« 糸端の始末考 | Main | 実写版映画も悪かない »

Wednesday, 15 April 2015

この春もまたこの時期が来た

4月13日(月)、渋谷ヒカリエにある川本喜八郎人形ギャラリーに行つて来た。
14日から展示替へで休館するからである。

渋谷区のサイトには早いうちから4月14日(火)から4月23日(木)まで展示替へで休館するといふ情報が出てゐた。
ギャラリーにはいつも張り出される休館のお知らせがなかつたので、うつかりしてゐた。
去年も一昨年もいまごろだつたよな、と、思ひ出したりする。
思ひ出したりはして、「しかし、待てよ、ギャラリーに休館のお知らせが出てゐないといふことは、もしかしたらまだ展示替へはしないのかも?」などと思つたりもした。
月曜日に見たら、川本喜八郎オフィシャルWebサイトでも展示替へのお知らせがあつた。
月曜日にギャラリーに行つたのは正解だつたやうだ。

そんなこともあつてか、今回は「さよなら」といふ気がしない。
また行けばおなじ面子に会へるのではあるまいか。
そんな気がしてならない。

半年も見てゐると(といつて毎日見てゐるわけではないが)、どの人形とも親しい間柄のやうな気がしてくる。
「また来ちやつた。てへ」みたやうな感じ、といふかね。
髻を切られて驚愕狂乱状態の親雅の前でもそんな気分になつてしまふ。
ただ、兼綱と仲綱とだけはちよつと距離をおいてしまつたなあ。
このふたりは死に一番近いところにゐるからだらう。
射かけられた矢でハリネズミのやうになつてうづくまる仲綱と「しつかりしろ」とかなんとか声をかけ手をさしのべる兼綱とを、まぢまぢと見つめるのはチト気が引けた。
気が引けつつもしやがんでふたりの顔を見ると、なんだかとつても凛々しいんだなあ。それでさらにゐたたまれない気分になつてしまつたりもした。
このふたりの前に立つと、つひつひ視線はその背後の以仁王と頼政とに行つてしまふ。
以仁王も頼政も、兼綱と仲綱とを見てゐる心なのだと思ふ。
以仁王は、以前もちらりと書いたやうに、ひどく心を痛めたやうな表情で馬上からふたりを見下ろしてゐる。それでゐて、どこかに高貴の人の冷たいやうすもある。これがたまらなくいい。
頼政は、達観したやうす、なのかなあ。まもなく自分もおなじ道をたどるから、といふ感じなのかなあ。

死に近いといへば、今回の展示では清盛もそのはずだ。
そのはずなのだが、なぜか清盛からはあふれる精力を感じてゐた。
その手前にゐる孫の資盛なんかより、ずつと生きる力を感じる。
死を前にして「生きたい」といふ強い思ひがさうさせるのか、とも思つたが、多分違ふな。
清盛は、強い生命力を持つ個体なんだらう。
次回の「平家物語」の展示は「平家都落ち」と「義仲上洛」だといふ話だ。
おそらく清盛はゐないだらう。
でも、なんとなくゐるんぢやないかな、といふ気がしてならないのだ。
まあ、ゐてもをかしかない気もするけど。
さういや飯田の今回の展示の清盛にはそれほど生命力を感じなかつたな。
目、かな。
渋谷の清盛はこちらを見てゐるけれど、飯田の清盛はうつむいてゐる。
その違ひかもしれない。

「義仲上洛」といふことは、義仲一門は次回の展示にもゐるのだらう。
連続登場か。どうなるのかなあ。
今回の展示の義仲は野心に燃える態で、実によかつた。
竿立ちになりかけた馬を制御しつつ、頼朝のゐる方向を見据ゑてゐる。
惚れるで、しかし。
両脇に巴と葵とを従へたところなど、まるで脇侍を従へたご本尊のやうですらあつた。
次回はどうなるのかなあ。
上洛して、チト慢心しちやつた感じになるのか。
それとも意気揚々とした旭将軍の姿を見られるのか。
あと、一門の中ではほかに誰がゐるのか。
楽しみでならない。

次回の展示のもうひとつ、「平家都落ち」もどうなるのかなあ。
都落ちといふと、忠度を思ひ出す。
こどものころ読んだお子さま向けの「平家物語」に出てゐたからだ。
忠度はわづかな手勢のみで都に戻り、藤原俊成にみづからの和歌を記した巻物を託す。俊成は後に詠み人知らずとしてそのうちの一首を勅撰和歌集に採る。
だからどうした、といふ話でもあるのだが、なんとなく忘れられない。
忘れられないのは、忠度を「薩摩守」として先に知つてゐたからといふのもある。
いまではほとんど聞かれなくなつたが、以前は無賃乗車を「薩摩守」といつた。「忠度」と「ただ乗り」とをかけてゐる。
忠度といへば薩摩守で、そんな和歌の名手だつたなんて全然知らずに読んだものだから、印象に強く残つたのだらう。

忠度は、前回の展示のときにゐて、正面を切つて鼓を打つてゐた。
きりりとしたいい表情でね。
きつと鼓もよく打つのだらう、と、当時見に行つて書いた記憶がある。
次回の展示では、忠度はゐるか知らん。
ゐるとしたら、どんなやうすなのか知らん。
その他の人物もあはせて、気になるところである。

はっ、「平家物語」のことばかり書いてしまつたが、次回は「三国志」もあるのだつた。
赤壁の戦ひの予定ださうなので、前回の展示のときにもゐた人々がまた出てくるのかな。加へて玄徳・関羽・張飛とか曹操とか。
あと、まだ見たことのない人形がゐると思つてゐるので、その人が出てくるか否かも気になる。
初回の展示のときにゐた董卓・王允・李儒に再会できるのはいつの日か、などと思ひつつ、もしかしたら赤兎馬にはまた巡り会へたりするか知らん、とかね。

来週の金曜日を待つばかりである。

|

« 糸端の始末考 | Main | 実写版映画も悪かない »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference この春もまたこの時期が来た:

« 糸端の始末考 | Main | 実写版映画も悪かない »