勝ち負けは関係ないけど萬年筆
勝負萬年筆は、デルタのドルチェヴィータである。
いや、ほかにも何本かあるんだけどもさ。
たぶん、自分の中で一番これ、と思つてゐるのは中屋万年筆の新溜透かし・青(たぶん)の昇龍だ。
でもこれは普段持ち歩かない。
自宅用のペンである。
あとモンブランの146も勝負萬年筆で、長いこと手帳の自署欄は必ずこれと決めてゐる。
これも普段は自宅用にしてゐる。
それからグラーフ・フォン・ファーバーカステルのペルナンブコ。これは最近専用のペンシースが劣化してきて持ち歩くのが怖いのでやはり自宅用になつてゐる。
持ち歩いてゐるペンの中ではドルチェヴィータが勝負萬年筆。
さういふことになる。
そもそも「勝負」つてなんだよ、といふ話になるが、さうね、たとへば客先でなにか書かないといけない時とかね、さういふ場面で使ふペンつてことかな。
ドルチェヴィータは書斎館で求めた、といふ話は何度か書いてゐる。
このときのほかの候補がモンテグラッパのミクラかビスコンティのヴァン・ゴッホだつた。
店頭でその旨を伝へると、「イタリアのペンはおすすめしないんですけどねえ」的なことを云ひつつも、店員さんがペンを用意してくれた。
試し書きさせてもらつて、いづれもいい感触だつた。
なぜイタリアのペンはすすめないなどと云はれるのかわからないくらゐよかつた。
中で、一番書きやすかつたのがドルチェヴィータだつた。
当時は値上がりする前だつた。
いまだつたら買へないなあ。
ドルチェヴィータのうつくしさを称へた文章はすでに数多存在するので、ここではあれこれ云ふまい。
ただ、黒とオレンジに銀色を合はせたところがすばらしい、とだけ書いておく。
金だとかうはならないよ。
インキはデルタ純正のブルーを入れてゐる。
デルタのブルーもいろいろ感想があるけれど、明るさを感じる青だと思ふ。
アウロラのブルーも好きな色で、こちらはもうちよつと深い青のやうに感じる。
黒いキャップにオレンジの軸、銀色のペン先から流れ出てくる色としては、純正で正解のやうに思ふ。
海の色、かなあ、この青は。
コンヴァータ内部で熟成すると深みの出るのもまたおもしろからずや。
ペン先も、ちよつとスタブといはうか、縦の線と横の線との太さが微妙に異なる感じのするところもいい。
細字なのではつきりわかるほどではないけどね。
この書き味は丸研ぎぢやない気がする。
手持ちのペンの中でかういふ書き味はこれがはじめてだつた。
「勝負萬年筆」といひながら、普段から遣つてゐる。
ペンは遣つてナンボでせう。
遣はないとインキもかたまるしね。
いまは三本差しのペンシースにスーヴェレーン800と大橋堂のペンと一緒に入れて、あはせて「旧枢軸国」と呼んでゐる。
日独はたまに入れ替はるけど、伊はほぼドルチェヴィータできまりだ。
やつがれにとつてのドルチェヴィータはそんなペンである。
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