とても素敵な東京こどもクラブ
先月、音楽実験室 新世界で催された「夜の入り口」の「ポポイ」の朗読を聞いた。
以降、朗読会に行きたいと思つてゐるのだが、予定がかちあつてしまつて行けてゐない。
先日はラジオで久保田万太郎の「釣堀にて」を聞いた。
出演してゐた中村歌昇がことのほかよかつた。
なにがよかつたといつて、聞いてゐて歌昇の姿が脳裡に浮かばなかつたことだ。
この青年(年齢からいくと「少年」か)はこんな感じかな、と、想像しながら聞いた。
着慣れた白い開襟シャツを着てゐるんぢやないかな、とか、鬱屈はたまつてゐるもののふだんは気持ちのいい青年なのだらう、とか、ちよつと日焼けしてゐる感じかな、とか。
以前はよくラジオドラマを聞いてゐた。
きつかけはニッポン放送でまんがをラジオドラマ化した番組を聞いたことだつたやうに思ふ。
記憶に残つてゐるのは「超人ロック」だ。それも「ロード・レオン」の回。
「ロード・レオン」は三度くらゐはラジオドラマ化されてゐるのぢやあるまいか。少なくとも二回は聞いた。
一度は曽我部和行(当時)で、もう一度は古川登志夫がロード・レオンだつた。
どちらもよくてねえ。甲乙つけ難いとはかういふことを云ふんだらう。
NHK FMだつたと思ふけれど、新井素子の「星へ行く船」も聞いた。
これもラジオドラマを聞くやうになつたきつかけだつたかもしれない。
広川太一郎が太一郎をやるといふので聞きはじめた。
多分おなじ放送枠で、森本レオと北原遥子との「時のない国その他の国」とか、もう題名は忘れてしまつたけれど松橋登が超絶二枚目の怪盗を演じたドラマを流してゐたやうに思ふ。この松橋登の「聲だけでハンサム」ぶりがすごくてね。いまでも「聲だけでハンサムを表現する」といふと松橋登を思ひ出す。
ほぼ同時期にNHKラジオ第一放送では神林長平や大原まり子、火浦功といつた当時の若手SF作家の短編をラジオドラマ化して放送してゐた。
なぜか「スフィンクス・マシン」を録音してゐて、番組のメイキングの箇所がいつまでもカセットテープに残つてゐた。スフィンクス・マシンの登場場面ではキャベツの葉を剥く音を使つてゐる、とかなんとか、そんな話だつたやうに思ふ。
音だけ、聲だけ、といふのが、自分にはしつくりくる。
映像はあるにこしたことはないけれど、なくてもいい。むしろない方が聞きたいときに聞ける。
十二代目市川團十郎襲名披露公演の「勧進帳」のCDなんか、実にありがたいと思ふもの。いまだつたらDVDは出るかもしれないけれど、おそらくCDは出ないだらうからね。
この「勧進帳」の富樫がすばらしくてね、といふのはまた別の話である。
音だけ、聲だけといふのが好き、といふそのきつかけはどこにあるのだらうか。
考へて、もしかしたら「東京こどもクラブ」かな、と思ひ至つた。
こどものころ、よく「東京こどもクラブ」のレコードを聞いてゐた。
レコードは定期的に増えたりはしなかつたやうに思ふので、おそらくお試し版だつたのだらう。あるいはもらひものだつたのかもしれない。
「まへだのをぢさん」が前田武彦のことだと知つたのは、その訃報を聞いたときだつた。
「ごうをぢさん」がまさか大岡越前だつたとはねえ。
「びんちやん」が楠トシエだといふのも、だいぶ年を経てから知つた。Web検索かなにかでたまたま目にしたのだつたと思ふ。
びんちやんの歌が好きだつたなあ。
「どんぐりころころ」の最後のなんともいへない悲しさ。
「フレール・ジャック」はフランス語の歌なんですよ、とか云つてゐたつけ。「フランスの鐘は「リンディンドン」つて鳴るんです」とも云つてゐたかなあ。
「おつかひありさん」「とんぼのめがね」「きゅーぴーさん」……なつかしい。
ほかにも物語のレコードがあつた。
「シンデレラ」の残酷な逸話がかなり残つてゐるものとか、「三つの願ひ」とか。これは単発ものを親が買つてくれたものだつたのかなあ。LPレコードだつたので、自分でかけるのがちよつと大変だつた。
落語もカセットテープで聞いてゐた。
浪曲もだな。浪曲といつて、虎造ばかりだつたけれど。
それもこれも、おほもとは「東京こどもクラブ」だらう。
いまWikipediaの「東京こどもクラブ」の項を見たら、題名を見ていろいろ思ひ出した。
「あぶなかつたたかしちやん」。あつたあつた、そんな話。
「さんびきのくま」も覚えてゐる。「ななひきのこやぎ」も。なんだ、結構ごうをぢさん、多いんぢやないか。
かうして見ると東京こどもクラブで覚えたクラシック音楽も多いんだな。
東京こどもクラブにしてもラジオドラマにしても、ちやんと記録をつけておくのだつたなあ。
さうしたら思ひだすよすがになるのに。
しかたがないので、思ひ出せた分だけ、かうして残しておく。
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