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Thursday, 09 June 2016

コンヴァータを買ひに(カートリッジではなく)

「コンヴァータをください」と云つたのに、「カートリッジ」を提示される。
そんな経験はないだらうか。

地元でコンヴァータを買ふ場合は、最寄り駅にある有隣堂で求めてゐる。
有隣堂は書籍も文具もとりあつかつてゐるといふ、やつがれにとつては大変ありがたい存在だ。

そんな有隣堂の支店が近くにある。
この店では万年筆のコンヴァータを買ふときはレジに直接行つて店員に頼む仕様になつてゐる。
幾年にもわたり何度かこの店でコンヴァータを所望してゐるのだが、必ずといつていいほどお店の人が持つてきてくれるのはカートリッジだ。

なぜなのだらう。
もしかしたら「万年筆のコンヴァータをください」と云ふつもりで「万年筆のカートリッジをください」とうつかり口走つてゐるのだらうか。
その可能性も疑つてみた。
それで毎回気をつけて「コンヴァータ」といふやうにしてゐるけれど、なぜか一度でコンヴァータにお目にかかれることはない。
まづ最初に出てくるのはカートリッジである。

店員の商品知識の不足をあげつらはうといふのではない。
店員は毎回違ふ。
おそらくはアルバイトの人なのだらう。
毎回人は違ふのに、なにゆゑいつもおなじ対応になるのか。
そこが疑問でならないのだ。

ひよつとすると、毎回毎回「コンヴァータ」と云つてゐるのにカートリッジを持つてこられてしまふことをあきらめてしまつてゐるやつがれの脳裡には「コンヴァータ」と云ひつつもカートリッジが浮かんでしまつてゐるのかもしれない。
店員はそれをそれとなく察知してカートリッジを持つてきてくれるのかも。
そんなことも思つたことがある。

万年筆といへばカートリッジ。
世間一般の認識はさうなのかもしれない。
ゆゑにコンヴァータが出てこない。
近年万年筆は人気のあるものと評判だし、限定万年筆などはまたたくまに売り切れてしまふし、雑誌やムック本も定期的に刊行されてゐる。
でも、筆記用具としては一般的ではないんだらうな。

コンヴァータの箱よりもカートリッジの箱の方が大きいし、目立つ。
さういふ要因もあるものと思はれる。

今回、しげしげとコンヴァータの入つてゐる箱を見てみた。
購入したのはパイロットのCON-50だ。PRERAに使ふためめに入手した。
いままであまりコンヴァータの箱などよく見たためしはなかつた。
ぱつと見たところ、箱のどこにも「コンヴァータ」とは書かれてゐない。
「CON-50」といふ文字が大きく(といつても箱自体が小さいのでそれなりの大きさだ)書かれてゐるだけで、「コンヴァータ」とも「コンバータ」とも書かれてゐない。
よくよく見てみたら、箱に印刷された使ひ方のところに小さい文字で「コンバーター」と書かれてゐる。

うーん、これでは「コンバーター」と認識してもらへないか。

ほかのコンヴァータの箱も今後は気をつけて見ることにしたい。
考へてみたら舶来品のコンヴァータはとくに箱などに入つてゐないやうな気もするけれど。
さうだとしたらますます「コンヴァータ?」つてなことになるよな。

万年筆の消耗品といへばカートリッジである。
コンヴァータはそれとわかりづらい状態で売られてゐる。
このあたりが「コンヴァータ」と云つたのに「カートリッジ」を持つてこられてしまふ原因として妥当なのだらう。

だつたらレジまで行かずとも、商品棚にコンヴァータを置いておいてくれればいいのに。
さう思ふのだが、客が自分でコンヴァータを棚から取つて会計できるやうな店といふのはあまりない。
やつがれの行く店ではまづない。
必ずレジなり万年筆のカウンタなりで「この会社の万年筆のコンヴァータをください」といふやうになつてゐる。

なぜだらうか。
コンヴァータは小さいから棚に陳列した場合に置き方に困つたりするのだらうか。
または小さいがゆゑに万引きされやすい商品と見なされてゐるのか。
サイズのわりに高価だもんな、コンヴァータ。
それとも求める客が少ないので、棚に陳列するには足らぬ商品といふので並んでゐないのだらうか。

レジで訊くのをなぜ厭ふのかといふと、後ろに並んでゐる人を待たせてしまふからだ。
できるだけ人の並んでゐないときを選んでコンヴァータを頼むやうにはしてゐるけれど、自分が並んでゐたときは列はほとんどなかつたのに、いざ自分の番が来てみると背後に長蛇の列ができてゐることもある。
そんなときに、店員がレジをはなれてコンヴァータを探しに行き、カートリッジを持つて戻つてきたので「それではなくてコンヴァータをください。かういふ、インキボトルからインキを吸ひあげるやうな……」とか身振り手振りの説明を受け、わかればいいけどわからないとわかりさうな別の店員を探すところからはじめないといけない、そんな状況になつて居たたまれないのはコンヴァータを所望するこのやつがれである。

気にしなければいい?
さうなんだけれどもさ。

今後は実物を手にしてコンヴァータを買ひに行くしかないかな。
それとも万年筆のカウンタのあるやうな店でコンヴァータを求めるか。
あるいはいつか一度でコンヴァータに巡り会へる日を夢見てみるか。

いづれにしても楽しさうである。

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