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Thursday, 02 June 2016

時代劇にピンク

「鬼平犯科帳」第四シーズンを見てゐると、口紅の色が異様に気になる。

現在、再放送の「鬼平犯科帳」を見てゐる。
第三シーズンの終盤から見始めた。
いつから口紅の色が気になるやうになつたのか、定かではない。
少なくとも第四シーズンの第一話「討ち入り市兵衛」を見たときには気になつた。

最初は久栄だつた。
なんだかものすごく明るいピンクの口紅をさしてゐる。
桃色ではなくてピンクだ。
口紅ではなくてリップとかルージュとか呼びたくなるやうな色である。
久栄は唇をわりと大きく描いてゐる。
多岐川裕美の唇がふつくらしてゐるのかもしれない。
そこにピンクである。
目立つ。
唇だけ浮いてゐるやうに見受けられる。

おまさも一瞬「ん?」と思ふやうな色のことがあつた。
しかし見続けてゐると赤い方向に落ち着いた色に変はつてゐて、その後妙だと思ふことはない。

山田五十鈴がゲストで出たときも別に妙だとは思はなかつたし、三ツ矢歌子のときははピンクではあつたけれどもベージュ味を帯びた落ち着いた色でそんなに気にはならなかつた。光本幸子もか。

久栄とそのほかのゲストの女優の口紅は、なぜか妙にピンクだ。
おそらく、現代の街中を歩いてゐればそんなに浮くやうな色ではないのだと思ふ。それは和装でもさうだらう。
「鬼平犯科帳」の世界の中でピンクだから違和感を感じる。
さういふことなのだと思ふ。

リアルタイムで見てゐたときもさうだつたらうか。
リアルタイムで見てゐたときは、TV画面がもつと小さかつたし、いまよりも遠い位置から見てゐたからあまり気にならなかつたのかもしれない。
また、時代的にああいふ明るいピンクが流行つてゐたのかもしれない。それであたりまへのものとして見てゐたといふことも考へられる。

ほかの時代劇はどうだらう。
ほかの時代劇を見てゐて「その口紅の色、ヘン」と思ふことがあつたらうか。
多分、ない。
そこまでよく見てゐない、といふ話もある。
あるいはほかの時代劇は「鬼平犯科帳」よりも番組全体に現代味があつて、それで現代的な色が浮かないのかもしれない。

ドラマにおける化粧の色といふのは誰が決めるのだらう。
顔は俳優が自分でするのだらうと思ふ。
そのとき使用する化粧品は自前なのだらうか。
それとも「この役にはかういふ色」といふので用意されてゐるのだらうか。
自前にしても「かういふ色合ひにしてください」と指示を受けるのだらうか。
監督などから「この役にその色は合はないよ」などと云はれたりしないのだらうか。
すると思ふんだがなあ。

自前であれ用意されたものであれ、撮影所全体が「それでよし」としたことに間違ひはない。
であれば、自前か用意されたものかといふ詮索は無用のものになる。

池波正太郎が見たら、なんか云つたんぢやないかなあ。
第二シーズンあたりを見ればわかるかな。

時代劇にピンクといふのはむづかしいのかもしれない。
歌舞伎でも新歌舞伎や新作歌舞伎に出てくる娘役はピンク色の衣装で登場することがある。
くどいやうだが、桃色とか薄紅色とかではなくて、ピンク色だ。
これが案外若い役者に似合はないんだよね。
二、三年前の話だし二例だけで恐縮だが、「主税と右衛門七」の米吉も「豊志賀の死」の梅枝もピンクの衣装がどうにもうつつてゐなくて、「なんかもつと違ふ色にしてあげればいいのに」と思つたものだつた。
似合ふ役者もゐるのかもしれないけれども。
でも、役者に似合つても、洋風な色合ひは舞台全体から浮くんぢやないかなあ。
芝居にもよるか。

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