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Friday, 04 September 2015

外堀ばかり埋めてしまふ

先週の水曜日に「五右衛門vs轟天」を見てきてからといふもの、「五右衛門vs轟天」ハイな日々を送つてゐる。
昨日千秋楽を迎へて、これでしばらくは落ち着くのかな、と思つてゐたけれど、まだまだ気分は昂揚してゐて、「五右衛門vs轟天」ロス、といふところにいまだ至つてゐない。

これからロスが来るのかなあ。
手回しが早いもんだから西田佐知子の「女の意地」とか歌つてしまつたりするけれど、いまのところまだそんなに「こんなに苦しいものなら」といふ気分にはなつてゐない。
それに、そもそも「別れにやならない」のは「女の意地」のせゐではないしね。
それにしても、西田佐知子、いいね。

それはともかく。

なんで今回こんなに「五右衛門vs轟天」にはまつてしまつたのか。
気分が昂揚してゐるので冷静には考へられない。
が、ひとつには、劇団☆新感線のネタものが好き、といふのが理由としてあげられる。
これは最近書いたな。
最初に見た新感線の芝居がネタものだつたといふのが大きいんだらう。
なぜネタものが好きなのか。
ネタものには、引用が多いからだ。

「ted」といふ映画がある。
クマのぬひぐるみの出てくるアレね。
この映画は、80年代くらゐのいはゆるサブカルチャーを元にしたネタがこれでもかといふくらゐ出てくる。
なんたつて冒頭にジョニー・カーソン・ショーだよ。
もうそれだけでかなり knock out な感じだ。
ボストンでの話だといふのに、出てくるNBAの選手の名前はカリーム(字幕では「ジャバール」)だし、カーチェイスのときに出てくる名前は「T.J.フッカー」。本邦では「パトカーアダム30」とかいふ邦題で放映してゐたドラマのタイトルロールだ。
思ひ出すよねー。楽しかつたよねー。

かういふ楽しみ方が劇団☆新感線のネタものにもある。
新感線のネタものの方が教養を必要とするけれどもね。
劇団がこれまで上演してきた芝居の記憶がある方が楽しいし、いはゆるサブカルチャー的にもアニメやまんが、映画にテレビドラマだけではなくて、ここ数年のうち人気のあつた舞台、ミュージカル、はてはアイドルについてまで、実に幅広いネタが埋め込まれてゐる。
やつがれは、新感線歴は浅いし、歌舞伎と文楽以外の舞台はほとんど見ないのでミュージカルネタもわからないことが多い。今回は「エリーザベト」ネタがあつたらしいのだが、わからかなつた。
あとアイドルもわからないことが多い。「東方で神起」とか云はれても、「ああ、きつとこんなやうな振り付けでこんなやうな歌を歌つてゐるんだらうなあ」といふことくらゐしかわからない。

それでも総じておもしろい。
埋め込まれてゐるものの元ネタがわからなくてもおもしろいのだ。
そこに「なにかが埋め込まれてゐるつぽい」といふことがわかれば。
たぶん。

「内容が深刻ではない」といふことも理由のひとつだなあ。
劇団☆新感線の芝居はネタものでなくても「人生とは」みたやうな話はなくて、活劇的わくわく感に満ちたものが多い。
中でもネタものはそのわくわく感がほかの芝居よりも大きいやうに感じる。
おそらく、人は「人生とは」とか考へたくなるものなのだ。
なんかその方がやうすがいいぢやん。
でも、そんなのどうでもいい。
舞台の上ではひたすら「おもしろいことおもしろいこと」に満ちてゐれば、それでいい。
さう思ふ。
「人生とは」と深く考察できるやうな芝居を「おもしろいことおもしろいこと」と思ふ向きもあるだらうし、さう思はせる芝居もあることだらう。
そこは人それぞれだし、出会ひによつてもちがつてくる。
自分の場合は、ネタものと合つたんだらう。
ものごとを深く考へるのとか、苦手だしね。

それから、恋愛要素が薄い、といふのもあるかな。
ないわけぢやないけど、それが中心といふわけでもない。
これも好きずきだ。
やつがれは、恋愛要素はあんましない方が好き、といふだけ。

とかう、外堀ばかり埋めて或は掘つてしまふ。
なかなか本丸には至れさうにない。
このまま本丸に至ることなく「五右衛門vs轟天」熱はさめていくのだらうか。
そんな気がしないでもない。

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