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Thursday, 21 January 2016

カキモリオリジナル ローラーボールペンを購ふ

土曜日に浅草公会堂で歌舞伎を見てきた。
帰りに、蔵前にあるカキモリまで歩いた。
Google Maps を頼りに歩いたところ、住宅街の中の道を行くことになり、ちよつとおもしろかつた。

カキモリ

実はカキモリに行くことはないだらうな、と思つてゐた。
自分だけのノートを作ることはないだらうと思つてゐたからだ。
なぜ自分だけのノートを作ることはないかといふと、この世に一冊しかないノートを作つたらもつたいなくて使へないだらうからだ。
以前、美篶堂でハードカバーケースノートを作つてもらつたことがある。そのときは特別にバンクペーパーをノートの用紙として選べた。普段は選べないのださうである。
嬉々として依頼して、いそいそと受け取りに行つて、その後使つてゐない。
もつたいなくて使へないのだ。

そんなだから、カキモリでノートを作つたとしてもまた未使用の使へないノートが増えるだけだ。
さう思つてゐた。
だつたら二冊作ればいいぢやあないか。
カキモリに行つてその事実に気がついた。
できれば気づかなかつたことにしたい。

木目の印象の強い店内は、紙屋(治兵衛ぢやないよ)の香りが色濃い。
紙屋さんには、木目調の店内で三方の壁に薄い引き出しのたんすがあつて、その前で紙を選ぶといふ印象がある。
トレイを手にしたお客さんが何人もゐて、棚の前を右往左往してゐた。
ノートにする紙を選んでゐるのだらう。
店の外からは窓越しに製本してゐるやうすを見学することができる。これが結構楽しい。

店内のお客さんのほとんどは、ノートを作りに来た人のやうだつた。
やつがれは違つた。
今回見に来たのは、カキモリオリジナルの万年筆用のインキだつた。
これ以上インキを増やしてもねえ、といつも思つてゐるのだが、ちよつと興味があつて、ね。

カキモリでは、インキを混ぜて好みの色を作ることもできる。
オリジナルインキは16色、とカキモリのWebサイトにはある。
試し書きのコーナーにはそのうち3色が万年筆に入れられてゐて試せるやうになつてゐた。
ほかにプライベートリザーブのインキがあつた。
自分でオーダーインキを作る場合は、プライベートリザーブのインキがベースになるのだといふ。

この日はもう時間も遅かつたし、「この色がほしい」といふのがぱつと思ひつかなかつたので、オーダーインキはあきらめることにした。

試し書きコーナーには、ローラーボールペンもあつた。
ローラーボールペンに万年筆のインキを入れてあつた。
エルバンで万年筆のインキカートリッジを使ふローラーボールペンを出してゐるのは知つてゐたが、コンヴァータの使へるものははじめて見た。
エルバンのものもコンヴァータも使へるのかな。

エルバンのローラーボールペンには、ちよつと書きづらいといふ印象を持つてゐた。
もしかしたらインキとの相性がよくなかつたのかもしれない。
書きづらいと使はなくなる。
そしてますます書きづらくなる。
悪循環だつた。

カキモリ

カキモリの店頭で試し書きしたローラーボールペンの書き味は、とてもなめらかだつた。
試し書きできるといふのがいいやね。
もともとローラーボールペンのあまり好きではないやつがれだが、これなら使へるかも、と思つた。
ちよつと太字なのがいいのかもしれない。
ぬらぬらとまではいかないけれど、するするといつた書き心地だつた。
このローラーボールペンもカキモリのオリジナルなのだといふ。
ボトルのインキが少なくなつたときのために、小さなビーカーのやうな器とスポイトとがついてゐた。ボトルのインキをスポイトで吸ひあげて器にうつし、そこからインキをコンヴァータにうつすのださうだ。ちよつと嬉しい心遣ひである。
ほかに透明軸の万年筆もあつて、どちらにするか迷つた。
今回はほとんど使つたことのないローラーボールペンを求めることにした。
インキはインディゴにした。
ここのところ「Born to be Blue」とか「Mood Indigo」とかそんなやうな気分だつたからだ。

飾り枠原稿用紙に書いてみた。

カキモリ

ローラーボールペンの書き味は悪くない。
先ほども書いたやうにするすると書ける。
この写真からはよくわからないかもしれないけれど、線が太いのでインキの濃淡も出ておもしろい。神戸手帳に書くとインキの濃淡がよくわかる。
インディゴはぱつと見たところ黒だ。ブルーブラックのかなり黒い感じ。セーラーのインキと比べると、どことなく灰色味を感じる色である。

万年筆のインキを使ふので、できるだけ頻繁に使つた方がいいだらうと思ひ、日々使つてゐる。
まさか自分がローラーボールペンを愛用する日が来るとは思はなかつたなあ。

そのうち、別のカキモリオリジナルインキとこのローラーボールペンとを買つてゐるやうな気がする。

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