« 予想はしない | Main | ポンチョ編めた »

Friday, 24 October 2014

最近少し書くやうになつた

日々のあれこれを書くノートがMoleskineに代はつて十日。
以前より書きつけるやうになつた気がする。

よくよく考へると、書く量は変はつてゐないんだけどね。
以前は5mm方眼で、罫線にあはせるやうに書いてゐたので字が小さかつた。
いまは罫線ありのMoleskineを使つてゐて、書き込む字も前のノートを使つてゐたときよりは必然的に大きくなる。
ゆゑに一度に書き込む量はそんなに増減してゐない。
でも、以前よりノートを開いて書き込む回数が増えた気がする。

「気がする」といふ書き方でわかるとほり、実際さうなのかどうかはよくわからない。
ノートを開いて書き込む回数だとか書き込むのにかける時間だとかをはかつてゐるわけではないからだ。
かう書いてゐて、「実はさういふ時間つてはかつてみるとおもしろいのかも」と思ふにいたつた、といつたところである。

さう思ふ所以は、さうだなあ、たとへば、先週の土曜日に新橋演舞場に行つたときのことである。
ここ一年ほど、幕間にその前の幕で見た芝居についてあれこれ書きとめるやうにしてゐる。
さうしないと忘れてしまふことが多いからだ。
歌舞伎座のさよなら公演のときに、「菅原伝授手習鑑」は「筆法伝授」がかかつて、このとき中村吉之丞の演じた役のせりふがことのほかうつくしかつた。
菅丞相からなんとか筆法を伝授されたい、と頑張る希世といふイヤな奴がゐる。日々自分が書いた書を菅丞相に提出するのだが、拙しといふことで伝授はされない。
「菅丞相に提出する」と書いたが、直接提出するわけではない。取次は吉之丞演じる老女がおこなつてゐる。
希世から云はれのない怒りをぶつけられても、「私の至らないばかりに菅丞相からよいお返事が得られなくて申し訳ない」といふやうな内容のことを、それは華麗に云つてのける、そのせりふがとてもよかつた。
とてもよかつたのだが、具体的にどういふせりふだつたのかはすつかり忘れてしまつた。
もつたいない。
その後「筆法伝授」はかかつてゐないし、どうやらかかりさうな気配もない。
惜しいことをしたなあ。

それでも、上演中にメモを取るやうなことはしたくない。
以前は試みてみたこともあつた。
しかし、隣の席にメモを取る人が座つたことが何度かあつて、それを見てやめてしまつた。
上演中にメモを取る人は、例外なく隣近所の人のことを考へてゐない。
平気でボールポンの尻を押して音を立てるし、ボールペンが紙についたりはなれたりするときの音にも無頓着だ。
鉛筆ならいいかといふとさにあらず。どうもメモを取る人といふのは筆圧が高いのか、書きつけるときにざらざらと耳障りな音を立てる。
ちやんと紙と筆記用具との相性をみて選べば、そんなことにはならないのに。
かくいふやつがれは、先達の研究結果などをもとに、できるだけ音のしない組み合はせの紙と筆記用具を選び、書いてみたりしたこともあつたのだが……
あつたのだが、しかし、上記のやうな人々と同族と思はれるのは業腹なので、やめてしまつた。

そんなわけで、幕間に必死に思ひ出せるかぎりを書きとめることになる。
いままで使つてきたなかでは、Moleskineが一番書きやすい。
表紙がかたいからである。
SmythsonのPanamaでも不都合を感じたことがないのは、かばんを台にして書けるやうにしてゐるからだ。
でもMoleskineならそんなことをしなくても書ける。

今回新橋演舞場では幕間にお手洗ひの列に並ぶことがあつた。
この感じだと、席に戻つてなにか書きつけてゐる暇はないかもしれない。
さう思つて、列に並びつつ立つたまま、Moleskineを開いて書いてみた。
筆記用具はプラチナ万年筆のポケット。
立つたまま書いても問題のない表紙のかたさ。
ちよつと矢立てになにごとか書きつける俳諧の宗匠のやうな気分さへしてくるではないか。
サイズもとくに横はこれ以上長いとチト書きつけにくい。
完璧だね。

立つたまま書くのだから、字は当然がたがたになるけどね。
もともとひどい字を書いてゐるところに立つて書くのだから、どうなるかは推して知るべし、だ。
かういふときに思ひ出すのが、「恐怖の谷」である。
シャーロック・ホームズがモリアーティ教授との対決の前に、ワトソンにメモを残す。
そのメモをワトソンが見て、「机に向かつて書いた字のやうに整然としてゐる」といふ場面があるんだね。
立つたまま書いただらうに、机に向かうつて書いた字のやうであるつて、どうやつたらそんなことができるのだらう。
こどものころ、心底不思議に思つた。
いまでも不思議である。

ところで、ロバート・ダウニー・Jr.版の映画ではモリアーティ教授はSmythsonの赤い表紙の手帳を使つてゐる。
当時はまだ出たばかりだつたのではあるまいか。
表紙は黒の方がらしい気がするが、まあ、そこはそれ、赤の方が目立つしね。
モリアーティ教授がSmythsonなら、ホームズはなにを使つてゐたのだらうか。
ちよつと気になる。

|

« 予想はしない | Main | ポンチョ編めた »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/35084/60535994

Listed below are links to weblogs that reference 最近少し書くやうになつた:

« 予想はしない | Main | ポンチョ編めた »