飯田市川本喜八郎人形美術館で特別展示を見る
三月六日、七日と飯田市川本喜八郎人形美術館に行つてきた。
「また?」といふ向きもあらう。
それは云はない約束よ。
十二月の展示替へから三ヶ月がたつた。次の展示替へもほぼ三ヶ月後だらう。
再訪するにはちやうどよい時期である。
すくなくともやつがれはさう思つてゐる。
展示替へ直後に行つたとき、いつもはもうちよつといろんな人形が展示されてゐるホワイエががらんとしてゐた。
ケースがいつもより少なかつた。
これは、こののちいろいろ催しものや展示があるのだらう。
そのときのblogエントリにそんなことを書いてゐる。
予想はあたつてゐた。
いま行くと、ホワイエのつきあたりにチェコの人形劇の舞台がしつらへてあるし、その手前には川本喜八郎の生誕90年を祝して故人の持つてゐた三国志関連の「お宝」や訪中時の写真、この美術館での写真などが数多飾られてゐる。
これがひとつひとつ楽しい。
チェコの人形劇の舞台は、この美術館で「ブラティスラヴァ絵本原画展」を開催した際に寄贈されたものなのださうである。
美術館の方がとても親切に説明してくだすつた。
リンク先を見ていただくとわかるやうに、家庭用だといふ。
舞台は、おとながひざをついて人形を操作するのにいいくらゐの高さ、かな。幅は全体で1mちよいくらゐなのではあるまいか。
背景は紙芝居の要領で差し替へられるやうになつてゐて、両端にある縦長の背景は、裏返すと別の絵が描いてある。
人形は、おとななら片手で遣へるやうになつてゐる。
ハンガーのやうな三角形の木製の取つ手に手と足とにつながつた糸が四本つながつてゐる。
手につながつた糸は左右別々に動かすことができる。
足につながつた糸はハンガー状の取つ手をシーソーのやうに傾けると歩いてゐるやうに見えるといふ寸法。
とてもよくできてゐる。
人形は木で作られてゐて、その上に髪の毛や服をつけてゐる。
やつがれが行つたときは、赤ずきんちやんのセットがくまれてゐた。
ほかにも魔法使ひや狼、老若男女さまざまな人形がそろつてゐる。
ここだけは人形に触つてもいいし、みづから操演してみてもいい。舞台の写真も撮つてよいのださうである。
楽しい。
これはちよつと楽しいぞ。
実際に手に取つて遣へるといふのが、こんなに楽しいとは思はなかつたな。
川本喜八郎所蔵の三国志関連の「お宝」展示のうち、話題になつてゐるのは定軍山で求めたといふ陶器の孔明像だ。
展示では、この孔明像を中心にして左右にまた別のところで求めた陶器の孔明像が並んでゐる。
ひとつひとつ趣が違ふが、でもやつぱり孔明なんだよねえ。
個人的にはしんこ細工の人形が気になつた。
精巧なのである。
展示の説明にも、「日本のフィギュアの先駆けか」と書かれてゐたりした。
また、「目の前であつといふ間に作り上げていく」とも書いてあつた。
いまではこんな細工ものを作れる職人はゐない、といふやうなことも書かれてゐたやうに思ふ。これは記憶間違ひかもしれない。間違ひであつてくれることを祈る。
また、いくつか並んだ泥人形のうち、三国志の主な登場人物を全部作つてみました、といふやうな全長2cmていどの平たい人形に目を奪われた。
ちやんとサテン調の布を張つた箱に麗々しく入つてゐて、名札とともに人形が並べられてゐる。50体はくだらないんぢやあるまいか。
ああ、ちやんと数を数へてくるんだつたなあ。
どれが誰か判じるのも楽しいかもしれない。
写真展示は、実はこの三つの中では一番興味深い展示かもしれない。
訪中時の写真で在りし日の故人を忍びつつ、この美術館での展示替へのときの川本喜八郎のやうすを見ることもできるからだ。
とくに、孟公威の前に正座して相対してゐる写真と、その孟公威を手に真剣な表情をしてゐる写真とがよかつた。
あと、ユーリ・ノルシュテインが李白のポージングをしてゐるやうすをのぞき込んでゐる一枚と、李白を前にふたりでほほえんでゐる一枚。
いいなあ。
こんな風に人形と向かひあつてゐたんだなあ。
行つてよかつた。
あらためて見たギャラリー内の展示については、また機会があれば書くつもりでゐる。
紳々は剣の鞘も中古品のやうだつた、とかね。
« 講演「川本喜八郎 その人と作品」を聞く | Main | 仕上げてみないことには »
Comments