字を習ふ?
通信教育のユーキャンで一番人気のある口座はボールペン字なのだと聞いた。
ボールペン字つて、いまどき使ふ機会があるのだらうか。
などといひつつやつがれは、かつて通信教育で三ヶ月間ボールペン字を履修したことがある。
三ヶ月もやつてゐると、自分の字がお手本に近づいていくのがわかる。
その後しばらくはそんな感じで、いまはもう元に戻つてしまつた。
戻つてはしまつたものの、やつてゐる当時は「お手本に近い字が書けるやうになつてゐる」といふ実感があつた。
もしかしたらこの実感がいいのかなあ。
なにしろ世の中なんでもPCに入力して印刷する時代である。
年賀状でさへ表も裏もプリンタ出力なんてのがざらにある。
職場で字を書くことなんて、ほとんどないなあ。ノートを取るときくらゐかなあ。
ちよつと思ふのは、こどものゐる人は、こどもが幼稚園や小学校にあがつたときに持ち物にひたすら名前を書く必要がある、といふことだ。
でもボールペンでは書かないなあ。フェルトペンだらう。
まあボールペン字をやつてもフェルトペンで書く字にも影響は出て来はするけれども、このためにボールペン字を学ぶといふのはちよつと考へられない。
最近は履歴書もPCに入力して印刷するんだらうしなあ。印刷さへしないかもしれない。そのままメールに添付して提出するのぢやあるまいか。
……と思つたら、履歴書はいまでも手書き全盛なのか。それならまあボールペン字が人気になるのもうなづけないこともない。すこしでも印象はよくしたいからね。
しかし、就職活動以外にボールペン字の活躍の場はあるのだらうか。
ぱつとは思ひつかないんだよなあ。
ところで、萬年筆を使つてゐると「このペンを使ふと自分らしい字が書ける」「このペンだとまつたく自分らしい字にならない」といふことがある。
最初は、モンブランのショパンエディションだつた。
丸善日本橋店が改築する前、もとめたペンだつた。
これが実に自分らしい字の書けるペンだつた。
いまはまたちよつと変はつてきてしまつてゐるけれども、愛用してゐる。
やつがれの萬年筆への執着はここからはじまる。
現在手持ちのものでいふと、中屋万年筆の細軟が一番自分らしい字のかけるペンだ。
使つてゐても自然な感じだ。
逆に大橋堂のペンを使ふと自分らしさに乏しい字になる。
これがまたおもしろい。
「こんな字になるんだ」といふ楽しさがある。
本来、さういふ楽しさといふのは、きちんと基礎をおさめた人の楽しみだらう。
やつがれのやうに好き勝手に書いてゐながら「こんな字になるんだー」とかいつてゐるのは間違つてゐる。
それならボールペン字のひとつも習つた方がいいのか知らん。
そんな気もする。
人は、きれいな字を書けるやうになりたい、と思ふものなのかもしれない
。
さうも思ふ。
なるほど、考へてみたらやつがれは自分の手帳には極力縦書きで書き込むやうにしてゐる。
横書きよりも若干ましな字が書けるからである。
日本語は、縦書きに特化してゐるからなあ。横書きでおなじやうに書くのはむづかしい。
それにしても通信教育の口座で一番人気があるのがボールペン字といふのはチト不思議だ。
通信教育でもなんとかなるものの筆頭だからかな。
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