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Wednesday, 10 December 2014

飯田市川本喜八郎人形美術館 荊州の人々

12月6日に飯田市川本喜八郎人形美術館に行つてきた。
見てきた展示について書く。

今回は70体を超える人形が展示されてゐる。うち、およそ7分の4が三国志、7分の2が平家物語、7分の1が人形アニメーション「蓮如とその母」である。

展示室への入口を入ると、向かつて右手のケースには紳々竜々がゐる。
左側に曹操軍の兵士の出で立ちの紳々、右側に平民の衣装の竜々が立つてゐる。
今回の三国志の主題は「赤壁」である。
紳々と竜々とが曹操軍に入つたのは、もつと前の話である。
しかし、この場の雰囲気は、先に曹操軍に入つた紳々が竜々を誘つてゐるやうに見える。
紳々は槍を抱へてゐる。鎧や剣もふくめて、見るからに「お仕着せ」の衣装といつた感じだ。槍などは穂先がところどころ欠けてゐて、柄もそんな感じ、石突もないときてゐる。この後出てくる武将の得物と比べるとおもしろい。
竜々は、紳々に肩をたたかれて、「それぢやオレも」と考へてゐるやうに見える。
さう思つてみるから、といふのも、もちろんある。

向かつて左手のケースには「荊州の人々」といふ題名がついてゐて、入口に近い方から、劉表、蔡夫人、劉琮、劉琦、玉桃の順で並んでゐる。

劉表をこんなに間近で見るのははじめてかもしれない。
もしかしたら最初の人形展のときに見てゐるかもしれないけれども記憶にない。
立つて、やや展示室内部の方を見てゐる。
着付けが若干ゆつたりめに見えるのは、恰幅のよさを表現してゐるのか、はたまたチト老齢であることを示してゐるのか。
衣装の龍の模様がよく見えるのが今回うれしい点だ。
前垂の部分に上下にふたつ丸があつて、それぞれ龍が描かれてゐる。刺繍かなあ。
どちらの龍も三本指で、といふことは雌だらう。
この春、栄西と建仁寺展でたまたま話をした人から、「龍は五本指が雄で三本指が雌」といふ話を聞いた。
五本指の龍を描くのはめづらしいのださうである。実際、海北友松の襖絵の龍も三本指だ。
前回の展示のとき、曹操の衣装に描かれてゐた龍は五本指だつたんだよね。めづらしいのかも。
劉表と劉璋とをならんだところを見てみたいなあ、などと思ふたりした。

蔡夫人は劉琮を守るやうにやや後ろに立つてゐる。
蔡夫人はわづかに左、劉琮はわづかに右を見てゐる。
ふたりして左右に目を配つてゐるやうにも見えるし、互ひにまつたく関係のないことを考へてゐるやうにも見える。蔡夫人は劉琮に劉表のあとを継がせやうと謀つてゐるけれど、劉琮にはまつたくその気はない、とかね。
以前の展示のときも、ふたりの位置関係はこんな感じで、でもおなじ方向を見てゐたやうに記憶する。
ちよつと視線の向きを変へるだけで趣がずいぶんと変はるなあ。
見る角度によつては劉琮は賢さうに見えることもあつて、(人形劇では)早々と死んでしまつたのが惜しまれる。

劉琦は、片手を掲げて展示室奥の方を見てゐる。
左側から見るとこれがなかなか勇ましい感じがする。
劉琦さまなのに。
劉琦さまといへば、やつがれの中では「人形劇三国志一シケ(ほつれ毛)の似合ふ男」であり、憂愁の貴公子である。
福助時代の中村梅玉のイメージなんだよなあ。今でもいいか、高砂屋さん。
なのに勇ましい。
衣装がまた華やかだしね。大輪の菊の花の描かれた衣装は、やさしくもあるが、ぱつと華やかな感じがする。
人形劇でも、出陣するところなんかは勇ましかつたりもしたけれど、印象に薄い。
それが、今回なんだか元気ぢやあないか、と思つて正面や右側から見ると、やつぱり安定の憂愁の貴公子つぷりで、なぜかちよつと安心する。
ところでここまで劉表の家族はみなくつに緑が使はれてゐる。劉表自身のくつは青のグラデーションになつてゐるけれど、中央の濃い青の色が若干緑がかつて見える気がする。お揃ひなのだらうか。

ケースの一番奥には、玉桃がゐる。
玉桃は「人形劇三国志」では、劉表の姪といふことになつてゐて、玄徳の婚約者にどうか、と云はれた娘である。
入口から入つてきて目に入るのは、ちよつと顎を出してうつむいた姿で、控へ目にしてゐるやうに見えないこともないものの、なんだか老けて見える。
正面にまはつて見ると、老けては見えないので、見る位置の問題かな。
玉桃のくつは赤い。姪だけど、家族とは見なされてゐないのかも、といふのはちよつといぢわるなものの見方かな。
それにしても、劉表亡き後、お家騒動があつたり曹操軍が攻めてきたりして、玉桃はどうなつてしまつたのだらう。
一話かぎりの登場ではあつたし、かませ馬的な可哀想な人物ではあつたものの、玉桃のその後が気になるよ。

以下、つづく。

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