吸血鬼とか芝居とか
先日、赤坂ACTシアターで劇団☆新感線の「Vamp Bamboo Burn (ヴァン! バン! バーン!)(以下、「VBB」)」を見てきた。
まだ上演期間中だしこれから大阪公演とか富山公演とかあるといふ話なので、内容についてはふれない。
「VBB」の出演俳優が発表になつたとき、「さうか、その手があつたか」と思つた。
なるほど、いま日本で一番吸血鬼が似合ふ俳優といつたらこの人だらうといふ人物の名前があつたからだ。
篠井英介である。
ちよつとほかに思ひつかないでせう。
考へてもごらんよ。
たとへば金沢の古い街並みのどこかにひつそりと篠井英介演じる吸血鬼が棲んでゐるところを。
普段はしづかに微笑むばかりで決して口を開けたりしない。
なにかの拍子ににつこり笑顔になつたときに、ちらりとのぞく光る牙。
雰囲気だけで吸血鬼だよ。
と、そのときはさう思つたわけだ。
篠井英介ならそれなりに上背もあるからシークレットブーツとか必要なささうだし、そんなに塗らなくても白いし、どこか年齢不詳(ついでにいへば時に性別も不詳)だし。
カラヤンかジョブズみたやうな出で立ちで、街の片隅に佇んでゐるところだけで絵になるよ。
さう思つたわけだが、「VBB」はさういふ芝居ではない。
予想はしてゐたけれどね。
おそらく、さういふ「雰囲気が吸血鬼」みたやうなのは昨今流行らないのだ。
芝居向きでもない。
やるとしたら映像だらう。
しかも考へてゐるやつがれがホラーが苦手といふこともあるけれど、ここで書いてゐる吸血鬼には怖いところが微塵もない。
不気味な雰囲気はあるかもしれない。
でもどちらかといふと、その雰囲気は不思議。
さういふのつて流行らないよねえ、いまどき。
かういふ、雰囲気の芝居といふのが受け入れられないのだなあ、といふのは芝居を見てゐるとよくわかる。
客が求めてゐるのはわかりやすさと安心感だ。
不安だつたりわからなかつたりむづかしかつたりするものは求めてゐないのだ。
映画になるとちよつと事情が変はつてくるやうだが、少なくとも歌舞伎座に来るやうな客は自分の理解できないものは笑ひとばしていいものと思つてゐる人が大半だ。
おそらく篠井英介が吸血鬼を演じるのを見ることはあるまい。
あんなに似合ふのに。
いまだつたら日本一なのに。
あ、「VBB」でちらつと拝むことはできるけどね。
でもそれもチト違ふんだけどね。
この吸血鬼、坂田靖子か波津彬子の絵でもいいと思ふんだよなあ。
森川久美だとちよつと違ふ。
いまどきまんがだつてこんなのは流行らないだらうから、仕方がない。
仕方がないので、脳内でせつせと妄想するばかりだ。
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