依存し過ぎ
9月12日のこと、午後五時半ごろ渋谷ヒカリエの八階に行くと、エスカレータをのぼりきつたところの前方が暗い。
さう、川本喜八郎人形ギャラリーが、閉まつてゐるのである。
扉前方にゐる関平のゐるケースも暗ければ、扉の奥も真つ暗だ。そして、そこには「Closed」の札がさがつてゐた。
この時のショックをどう表現したらいいだらうか。
わかつてゐる。
しよつ中行つてゐるぢやあないか。
そのとほりだ。
しかし、今回の展示になつてからはまだのんびりと見る余裕がない。
いつもなぜか時間に追はれて見てゐる。
とくにほかに予定がなくてギャラリーに行つたといふ日はいまの展示になつてからまだ一度しかない。
いつもだつたら東京に行くといへば「ぢやあヒカリエに寄つて行くかな」といふ感じで「隙あらばヒカリエ」状態だつた。
それが、ここのところ仕事に疲れてゐるせゐか、どうにも時間がない。
ギリギリまで家にゐて、用事が終はればそそくさと帰宅する。
ヒカリエに寄つてゐる余裕がない。
さうなんだよなあ。
余裕がないんだよなあ。
この日も国立劇場の文楽公演第三部に行く前にうまいこと時間ができたので立ち寄つたのだつた。
吁嗟、だといふのに、ギャラリーが閉まつてゐる。
もしかしたらなにかあつたのだらうか。
ギャラリー内の空調がイカレてしまつた、とか。
ケースの中の人形が倒れてしまつた、とか。
照明のせゐで人形がいたみまくつてしまつた、とか。
心ない客が写真を撮りまくつてゐるところを役人に見つかつた、とか。
あるいは、朝十一時に開館する係の役人が突然休んでしまつた、とか。
いろいろと悪い方悪い方に想像はむかつてゆく。
もうこのまま開館することはないのではあるまいか、とか。
そんなに気になるのなら翌日行けばいいのに、翌日は歌舞伎座の夜の部だつた。
その前に散髪に寄つたら一時間以上待たされてしまつた。
客がゐないからすぐ順番が来るだらうと思つてゐたら、やつがれの前の人々はみな名前を書いて外に用事を足しに行つてゐたのだつた。
そんなわけで、あはよくばヒカリエに寄つて、その足でGUCCIに向かひ、そのまま歌舞伎座に行かうとといふ思惑はすべてかなはなかつた。
食事さへしてゐる暇がなかつた。
あーあ。
さらにその翌日は別に用事があり、その翌日は荷物を受け取る約束をしてゐた。
そんなわけで、今日やつと行つてきた。
開いてゐた。
よかつたー。
あたりまへのことが、めうに嬉しい。
来館者ノートを見ると、9/12だけなにも記述がない。
一日閉ぢたままだつたのかな。
ほかの日には書き込みがあつたので、開いてゐたのだらう。
安心すると同時に、こんなに依存していてどうする、といふ不安もある。
まちつと、なくても大丈夫なやうにならないとなー。
などと云ひつつ、あと二ヶ月会へるかどうかの面々を見るにつけ、いまのうちに目に焼き付けておかなければ、と思ふたりするのであつた。
そんなやつがれは、いまでも初回の展示のときのお気に入りの位置に佇んでしまふことがある。
当時そこから見えた光景が、いまだに一番好きなのだつた。
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