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Thursday, 23 June 2016

飯田市川本喜八郎人形美術館 漢末の群像 2016

6/4(土)に展示替へのあつた飯田市川本喜八郎人形美術館について書く。
今回は展示室を入つてすぐ向かつて左手の「漢末の群像と玄徳の周辺」のケースについて。

このケースはメインケースの向かひにある。
「影の内閣」にならつて個人的に「影のメインケース」と呼ぶこともあるし、「曹操のケース」と呼ぶこともある。
曹操が影の内閣といふわけではない。
このケースに曹操がゐることが多いからだ。

「漢末の群像と玄徳の周辺」といふテーマなので、展示されてゐる人形も多く、ヴァラエティに富んでゐる。
向かつて右側から曹操、一列目に袁術、袁紹、陶謙、二列目に董卓、馬騰、ここまでが「漢末の群像」だ。
その左の一列目に馬超、孫乾、張飛、黄忠、趙雲、二列目に赤子の阿斗を抱いた玄徳の母、淑玲、美芳、一番左に関羽、以上が「玄徳の周辺」である。

このケースは右端と左端とが別空間のやうになつてゐる。ちやうどお寺の山門の右側に阿の、左側に吽の仁王様がゐるやうな感じとでもいはうか。
今回、「阿」には曹操、「吽」には関羽がゐる。

曹操は、左を向いて立つてゐる。
こちら側に背中を向けるやうにして半身な感じ、とでもいはうか。
その視線の先にあるのは、袁術の手にしてゐる玉璽だらうか。
最初のうちはさう思つてゐた。
それが、関羽のあたりまで移動してふと振り返つてみたらどうだらう。
なんだか視線を感じるではないか。
ケースのガラスに寄り添ふやうにして右手を見ると、見てゐる。
曹操がこちらを見てゐる。
うわー、曹操、関羽を見てゐるんだ。
それも、関羽の側から見ると曹操はこちらに身を乗り出すやうにしてゐるのがわかる。
そうかー、曹操、関羽を見てゐるのかー。
あひだに15人もゐて、端と端とにゐるにも関はらず。
さう思つてあらためて曹操の近くに戻つて見ると、これがなんともいい表情をしてゐる。

また、今回曹操は背中がよく見えるやうに立つてゐる。衣装の背中側を見られる貴重な展示だといふことを美術館の方に教はつた。
人形劇でも背中は出てくるはずだけれども、意識したことはなかつたなー。
背中もさうだけれども、横顔も案外人形劇では見過ごしがちだつたりする。
やつがれだけか。

曹操の左隣にゐる袁術は、玉璽を掲げて見上げてゐる。
どの人形もその顔は左右非対称に作られてゐるとのことだが、袁術はことに左右非対称で、ゆゑになんとなく訝しげなやうすに見える。
「ほんとに玉璽か?」
「ほんとのほんとか?」
みたやうな感じ。

その隣に立つ袁紹は、袁術が玉璽を手に入れたことを知つてゐるやら知らぬやら。
知つてゐる、かな。
あるいはもう袁術が死んでしまつたことを知つてゐのかもしれない。
今回、新しく作り直したくつを履いてゐる人形がゐることを美術館の方から教はつた。
蔡瑁がさうなのだと教へてくだすつたが、ほかにも何人かゐるのだとか。
袁紹もそのうちのひとりなんぢやないかと睨んでゐる。

袁紹の隣には陶謙が立つてゐる。
陶謙、なあ。
展示を見るたびに書いてゐて恐縮だが、人形劇ではあんなにいい人全開だつた陶謙が、飯田の展示で見るときはなぜどこか食へない老人のやうに見えるのだらうか。
人形劇だと陶謙には跡継ぎとなるこどもや孫がをらず、それもあつて玄徳に徐州を譲る、といふ話になる。
考へてみたら、跡を継ぐべきこどものゐない徐州をとるのもイヤな玄徳が荊州をとるわけがないのだなあ。

袁術・袁紹・陶謙の背後高いところに董卓と馬騰とがゐる。

董卓は正面を向いて胸を張つて立つてゐる。
これ以上はそらせないくらゐ上体をそらせてゐて、睥睨するとはかういふ状態をいふのだらうなあといつたやうすで下の方をねめつけてゐる。
董卓らしい。

馬騰はその左やや後方に立つてゐる。
と書いて、後方と思つたのはもしかしたら気のせゐかもしれない、とも思ふ。
董卓の印象があまりにも強いので、なんとなく馬騰の印象が薄れてゐるだけなのかもしれない。
馬騰は「風の子ケーン」のお父さんとよくにてゐる。
お父さんはシュマロといふ名前だつたかな。
今回シュマロはホワイエに飾られてゐるので、見比べることができる。

ここまでみな戦支度の装ひ。

以下、つづく。

ギャラリー入口についてはこちら
黄巾党の蜂起についてはこちら
宮中の抗争はこちら
三顧の礼についてはこちら

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