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Friday, 31 July 2015

ジャスパー・フォード作品の翻訳、熱烈待望中

Jasper Fforde の The Big Over Easy を読み終はつた。
おもしろかつたねー。なんでこれが翻訳されないのかね。

なにがおもしろいのか。
もちろん話がおもしろい。
あれこれぶちこみ過ぎなんではないかと思ふ点もないではない。
でもそのぶちこみ過ぎ加減が好きなんだよね。
鶴屋南北作品に対してもさう思ふことがある。
ちよつとそれ、いろいろぶちこみ過ぎでせう、でもそこがいいんだけど、とかね。「盟三五大切」なんかさう思ふなあ。

最後のどんでん返しに次ぐどんでん返しもいい。

あと、個人的には「俺の発言がなにを踏まえているかわかる奴がきっといる」といふ点がいいんだと思つてゐる。
この「俺の発言がなにを踏まえているかわかる奴がきっといる」といふのは、「エキレビレビュー」で千野帽子が「口訳万葉集 百人一首 新々百人一首」について書いた記事の題名だ。
古典の授業で「本歌取」といふのを習ふ。
過去の和歌からことばそのものや表現方法などを取り入れて歌を詠む、和歌の表現方法である。
これは別に和歌に限つたことぢやない。
曹操の「短歌行」の「青青子襟悠悠我心」のくだりは「詩経」にあるのをそのまま借りてきたものだし、その曹操の「歩出夏門行」の一説「烈士暮年壮心不已」のくだりを借りて曹操のこの詩を愛唱した王敦の故事から李白は詩を作つてゐる。

わかる人にはわかる。
The Big Over Easy にはそれがてんこ盛りなのだ。
Nursery Rhymes といひ、Mother Goose といふ、童謡(といふのかね)からの借用が多いのはもちろん、「Norwegian Blue」といふアウムが出てきて「pining for the fjords」ときたら、これはもう「死んだアウム」スケッチでせう、モンティ・パイソンの。
さういふのが一々楽しい。
読んでゐるうちに「これ、なんだかわかんないけど、もしかしたら何かからの引用なのか知らん」と思つてしまふほどである。

考へてみたら、これ、お浄瑠璃とか歌舞伎でもさうなんだよね。
なにか別の芝居からの借用、なにか過去の文学作品などからの引用があちらこちらにちりばめられてゐたりする。
さういふのが楽しいんだよねー。

まあ、さういふのがイヤ、といふ向きもあるとは思ふけどさ。

The Big Over Easy が翻訳されない理由は、「サーズデイ・ネクスト」シリーズありきの内容だからだらうな、と思つてはゐる。
本邦では「文学刑事サーズデイ・ネクスト」といふのかな。
最初の三作だけ翻訳されてゐる。
順番に「ジェイン・エアを探せ!」「さらば、大鴉」「だれがゴドーを殺したの?」だ。
これに Something Rotten を加へた四作が「サーズデイ・ネクスト」の最初のシリーズである。
次のシリーズもすでに三作出版されてゐる。
「だれがゴドーを殺したの?」以降、翻訳作品が出版される気配はないけどね。

たまたま第一作目の「ジェイン・エアを探せ!」が文庫になつた時に入手して、読んでみたらこれがおもしろい。
それで「さらば、大鴉」「だれがゴドーを殺したの?」と読み進んでみたものの、一向につづきが出版されるやうすがない。
それで仕方なく原書を読み始めた。
The Big Over Easy もその流れで手にしたものだ。
おもしろいんだけどなあ。
好きなんだけどねえ。
つづきを日本語で読む日はやつてこないのかなあ。

ジャスパー・フォード作品の特徴は、笑へるのにときにとても切なくて最後は大団円、だと思つてゐる。
「サーズデイ・ネクスト」シリーズがさうだし、The Big Over Easy の Nursery Crime シリーズもさう。The Last Dragonslayer シリーズはまだ一作めしか読んでゐないし、話の展開などは「サーズデイ・ネクスト」によく似たところがあるけれど、やはりさうである。
それに上に書いたやうな引用・借用の嵐も、かな。

ずつと「笑へるのにときにとても切なくて最後は大団円」と思つてゐたのだが、Shades of Greyは切ないだらけだつたやうに思ふ。
これは翻訳されるんぢやないかと期待してゐたが、よく似た題名の別の小説が先に翻訳されてしまつたから、これもないかもしれないなあ。
Shades of Grey は未来の話で、人々はある色しか認識できなくなつてゐる。人によつては赤、人によつては青といつた具合にね。
どれくらゐ色を識別できるかにも個人差がある。
まつたく色を識別できない人々は「Greys」と呼ばれて社会的に最下層に位置する。
とても気になるところで終はつてしまつたので、つづきを待つてゐるのだが、まだかなあ。

ジャスパー・フォード作品、ちやんと読めてゐる自信がないので、翻訳を待つてゐるんだけどなあ。
と、書いたりしたら、そのうち出版されたりしないだらうか。
しないか。

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