挫折して考へる
今日は東京国立博物館の「鳥獣戯画 京都高山寺の至宝」展に行くつもりだつた。
開館直後から入館待ち100分と聞いて、あきらめてしまつたのだつた。
金曜日だし、夜は七時半まで入館を受け付けてゐるはずなので、それにあはせて行つてもよかつたなあ、と帰つてきてから後悔してゐる。
この展覧会、ものすごい人気だ。
公式Twitterアカウントの呟きによると、今日は入館までの待ち時間が最大で130分、中に入つてから鳥獣人物戯画の甲巻を見るための待ち時間が最大で170分だつたらしい。
あはせて400分、といふことはないのだらうが、それにしてもすごい。
中に入るまで二時間もかかり、甲巻を見るのに三時間もかかる。
残念乍らやつがれにはそんな体力はない。
外で一時間待てるかどうかだなあ。
それでも中に入つたらとりあへず座りたいと思ふんぢやあるまいか。
しかもその後電車で立ちつぱなしで家まで帰ることを考へたら、とてもとても二時間待つだなんてできやしない。
さう思ひつつも、ほかの人にできて自分にできないことがあるだらうか、とも思ふ。
展覧会はいつでも混んでゐる。
さういふ印象がある。
小学生のときに一度だけ家族で展覧会に行つたことがあつた。
上野のどこかで開催されたピカソ展だつた。
五月の連休中だつたと思ふ。
これがまたものすごい人出でね。
ピカソの絵だと教へられなければわからないやうな若いころの普通の絵の前は結構ガラガラだつたけれど、如何にもピカソな絵の前はものすごい人だかりだつたと記憶してゐる。
その次が中学生のときに行つたアングル展だ。これも上野だつた。
このときは学校の先生と有志の生徒とで行つた。
そんなわけで日曜日に行つたわけだが、やはりこのときも大変な人だつた。
「オシアンの夢」とか、ちやんと見ることができたけどね。
やつがれのやうに年に二回展覧会に行くかどうかといふやうな人間がたくさん行くやうな展覧会は混むのだらう。
さう思ふてゐたのだが、さうでもないのかもしれない、と思つたのは、根津美術館で開催されてゐる「燕子花と紅白梅」も大変な混み様だと聞いたからだ。
去年、東京国立博物館に「栄西と建仁寺」展を見に行つたときにも思つた。
そのころにはもうキトラ古墳展もはじまつてゐて、キトラ古墳展の方は入場待ちの長い列ができてゐた。
おかげで「栄西と建仁寺展」の方は入館のために待つことはなかつたが、しかし中は結構混雑してゐた。
もしかしたらキトラ古墳展の行列に嫌気がさしてこちらに来たといふ人もゐたのかもしれない。
そのときはさう思つたが、しかし、どうも違ふのではあるまいか。
世の中にはちよくちよく展覧会に赴く人がたくさんゐるのだ。
それも平日の昼間から行くやうな人がかなりゐる。
たまたまやつがれの周囲にはさういふ人がゐないだけで、この世には平日の日中自由になる時間のある人がたくさんゐるのに違ひない。
有り体にいつて、高齢者、だらうな。
展覧会の入場料は大抵映画代よりも安い。
あ、映画はシルバー割引とかあるのか。
しかし、映画ならせいぜい二時間くらゐで追ひ出されてしまふが、展覧会ならさういふことはない。
と、そこまで考へて、定年してとくに仕事もしてゐないやうな高齢者が120分も待ち、さらには展示物を見る余裕があるのだらうか、といふ疑問も浮かんでくる。
さういやサントリー美術館の「若冲と蕪村」展も混んではゐたけれど、ある時点で人が減つてくるのを感じた。若冲の「象と鯨図屏風」なんか、近くでまぢまぢと見、はなれて全体を見る余裕があつた。
おそらく、ここにたどり着くまでに脱落した人が多かつたのに違ひない。
さう考へると、「鳥獣戯画」展も、中にさへ入れればなんとかなるんぢやあるまいか、といふ気がするのだが。
どうやらさう甘くはないやうなんだな。
いづれにしても、展示替へには間に合はないやうなので、見るとしても後期展示だけになつてしまふ。
でも、ちよつとこの「なんで展覧会は混むのか」といふのを考へるためにも見に行きたいと思つてゐる。
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