
今回あらためて張角とその兄弟とは衣装に秋の花が用ゐられてゐることに気がついた。
たぶん秋の花だ、と思ふ。
三人それぞれ違ふ柄だけど、秋の花でそろへたんぢやないかな。
張角・張宝・張梁のやうなをぢさんの衣装に花が散らしてあるといふのがおもしろい。それも結構目立つ柄のはずなのに、全然妙には見えない。
考へてみたら、三国志の人形はほとんどをぢさんおぢいさんばかりなのによくよく見ると衣装は花柄な人が多い。
甘寧とか、これでもかといふくらゐ花柄ばかりだし。甘寧なのに。
それで男らしさが損なはれるかといふと、そんなことは全然ない。
男の人の衣装に大胆な花柄といふのはいいかもしれないな。
展示室のメインケースである「三顧の礼」では、「実相寺アングル」を楽しむことができる。
ケースの向かつて左端から見ると、張飛の馬の蔵越しに諸葛均が見える。
反対側から見ると、孔明の寝床越しに玄徳・張飛・関羽が見える。
「物を手前において奥にゐる人物を撮る」ことを実相寺昭雄にちなんで「実相寺アングル」と呼ぶことがある。
ケースの端から「うわー、実相寺だわー」などと思ひつつ見られるのも、今回の展示ならではだ。
メインケースは、これまで見てきた例からいふと通常十五名前後は展示するケースだ。
今回は馬が三頭と人間が五人しかゐない。
背景には竹が飾られてゐて、枝折り戸などもあつて、両手の人差し指と親指とでフレームを作つて動きながら見ると、実際に人形劇を撮つてゐるやうな気分が味はへる。
思つてゐたより長くなつてしまつた。
つづきはまた後ほど。
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