何かが間違つてゐる
最近、「人生踏み誤つたな」と思ふことがある。
多分、六月の「新薄雪物語」が転機だつた。
これまで芝居を見て来て、一月に二度以上見に行くといふことはほとんどなかつた。
八十助(当時)が納涼歌舞伎で丸本の大役を初役でやる、といふときに初日近くに一度行き、楽の近くにもう一度行つてゐたことがあるのと、孝夫(当時)が大病の後に復帰したときに初日に行つてその後もう一度行つたくらゐかな。
いや、歌右衛門の梅の方を二度見たかな。そんな気がする。
劇団☆新感線は一時職場に大変お好きな先輩がゐて、行けなくなつたチケットをゆづつてくれたことがあつて、二度見たことがあるものもある。
まあ、そんな感じだつたわけだ、長いこと。
六月の「新薄雪物語」は、吉右衛門演じる団九郎と仁左衛門演じる大膳との場面が見たかつた。
それで昼の部は二度行くことに最初から決めてゐた。
まさかねえ、夜の部ももう一度行くことにならうとはねえ。
それも千秋楽に、二階席最前列を取つて、だ。
夜の部は仁左衛門の園部左衛門とその妻梅の方を演じる魁春が見たくて行つたやうなものだつた。
又五郎もよかつたしねえ。
あと、一度見たときにはあまり感心しなかつた団九郎がよかつたんだよ。
だいたい、こんな素晴らしい芝居がかかつてゐるのに、客の入りが薄いつてどーゆーことよ。
さういふ思ひもあつた。
七月はさらに歯止めがかからなくなつてゐた。
大阪松竹座に二度も行つてしまつた。
遠征二度なんて贅沢、生まれてはじめてだよ。
これも、入りが薄いのが気になつてゐたといふのもある。
でも「絵本合法衢」をこんな形で見るのはこれで最後だらうと思つてしまつたんだよね。
ほんとは「ぢいさんばあさん」も見たかつたがそれはあきらめた、といふ話は以前書いた。
で、今月は「2015年劇団☆新感線35周年 オールスターチャンピオンまつり「五右衛門vs轟天」(以下、「五右衛門vs轟天」)」だ。
「五右衛門vs轟天」は客の入りは薄くない。むしろ超満員といつたところだ。
手に入りにくいゆゑに行きたい。
そんな気持ちだ。
どこまで天邪鬼かね。
わかつてゐたことではあるけれども。
この六月・七月・八月の共通点は、「魅力的な悪役しかも複数」といふところだ。
六月の「新薄雪物語」は団九郎と大膳、七月の松竹座は見なかつたものの「ぢいさんばあさん」の下嶋と、見た大学之助さまと太平次、八月は……八月は「悪役」といつてしまつていいのかよくわかんないけど、まあ敵役が何人かゐるよね。
をかしいなあ。
いつからこんなに悪役好きになつてしまつたのか。
昔からか。
考へてみたらその昔一度だけ買つた歌舞伎役者のカレンダーは片岡孝夫のもので、六月の仁木弾正がとてもよかつたからだし。
さういへば吉右衛門も玉三郎と「かさね」をやつたときに、「うはー、播磨屋さん、色悪もいいんだー」とか異様に盛り上がつたし。
お芝居とか演奏会とかは、一度行けばいい。
さう思つてゐる。
さう思ふやうにしてゐる、といふべきか。
来月は歌舞伎座で「伽羅先代萩」がかかる。
これも「魅力的な悪役しかも複数」な芝居なんだよなあ。
仁木弾正と八汐。今回は吉右衛門と歌六である。
一緒に舞台にあらはれることがないのが残念だ。
あと小ワルに山名宗全とか鬼貫とかがゐる。
楽しみだろー?
これは、しかし、もう通はないことに決めてゐる。
休みの日に予定がつまつてゐて行かうにも行けないからだ。
一度だけ見て、できるだけ記憶に刻み付ける所存だ。
ああ、しかし、そんなことができるだらうか。
六月からこの方二度見るのが当たり前になりつつあるところにきて。
まあ物理的にムリなんだから大丈夫かな。
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