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Wednesday, 03 August 2016

怪談はやめて

ホラー映画の予告CMを見なくなつた
TVを見なくなつてよかつたな、と思ふことのひとつである。

あれ、突然くるからね。
しかもおもに夜間。
さらに云ふと深夜。
深夜にホラー映画の宣伝とか、しやれにならんよ。

TVを見なくなつたのは電気代削減のためだ。
「見なくなつた」といつてもまつたく見ないわけではない。
朝夕のニュース番組はちよつと見る。
とくに朝のニュースは時計代はりとして重宝してゐる。
夜は八時四十五分からNHKで放映してゐる地域のニュースを見逃すとあとは見ないことが多い。
あと日曜日の朝は、戦隊ヒーローものから仮面ライダーものを経てプリキュアものを見、「日曜美術館」からの将棋といふのが唯一見たくて見てゐる番組群だ。
戦隊ヒーローものとか仮面ライダーもの、プリキュアものを見てゐるときにはホラー映画のCMを見た記憶はない。
たぶん、日曜の朝からそんなおそろしいものは流さないのだらう。
ありがたいことである。

とにかく怖いものが苦手だ。
四歳から五歳になるくらゐのころ、夜間父親が仕事でゐないことがあつた。
寝入り際、尿意をもよほしてお手水に立たうと思つたとき、不意に気になることがあつて母に訊いたことがある。
「お母さん、死神つて、ゐるの?」
母の返答がなんだつたかは忘れてしまつた。
しかし、夜暗い中お手水に立てるやうな答へであつたことは確かである。
おそらく、父がゐないことが不安だつたのだらう。
死神をどこで覚えたのかも記憶にない。
昼間、本で読んだかTVで見たかしたのだらう。
「仮面ライダー」の再放送でも見たのかもしれない。

これは幼稚園の年長くらゐのころの話だ。
家の近所にイトーヨーカ堂があつた。
二階に本屋があつて、家族で買物に行つたときなど、「ここにゐるね」と入り浸つてゐたことがあつた。
あるときから、ぴたりとその店に立ち寄らなくなつた。
こどもがわんさとたかつて立ち読みしてゐる棚があつて、たまたまそこを通りかかつたときに、目の前のこどもが実におそろしい絵の描かれてゐる本を夢中になつて読んでゐたからだ。
当時学研で出してゐた本だつたやうな気もするが、これは記憶を捏造してしまつてゐるのかもしれない。
いづれにせよ、その本屋とおそろしい絵とがやつがれの脳内で結びついてしまつた。

このイトーヨーカ堂はまだある。
本屋はもうない。

これもほぼ同じころ、父方の親族の集まる回があつた。
八つ上のいとこが「エクソシスト」を録音したカセットテープを持つてきてゐた。
みんなに聞かせたがつて、うつかりちよつとだけ聞いてしまつたときのあのおそろしさ。
音だけで怖いんだぜ、「エクソシスト」は。
映像を見たらどんなにかおそろしいだらう。

おばけ屋敷にも一度も行つたことがないしね。
ディズニーランドのホーンテッドマンションは、あれは「おばけ屋敷」には入るまい。
遊園地でいふと、海賊船(ディズニーランドでいふ「カリブの海賊」)も怖かつた。
暗いところで海賊たちがうようよとなにかしてゐる、といふのがダメだつた。
さう考へてみると、ダメなのは幽霊とか妖怪とか系だけではないのかもしれない。

ウルトラマンものもダメだつたなー。
ウルトラマンものは夏になると必ず怪談話を放映する。
「まんがにっぽんむかしばなし」もさうか。
うつかり「船幽霊」とか見たときのショックといつたらもう。

小学六年生のときに、なんだつたかで授業の時間があまつてしまひ、クラス一致で担任の教師に怖い話をしてもらふことになつた。
無論、やつがれは強硬に反対した。
もうひとり、普段は強面でなにごとも論理的に相手をやりこめるタイプの子が、反対してゐた。
しかし、如何せん多勢に無勢。
先生は怖い話をし、その子とやつがれとふたりは教室の一番うしろに行つて、かたく耳をふさいで時の過ぎるのを待つた。
一言一句たりとも聞こえないくらゐ耳をふさいだことなんてそれまでなかつたし、その後もない。

そんなわけで聞かずにすんだわけだが、それで却つて問題なのは、先生の話した怖い話といふのがどれくらゐ怖いかつたのかが気になるところだ。

「牛の首」といふ怪談がある。
世界で一番怖い話なのださうだ。
あまりにも怖いので、その内容をだれも知らないといふ。

この話を読んだとき、「なんておそろしい話なんだらう」と思つた。
だれも知らないやうな怖い話を想像して、ひとりで怖がつてゐた。
ばかだ。ぼくはばかだ。

まあ、それくらゐ、怖いものがダメなのだ。

九つのときに生まれてはじめて「スターウォーズ(いまでいふエピソードIV)」を見て、グランド・モフ・ターキンが好きになつた。
モフ・ターキンを演じたのはピーター・カッシングといふ俳優でホラー映画によく出てゐると知つて、嘆いたものだつた。
見られないぢやんよ。
怖いでせう、ドラキュラものとか。

その二、三年後にTVでリチャード・レスター監督作品の「三銃士」と「四銃士」とを見て、ロシュフォール伯爵がいいな、と思つたときも同様だ。

なぜホラー映画などに出るのか。
いやさ、なぜホラー映画などといふものが世の中にあるのか。
怪談にしても同様だ。
やめやうよ、怖い話はさー。

録画機のおまかせ録画機能に「岸田森」と入力できずにゐる所以である。

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