水戸エクセル開業30周年記念企画 三国志ー川本喜八郎の世界ー展に行く
四月四日(土)、水戸エクセル開業30周年記念企画展を見てきた。
展示内容は「三国志-川本喜八郎の世界-」である。
三月七日から四月五日の展示だつた。
すでに終はつてゐるので少々気が引けるが、記憶のよすがに残しておく。
なぜ水戸で三国志なのかといふ話は、上記リンク先をご覧いただきたい。
展示は水戸駅ビルのエクセル本館6階の特設会場で行はれてゐた。
展示内容は、玄徳、関羽、張飛、孔明の人形と人形劇のときの人形たちの写真や人形のできるまでなどのパネル、それと「川本喜八郎作品集」の上映だつた。
会場は三方を壁で区切つたスペースで、開放感があつた。
広さを確認するのを忘れてしまつた。
渋谷ヒカリエの川本喜八郎人形ギャラリーの人間がゐられる部分よりも広い感じがした。
ヒカリエでいふとエスカレータのそばにあるメイン会場よりちよつと狭い、かな。
レストラン階ではあるものの、食べ物の匂ひはほとんど感じなかつたと思ふ。
三々五々人がおとづれてゐて、無人といふことはほぼなかつた。
三方の壁に沿つて、パネルが飾られてゐた。
入り口から見て左側の壁に、人形の写真のパネルが並んでゐた。
上下に一枚づつ、入り口側から孫権・曹操・玄徳とそれぞれの配下のものたちが八名づつゐた。
一番入り口側の上が諸葛瑾、その下が呂蒙で、以下、魯粛、闞沢、周瑜、徐盛、孫権、黄蓋、孫権、仲達、許褚、程昱、典韋、郭嘉、夏侯惇、曹操、夏侯淵、孔明、龐統、張飛、馬超、関羽、黄忠、玄徳、趙雲だつた。
この並び、とくに玄徳と仲間たちのあたりの並びは絶妙ぢやないかな。
関羽と黄忠、張飛と馬超、孔明と龐統といふあたりに深くうなづく。
玄徳と趙雲とのパネルの奥、会場の左隅にはモニタが設置されてゐて、「川本喜八郎作品集」から9作品がエンドレスで上演されてゐた。
これを見てゐるだけでも一日楽しめさうだ。
昼から「犬儒戯画」とか「詩人の生涯」といふのも乙なものである。
最初は遠巻きに立つて見てゐたのに、いつのまにかモニタの前のいすに腰掛けて最後まで見てゐた、といふ人が多いやうに見受けられた。
正面奥の壁には、人形の作り方のパネルと、「連環の計」といふことで王允、貂蝉、董卓、呂布のパネルと、一番右側の上に貞姫のパネルが飾られてゐた。
人形の作り方は、范増だつた。このパネルははじめて見る。
カシラの型を作るところから衣装を着付けた姿まで、写真と解説でわかりやすく説明されたパネルだ。
范増かー。
項羽と劉邦、見てみたいなあ。
別冊太陽の「川本喜八郎 人形-この命あるもの」に掲載されてゐる写真でしか見たことがない。
この本の表紙が項羽と劉邦との写真で、これがまたいいんだよねえ。
見られる機会はあるだらうか。
あるといいなあ。
貞姫のパネルにつづいて、右側の壁には「三国志を彩る女性達」といふことで小喬、美芳、大喬、淑玲のパネルがあつた。上下左右の順に書いたからかうだけれども横並びで書くと小喬と大喬とが並んでゐて、美芳と淑玲とが隣同士である。
小喬は、やはり可愛いな。
その右側に三国志時代の地図や三国志や人形劇三国志の説明のパネル、川本喜八郎の年表、開会の挨拶などのパネルがあつて、一番入り口に近いところにイーゼルに乗せられた川本喜八郎の写真があつた。ベレー帽をかぶり、ちよつとおもしろい織り地のマフラーを巻いた姿の写真である。
さういやヒカリエの川本喜八郎人形ギャラリーにも三国志関連のパネルを増やすだか新たなものにするだかといふ話があつたんだがどうなつたのだらう。
去年のいまごろ展示替へ直前に行つたら、区役所の方とおぼしき人と業者の方とおぼしき人々がそんな話をしてゐたんだよね。
平家物語のパネルは、家系図が人形の写真入りになつたりしてゐる。
三国志のパネルも期待してゐる。今度の展示替へでなんかあるといいなあ。
さて、人形の展示である。
人形は一人一人ケースに入つてゐた。
入り口をちよつと入つたあたりの中央に、孔明の人形が立つてゐた。
会場の右手には入り口に近い方から張飛、玄徳、関羽が座して杯を掲げてゐた。ケースの外、背後には桃の花の絵が飾られてゐた。もちろん「桃園の誓ひ」をあらはしてゐる。
玄徳、関羽、張飛は、以前ヒカリエや飯田市川本喜八郎人形美術館にも飾られたことのある人形だと思ふ。
さう思ふ所以は衣装だ。
とくに玄徳の、水色の衣装が忘れられない。
甘い水色なのだ。
全然そんな色合ひはないのに、どこか桃色めいた甘さあたたかさを感じる衣装なのである。
生地のやはらかくてどこかくたつとしたやうすが、やんごとなき筋の乳幼児の寝間着かなにかのやうにも感じられる。
関羽、張飛の衣装もあのとき見たものと同じだらう。
「あのとき見た人形だ」と断言できない理由は、玄徳の表情にある。
ヒカリエや飯田で見た玄徳は、至極おとなしげな表情をしてゐた。
若くて品がよくて、関羽と張飛とに盛り立てられて旗揚げした、といふ感じだつた。
玄徳自身にも野心も野望もあるだらうが、それはつつんで見せてゐない。
そんな風に見えた。
水戸で見た玄徳は、勇ましげな表情で杯を掲げてゐた。
みづから率先して賊を討つ。
そんな風に見えた。
そんな風に見えた所以は、おそらく顎がわづかにあがつてゐたからだと思ふ。
以前、飯田で見た曹仁についてもおなじことを書いた。
はじめて見たときはおとなしげに見えた曹仁が、その次の展示のときにはとても猛々しい武将に見えた、その理由は次の展示のときの曹仁の顎があがつてゐたからだらう、と。
顎があがつてゐると、口角のさがつた口元がよく見え、また口が開いてゐて、見るこちらをあふつてゐるかのやうに見える。
さう考へると、ヒカリエや飯田で見た玄徳と、水戸で見た玄徳はおなじ玄徳なのだらう。
おそらく。
玄徳はそんな感じでめづらしく意気揚々としてゐる。
その右側にゐる張飛は景気よく杯を掲げて玄徳に同調してゐるやうに見える。
玄徳の左側の関羽は杯を掲げてはゐるものの思慮深げだ。ほんのすこしではあるけれど、うつむきがちだからかもしれない。
孔明は、最初見たときにちよつとエキゾチックな顔立ちをしてゐるな、と思つた。
目がちがふ。
人形劇の孔明の目は切れ長といふ印象がある。
この孔明の目は切れ長といふよりはちよつと大きいかなあ。
あと茶色い部分が明るいやうに感じた。これは目自体が大きいからさう感じたのかもしれない。
顔の形も顎が少し細いかなあと思つたが、それは襟が抜けてゐるせゐもあらう。
この孔明の襟はかなり抜けてゐる。
といつて、だらしないほどではない。絶妙な抜き加減である。
パネルの孔明を確認したところ、襟元はきつちりしてゐた。
やはり人形によつていろいろ違ふんだなあ。
違ふんだなあといへば、黒くて薄い道服(かな?)の柄が違ふ。
この孔明の柄は菊の花の柄、かな。いろんな形の菊の花が散らしてあるやうに見える。
人形劇のときはちよつと唐草模様の入つたやうな柄だつたやうに思ふ。
単に黒い服だけれども、間近で見るとちよつとした柄の違ひで印象が変はるものなんだなあ。
下の階にある川又書店では、人形劇三国志のグッズが売られてゐた。
三国志関連書籍のフェアも開催されてゐて、親書か文庫を買ふと人形劇三国志のブックカバーをつけてもらへるといふ話だつた。
ブックカバーは四種類といふので四冊持つてレジに行き、「人形劇三国志のカバーをお願ひします」といつたらなにも云はなくても四種類かけてくれた。
写真がそのカバーである。
四種類といふから張飛がゐるのかと思つたら趙雲なのでちよつとびつくりだ。
張飛もほしいねえ。
曹操もいいよねえ。
また、このとき未使用のカバーもいただいてしまつた。
さらに、三国志関連の書籍を買ふと一冊につき一枚横山光輝の「三国志」のホログラム絵はがきをもらへるといふので、二枚いただいてきた。種類はたくさんあつて迷つたが、二枚といふことだつたので曹操と関羽とをもらつてきた。
まつこと盛りだくさんの水戸行きであつた。
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