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Thursday, 16 October 2014

本屋さんからのお勧め

一昨日から、保元・平治の乱に関する本を読んでゐる
まだ半ばくらゐ。
これが滅法おもしろい。
なんでいままでかういふ本を読まなかつたのかね。
悔やまれることしきりである。

このweblogでもくどく書いてゐるやうに、こどものころの愛読書が「牛若丸と弁慶」といふ不思議な本であつた。
不思議な理由もくどく述べてゐて、最初の話こそ「牛若丸と弁慶」なのだが、次が倶利伽羅峠の話、いけづきとするすみの話、鵯越の話、熊谷と敦盛の話……などと続き、「しづやしづしづのおだまきくり返し」たと思つたら、三つの鉢の話とか日蓮のちよつとした伝記風の話が来て、最後は神風、といふ、なんかもりだくさんな本だつた。
ちよつと風変はりなオムニバス小説、だらうか。

とにかくこの本が好きだつた。

おなじころ、伯母姉妹がたまに我が家をおとづれることがあつた。
帰つたあと、伯母たちが座つてゐた椅子の下をのぞいてみると、本が二三冊、おかれてゐることがあつた。
もしかしたらあれは祖母からの贈り物だつたのかもしれないな。
こども向けの、おもに日本の民話や日本人の伝記を集めたシリーズのうちから選んでくれたらう本だつた。
なかに「源義経」といふ題名の本があつた。
この本で能登守教経のはなつた矢を受けて佐藤継信が倒れる話を知つた。挿し絵もあつた。白黒で、いまはの際の継信を、義経が抱きかかへ、その他の人々がそのまはりをとりまいてゐる、といつた絵だつた。

その後、小学三年生のときに夏期合宿に参加することになり、そのとき一冊だけ持つて行つていいと云はれて自分が選んだ本が、こども向けの「平家物語」だつた。
平忠盛はやぶにらみだつたとか、源三位頼政の鵺退治とか、鹿ヶ谷事件とか、この本で知つた。都落ちするときに忠度が和歌を託していく話とか、義仲が牛車の乗り方も知らず、礼儀の知らない態度で貴族たちにご飯を勧める話とかもだな。

やつがれの、いはゆる源平合戦に関する知識はここで途切れてゐる。
このあと、ほかの本を読んだりすることはなかつた。
さう記憶する。
それでこの年まで来てしまつた。

それでも、文楽や歌舞伎を見るのに困ることはなかつた。
歌舞伎をはじめて見たときに「逆櫓」がかかつて、「なんで樋口次郎が船に乗つてゐるのか」と驚いた。
見てゐると、重忠も出てくるし。
すつかり忘れてゐた懐かしい人々が出てくる。
歌舞伎の印象は、さういふ感じだつた。

今月もかかつてゐる「吉野山」では、佐藤忠信に化けた狐が忠信の兄・継信の最期を物語る場面がある。
懐かしい。
いまはなにもかも懐かしい。

文楽や歌舞伎は、いまもそんな気分で見てゐる。
昔なじみの活躍を見る機会。
そんな感じだ。

一昨年の大河ドラマは「平清盛」だつた。
大河ドラマ史上最低の視聴率を記録したのださうだが、最初から最後まで見た。
知らない話や知らない人が多かつた。
嗟吁、知識がまつたく足りてゐない。
つくづくさう思つた。

さう思つて、しかし、そのままになつてゐた。
別に、こどものころ覚えたことだけで困ることはないし。
そして、そのことを誇らしく思つてゐる自分に気がついた。

これではいけない。
さう思つてゐたところ、丸善のhontoから「中世の人物 京・鎌倉の時代編 第一巻」を紹介された。
これは、よい機会なのではないか。
さう思つて、読み始めてみたら、これがおもしろいんだなあ。

例によつて、出てくる人の名字は藤原か平か源で、しかもみんな名前が似通つてゐる。
誰が誰だかわかんないよ!
とは思へども、「えうは似た名前同士が血縁関係にあるつてことね」と、必ずしもさうではないのだが当たらずしも遠からずといつたところで読んでいくと、まあまあ話は通じる。
それに、お子さま向けとはいへ、前提知識がまつたくないわけでもないから、「あ、それはあれのことね」みたやうなこともわかる。
おもしろい。
なんだかおもしろいなあ。

今のところ「へえ」と思つたのは、藤原頼長は「春秋左氏伝」が好きだつた、といふところか。
「韓非子」ぢやないんだー、みたやうなね。
あー、だからああだつたのねー、みたやうな。

もつと早くにかういふ本を読んでゐればよかつたのに。
つくづくさう思ふ。
まあ、この本自体はつい最近発売になつたものだけれども。

そんなわけで、楽しく読んでゐる。
この本は全三巻なのださうで、つづきも楽しみだ。

それにしても、honto、すごいな。Amazonは全然見当違ひの本やものを勧めてくるのに。
丸善で源平ものとかそれに近いやうな本を買つたことはないぞ。
どうやつて分析したのか。
恐るべし、honto。

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