展覧会に行く
今年は例年になく展覧会に行つてゐる。
「今年はさうしやうかな」と、New Year's Resolutions といふには大げさだが、考へてゐた。
考へてゐたわりには、最初が四月の連休に入るちよつと前だつた、といふ出遅れぶりだ。
さう云ひつつも、渋谷ヒカリエの川本喜八郎人形ギャラリーや飯田市川本喜八郎人形美術館にはそれなりに行つてゐるんだけれどね。
最初が明治大学米沢嘉博記念図書館で開催されてゐた「没後20年展 三原順復活祭」だつた。
これを皮切りに、サントリー美術館の「若冲と蕪村」、横浜人形の家の「シャーロックホームズ」展、東京国立博物館の「鳥獣戯画 京都 高山寺の至宝」、世田谷文学館の「植草甚一スクラップブック」、太田記念美術館の「江戸の悪」、三井記念美術館の「春信一番写楽二番」に行つた。
去年まで展覧会には年に二回行くかどうかだつたことを考へると、格段に増えてゐる。
展覧会に行かう、といふか、絵を見に行かうと思ふやうになつた所以は、いろいろある。
ひとつには、三森ゆりかの講演を聞いたからだ。
講演の中で絵本を題材に絵の分析や物語の分析についての話があつた。
内容は三森ゆりかの「絵本で育てる情報分析力 論理的に考える力を引き出す(2)」といふ本に詳しい。
それまで、「絵の見方つてよくわかんないや」と思つてゐた。
この講演で、まづは描かれてゐるものをよく見ることからはじめる、といふことを知つた。そして、描かれてゐるものごとから状況を把握する。
それでいいのか。
さう思つて、しばらくは芝居を見るときにさういふ観点から見るやうになつた。
たとへば「野崎村」は、空は青いから昼間、季節は梅の花の咲くころ、そのうち義太夫が語り出すと「年の内」といふことがわかる。
舞台のほぼ中央には家があつて、その家の周りは田んぼか畑、裏手には川が流れてゐるやうだ。
と、こんな感じだ。
絵本も買つてみた。
友人から教へてもらつた「バムとケロ」シリーズから一冊選んだ。
こものなど細かいところまで描かれてゐて、一枚だけでも気をつけて見るのは大変な本だつたが、これもまた楽しかつた。
さうすると次は展覧会だよな。
それも、抽象画にはまだ早いから、ひとまづ具象的な絵の展覧会。
「シャーロックホームズ」と「植草甚一スクラップブック」とはチト毛並みが違ふけれど、ほかは全部具象的な絵の展覧会ばかりだと思ふ。
実際展覧会に行くと大変な混雑ぶりで、一々分析などしてゐられないことばかりではある。
でも、「絵を見る」といふ目的を持つて行つて見るのと、家でぼんやりと絵本などを広げて見るのとでは、やはり見る側の気合ひが違ふ。
数通ふうちに、あまり疲れなくもなつた。
一昨年王羲之展に行つたときは、帰るころにはすつかり疲れきつてしまつて、ちよつとお茶を飲んで休んだくらゐでは立つて電車に乗るのも無理といつた具合だつた。
それが、いまは展覧会が終はつてそのまま電車で帰るのは当たり前になつてゐる。
力のいれ加減がわかつてきたのかもしれない。
ほかに絵を見に行く理由としては、ヒカリエや飯田の展示をよりよく見ることができるやうになるのではないか、芝居をよりよく見ることができるやうになるのではないか、と思つてゐることがあげられる。
実際はどうだかわからないけれどもね。
そんなわけでこの後はまた横浜人形の家で開催される「シャーロックホームズ」展に行きたいし、大河原邦男展と兵馬俑展には行きたいと思つてゐる。
……あんまり「絵」ぢやないね。
Comments