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Wednesday, 13 January 2016

ウソと知りつつ聞いてしまふ

日曜日からこの方、毎日のやうに「武蔵の遅刻理由」を聞いてゐる。

「武蔵の遅刻理由」はNHK教育TV(といまは云はないのかもしれないがやつがれは云ふ)で放映してゐる「びじゅチューン!」といふ番組で流れた歌といふかアニメーションといふかである。
古今東西の芸術作品の印象をもとに井上涼が作詞作曲動画作成し歌を歌つたもの、とでもいはうか。
詳しいことはリンク先を見ていただきたい。

「武蔵の遅刻理由」のなにがいいのか。
まづ旋律とリズムとがいい。
ちよつとベンチャーズとかビーチボーイズを思はせるやうな波打ち際つぽいロックな感じなのだ。
「びじゅチューン!」で公開される大抵の作品の歌は、大変覚えやすい旋律である。
つまり、一度聞くと頭の中で何度も回る。
「武蔵の遅刻理由」もそのひとつだ。

また発想が笑へる。
「武蔵の遅刻理由」のもとになつた作品は歌川国芳の「武蔵の鯨退治」だといふ。
番組内で、井上涼は「武蔵の鯨退治」は誰の視点から描かれたものなのか、と疑問を呈してゐる。そのとほりだね。
それはさておき。
なぜ宮本武蔵は厳流島の決闘に遅れたのか。
それは、鯨退治をしてゐたからではないか。
でもそれだとそのままだから、と、井上涼が考へたのかどうかは知らないが、「武蔵の遅刻理由」では武蔵は鯨を助けたことになつてゐる。
いや、助けてないでせう。退治したんでせう。
だいたい厳流島に遅れていつた理由はそれぢやないし。
でもいいのだ。
笑へるから。

しかも武蔵は遅刻した理由を一生懸命佐々木小次郎に説明する。
もうそれは渾身の力で説明する。
それも、紙芝居を使つたお笑ひ芸人のやうなスタイルで。
遅刻理由の「ここが大事」と訴へる武蔵のやうすの必死なこと。
このくだりにかかるたびに「来るぞ来るぞ……来たぁぁぁぁ」と思つてしまふ。

さらに、話を聞く小次郎がいい。
眉間に皺を寄せた表情がいいし、実は武蔵がウソをついてゐることを知つてゐるのもいい。その上、最後まで武蔵のウソ話につきあひ、歌の終はりには武蔵と一緒に踊つてしまふ。
なんなんだ、君らは。
決闘するんぢやないのか。

小次郎の眉間の皺は国芳の「厳流島の決闘」そのままだ。
あと、歌詞を手にしてゐるのが国芳の猫なんだよね。猫だから手ぢやなくて前足か。まあいいか。

ほんたうは番組全体を見たい。
ジョリーラジャーズの合唱が入つたヴァージョンも聞きたい。
録画したものを見ればいいのだけれど、つひお手軽に公式サイトを見に行つてしまふ。

「びじゅチューン!」で好きな作品はたくさんある。
最近では「姫路城と初デート」も好きだなあ。「あしゅらコーラス」、「委員長はヴィーナス」、「風神雷神図屏風デート」なんかも気がつくと歌つてゐる。「縄文土器先生」もだ。
上野に行つて時間があると「ランチは地獄の門の奥に」を歌ひに行つてしまふしね。「ロダンロダン」といふ合ひの手が好きなんだよね。「委員長はヴィーナス」の「ボッティチェリチェリ」とか「樹花鳥獣図屏風事件」の「若冲!」とか。

今日もまたウソと知りつつ「武蔵の遅刻理由」を聞いてしまふんだらうなあ。
それもまた楽し。

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