あみものと記憶の編集
Jaywalker はつま先の減らし目まで来た。
そこで止まつてゐるのは、編み方を確認しないとつま先の減らし目ができないからだ。
つま先の減らし目など自分の好きな方法で編めばいいのだが、一応書いてあるからにはその通りにやつてみやうといふのがひとつ。
Jaywalker は足の甲と裏とで目数が違ふので、編み方を確認したいといふのがひとつ。
何度か編んだくつ下だから減らし目の仕方もなんとなくわかつてはゐる。
それにすでに片方編めてゐるのだし。
しかし、記憶はあてにならぬものぢやによつて、な。
記憶といふのは思ひ出すたびにすこしづつ、時には大幅に編集されてしまふものだといふ。
こどものころのことで妙に覚えてゐるものがあるけれど、それは何度も思ひ出してゐるからだ。
といふことは、さうした記憶は相当編集されてゐるといふことだ。
もしかするとなにひとつ正しくないかもしれない。
こどものころ、お手洗ひの窓の外に大きなクモが巣を張つたことがある。
これが恐ろしくてなかなかお手洗ひに行けなかつた。
四歳と半年まで住んだ家のお手洗ひなので、おそらくは四歳くらゐのころの話だ。
なぜ四歳のときに住んでゐた家とわかるかといふと、当時は一軒家を借りてゐたからだ。その後はアパート暮らしなのだつた。
……などと書いてゐるけれど、ほんたうはそのお手洗ひはアパートのものだつたかもしれない。
記憶が改竄されてゐるだけで。
ことの顛末がどうなつたかといふと、大きな道路をはさんだところに住んでゐたをばさんが来てくれて、巣をとつてくれたのだつた。
母は、お手洗ひに行くのは怖くなかつたのらしいが、クモの巣をとるのはイヤだつたのだらう。
をばさんにはたしかやつがれと同い年の男の子がゐたと思ふ。
をばさんは母とお手洗ひの外に立つてゐて、「をばさんが巣をとつてあげるからね」と云つてくれた。
とてもたのもしかつた。
また思ひ出してしまつたので、この記憶はさらに編集が進んだことだらう。
生きていくつてなんだかむなしい。
しかし、あみものの記憶といふのは改竄されにくいのではないかといふ気がする。
とくに何段目から何目減らす、といふやうな記憶は正確に残る気がしてゐる。
中には似たやうなものを編んでゐてごつちやになつてしまふことはある。
でもまあ、その他の記憶に比べたらちやんと残るんぢやないかな。
気のせゐかもしれないけど。
残りやすいのは数字だからかもしれない。
雰囲気とかイメージとかより数字の方が編集しにくいやうな気がする。
気がするだけだけどね。
そんなわけで、あとはつま先を減らしてはぐだけ、といふところまできて、Jaywalker はとまつてゐる。
代はりといつてはなんだか、ちよつと麻糸などを編んでみたりしてゐる。
いただきものの糸で、きれいな段染めだ。
ここのところ麻糸といふとリネンが多かつたので、ヘンプ(だらう)は久しぶりである。
といふか、ヘンプの糸は編んだことはないかもしれない。
マクラメに使つたことはあるけれど。
ぱつと見た感じで8/0号の糸を選んでみた。
まだちよつと細かつたかもしれない。
手がきつすぎて、次の段が編めなかつた。
仕方がなく筋編みにしてみたけれど、もうちよつと太い針を使つた方がいいやうな気がする。
でもしつかり編みたいんだよなあ。
円筒型の巾着のやうなものを編みたいと思つてゐるので、そんなにしつかりしてなくてもいいかなあ。
10/0号針で編みなほしてみて、やうすを見ることにしたい。
Jaywalker も仕上げたいな。
« 戀しきコイキング | Main | 2016年7月の読書メーター »
Comments