テレビを見るとやる気を失ふ
テレビ番組を見てゐると、働く意欲を失ふことが多い。
たとへば増税のニュースとかね。
こちらの生活が上向きだといふのなら、まあいい。
上向いた分のうち幾分かを税金に振り当てる、といふのなら、仕方がないかな、とも思ふ。
日々の暮らしに余裕のない中、ただひたすら増税されていくと聞くと、なんかもう、そんなに一生懸命に働かなくてもいいかな、と思つてしまふ。
いま一生懸命働いて、残業もして、残業代をもらふとする。
その残業代は翌年の税金額の指標になる。
もし来年そんなに仕事がなかつたら? 残業なんて到底できないやうな状態だつたら?
しかもその上に増税されたら?
さう考へたら働くのがバカバカしくなつても誰も責めたりしないはずだ。
しかも、その増税分の使ひ道がこれまたバカバカしかつたりして、ますます働く意欲が落ちていく。
至極普通のことだと思ふ。
あるいは先週の「オイコミノア」だ。
「子育ての経済学」といふ副題で、就学前教育でこどもの非認知能力を育むことの大切さなどを取り扱つてゐた。
不明にして知らなかつたが、2000年にノーベル経済学賞を受賞した研究なのらしい。
認知能力とは学力やIQのやうなテストでわかるもの、非認知能力とは一見わかりづらい個人の形質をいふのらしい。
有り体にいふと、非認知能力とは協調性とか我慢強さ、発想力、さういつたものをさすのらしい。
この番組を見て、「ああ、自分がダメなのは非認知能力が低いからなのか」としみじみ思つた。
そして、どうも番組の感じからすると、非認知能力は六歳までの育て方が重要なのらしい。
もういまさらどうにもならない感じなのだつた。
2000年にノーベル経済学賞を受賞したヘックマンは、その後の論文で、「非認知能力」を「性格スキル(character skills)」と言ひ換へたといふ。
そして、性格スキルは大人になつてからでも変へられるともいふてゐるのらしい。
でもさ、「性格スキル」つてぱつと見た感じではわからないものなんでせう。
どうも精神論とかでねぢふせてくる相手が出てきさうな気がして仕方がない。
「いまあなたの収入が低いのは性格スキルが低いからです。性格スキルをあげれば収入増間違ひなしですよ」と云つてやつてくるのはアヤシげな新興宗教まがひの詐欺師なんぢやあるまいか。
まあ、さういふ手合ひにだまされないのも「性格スキル」のうちなのだらうが(ゆゑに「性格スキル」と名付けたのはどうかと思ふわけだが)、そもそもその性格スキルが低いから日々苦労してゐるわけであつてさ。
などと、思考はどんどん暗い方向に向かつてゆく。
ちなみにやつがれは、学校に通つてゐたころはほぼ無遅刻だつた。
高校生のときにバス通学だつたので、バスのせゐで遅れたことが何度かあつたくらゐである。
それ以外の徒歩や自転車で通学できるあひだは無遅刻だつた。
これは「性格スキル」の中では「真面目さ」に分類される。
そして「真面目さ」は「性格スキル」の中でもかなり重要であるのらしい。
あー、さうなんですか、と、我と我が身を振り返つて思ふ。
「性格スキル」も案外信頼するに足らないものなのかも?
あとこれは少し前の放映になるけれど、「忍たま乱太郎」で食堂のをばちやんがやる気を失ふといふ話があつた。
「忍たま乱太郎」の食堂のをばちやんといへば、「お残しは許しまへんで」で有名な、下手すると番組一の猛者である。
そのをばちやんが、「毎日毎日生徒や先生のために食事ばかり作つてゐて、あたしこれでいいのかしら」と悩む。
あのをばちやんでさへ、悩む。
さうなんだ、あんな、食堂のをばちやんであることが天職で、日々生き甲斐に燃えてゐるをばちやんでさへ、悩むんだ。
食堂のをばちやんは、また、番組一性格スキルの高い登場人物でもあると思はれる。
そのをばちやんにして、自分が日々やつてゐることに疑ひを持つ。
結局、乱太郎の描いた働くをばちやんの絵を見て、をばちやんはやる気を取り戻す。
残念ながらやつがれにはをばちやんにとつての乱太郎にあたる人物がゐない。
自分でなんとかしなければならない。
テレビ番組を見て落ち込む所以である。
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