ふんだんに? いいえ、無駄に
「michiyoの編みものワークショップ」からハマナカのアメリーで編むポンチョを編んでゐる。
ほんたうは中細糸を引き揃へて編んでゐるポンチョも編みたい。
ポンチョ、好きなんだよね。
作品自体はどうでもいいが、アニメーション「母をたずねて三千里」でマルコが着てゐるやうなポンチョが。
或はマカロニウェスタンものでクリント・イーストウッドが身につけてゐるやうなポンチョが。
ちよいとメヒカン。
はたまたラテンアメリカン。
そんなやうなのが好きである。
さう思ふてゐたのだが。
どうも柄だけでなくて、ああいふちよつと「てろん」とした感じの服が好きなんだな。
以前から何度か書いてゐるやうに、「着つつ慣れにし」といふ感じで「てろん」とした服が好きだ。
たとへば綿のカットソーみたやうなの。えうするにTシャツ。
おろしたてではなくて、着て洗つて、てろてろつとした感じのがいい。
八月の終りごろ、タンスの整理をしてゐたら、「こんなの、買つたつけか」と首を傾げるやうな服が出てきた。
黒くて襟ぐりが大きいだぼつとしたブラウス(だらう、多分。あるいは「チュニック」とでもいはうか)で、肘から袖口にかけてやたらとふんだんに布が使はれてゐる。
何かをするたびに袖口が邪魔になるやうな服を、このやつがれが買ふだらうか。
まあ、ドルマンスリーヴのブラウスは買ふたりするけれど、この服は袖口にむかつてひろがつてゐる。
明らかに邪魔だ。
うーん、どうしてこんなことに。
しかし、真っ黒でとくに飾りがあるわけでもないからといふので、夏の法事に着てみた。
さうしてみたらこは如何に。
これがね、案外いいんである。
袖口が無駄にひらひらするあたりがいい。
思つたより邪魔にならないしね。
襟ぐりも袖口も広いから涼しいし。
いいもん買つたぢやん、昔のやつがれ。
そこで思つた。
えうするに、やつがれは、無駄に生地を使ふた服が好きなのである。
身体上の都合もあるものの、躰にぴつたり沿ふた幅よりは、ふんはり広がつてゐる服がいい。
考へてみたらタイトな服は好かんなー。
男の人のスーツ姿はいいと思ふ。あれは案外余裕があるものなのだ。さうでなければ内ポケットがあんなに充実してゐるわけがない。
女の人のスーツ姿はダメだ。余裕がなさすぎる。
着物も一見タイトなやうで、懐とか袖とかに余裕がある。そこがいい。
まあ、和服の場合はさうやつていい感じに余裕を持たせて着られるやうになるのには時間がかかりさうな気もするけど。
考へてみたら、マントも好きだなあ。インバネスとかもいいよね。とんび? 二重回しとんび。いい。
ポンチョもこの仲間に入る。
編んだポンチョといふと、長方形を編んで短い辺と長い辺をつなぎあはせる形のものがあるが、これはあまり好きではない。
襟から増し目をしながら編み下げる形がいい。まあ、裾から減らし目をしながら編み上げるでもいいけど。
「宇宙大作戦」とか、悪夢だよな、さうすると。
「宇宙戦艦ヤマト」もか。
なぜ未来の人々といふのは躰にぴたつとした服を着てゐるのだらう。
宇宙船の中で任務にあたる人々には、無駄に生地を使ふた服は邪魔でしかないのかな。
まあ、躰にぴつたりしてゐるがゆゑに、あみもので再現しやすいといふこともあるんだけどね。実際ゐるでせう、「スタートレック」の登場人物の服をセーターにしてゐる人とか。
きつと未来にもふはつとした服を着てゐる人はゐる。
さう思ひたい。
さて、ふんだんに生地を使つてゐる服が好き、はいいけれど、それつて不経済なんだよね。
普通に考へると、生地は少ない方がいいはずだ。
編むことを考へても然り。
躰にぴつたり沿つたセーターの方が余裕のあるセーターより編む量が少ない。すなはち消費する毛糸も少なくて済むし、早くできあがる。
そんなわけで、過去にもポンチョを編まうとして挫折したことがあつた。
編む量が多過ぎるんだよ。
そんなに早く編めないし、早く編まうとすると太い糸と太い針とを使ふことになる。重たくなつたりする。
まあ、重たい服は重たい服でいいんだけどね。
「仮面の男」でガブリエル・バーン演じるダルタニャンが室内を歩きつつ時折踵を返す場面がある。この踵を返すときに翻るマントの裾の感じが重たげで、裾の描く目に見えない線が実にステキなのだ。
しかしまあ、そんなものを編んでゐたら肩が凝つて仕方がないわ。
最近は、そのころよりはすこし早く編めるやうになつてきたし。
アメリー、軽いし。
いいんぢやないかな。
さうさう、アメリーは、なんとなくぬめり感のある糸だと思ふ。
化繊混だからあたたかさはどうかなあと思ふが、そこはこのポンチョを仕上げて確認してみたい。
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