筆圧が弱くても
萬年筆の書き味はやはらかい方が好きである。
以前も書いたPILOT の CUSTOM 823 の細字が最初だつたやうに思ふ。
何度も書いてゐて恐縮だが、店頭で試し書きをしたをりには「普通によく書けるペン」といふ印象しかなかつた。
それを三年手帳用にほぼ毎日のやうに使つてゐたところ、あるときなんともやはらかい書き味にうつとりすることがあつた。
使ひつづけていくうちに書き味が変はつたのだらうか。
あるいはただ単にやつがれがこのペン本来の書き味に気がついてゐなかつたのか。
よくよく考へてみると、それ以前に使つてゐたファーバー・カステルのペルナンブコもどことなくやはらかい書き味のペンだ。ペン先がしなるといふんぢやないけれど、ペン先が紙に触れたときの感触がとてもやはらかい。
以降、かたい書き味のペンよりもやはらかいものの方を好むやうになつた。
先日、ペン先の調子をちよつと見てもらつたときのことだ。
二本持つてゐるペンの片方は中軟で片方は細軟だつた。つまりは中屋万年筆のペンだ。
見てくだすつた方が「やはらかいペン先がお好きなんですね」といふやうなことを訊いてきた。
筆圧が弱いのだからペン先はかたい方がいいのぢやないか、と言外に云はれてゐる気がした。
気のせゐかもしれない。
そのとき筆圧の話も出たのでそんな気がしただけなのかも。
かたい書き味のペンも使はないこともない。
プラチナ万年筆のペンもよく使ふしね。
シェーファーのノンナンセンスもやつがれにとつてはかたい書き味のペンだ。
あとはアウロラのオプティマの細字。これもだいぶやはらかくなつたやうに思ふのだが、自分の感覚だとまだかなりかたい。
ペン先のしなりやすいペンは、どうも制御がむづかしい気はする。
ちよつとした筆圧の変化で線の太さが変はるからだ。
さういふのは不器用なやつがれには向かないペンだ。
大橋堂のペンは、そのやはらかな書き味が気に入つて手に入れたものの、最初のうちは力のいれ加減がよくわからなかつたものだつた。
実を云ふといまでもうつかりすると思はぬ線が引けたりすることがある。
でもまあ、それも楽しいんぢやないかな。
どうせもともと字は汚いんだし。
PILOTのフォルカンとかエラボーとかもさうかな。フォルカンは使つてゐて楽しい。意味もなくあれこれ書きたくなる。色彩雫の月夜を入れてゐて、インキの濃淡がおもしろくて仕方がない。
不器用だから制御はしきれないが、筆圧は弱くてもちよつとした力の入れ加減で線の太さの変はるやはらかいペン先が好きなんだな。
もう長いこと使つてゐないがガラスペンの書き味もどことなくやはらかい気がする。
久しぶりに使つてみやうか。
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