手帳に書かれた記録を読む
来年の手帳も決まりつつある。
SmythsonのSCHOTT'S MISCELLANY DIARY (以下、SCHOTT'S) は来年もスケジュール帳として使ふ。スケジュール帳といふか、やつがれの場合は結局記録帳になつてしまふわけだが。
三年手帳は来年が三年目なのでそのまま継続。
どうしやうか迷つてゐたほぼ日手帳は、MOTHER2のカヴァがあるといふので使ふことにした。最初に競争に負けて「もう来年からはほぼ日手帳はやめやうかな」と思つてゐたところ、Twitterで再販のはじまつたことを教へてくれた方があつて、注文することができた。ありがたいことである。
三年手帳と用途のかぶるほぼ日手帳の使ひ道は悩むところではあるが、まあ、なんとかなるだらう。
いま三年手帳と連携させてゐるカンミ堂のピコットフセンを、ほぼ日手帳でも使つてみやうかな、とか考へてゐる。
ところで、SCHOTT'Sである。
記録帳といつても、「どこに行つた」とか「なにを見た」、「なにを読んだ」といふことしか書きこんではゐない。
感想めいたことは一字たりとも書いてはゐない。
だといふのに、パラパラと見返すと、これがなんだかおもしろいのである。
もともと、SCHOTT'Sは読んでおもしろい手帳だ。
ベン・ショットの集めた雑学が一冊の手帳のあちらこちらにちりばめられてゐる。
たとへば今日はE.E.カミングスの命日ださうだ。死んだのは1962年ださうである。
今年は午年。
25年前にはホメイニがサルマン・ラシュディに死の警告を与へ、天安門事件があつた。
50年前にはマンデラが終身刑になり、リチャード・バートンとエリザベス・テイラーが最初の結婚をした。
800年前、ブーヴィーヌの戦いがあつた。
そんな感じ。
メモページには著名人の発言や著作からの引用句が並んでゐて、これも読んでゐておもしろい。
絶対使ふことはないけれど、葉巻のサイズなんかも書いてある。
使用開始前からSCHOTT'Sがめくつて楽しい手帳であることは、以前も書いたとほりだ。
さうした雑学のあれこれを読むのももちろん楽しい。
でも、自分が書いたただの記録を読み返すのも悪くない。
たとへば、かばんの記録だ。
その日使つたかばんを毎日SCHOTT'Sに記録してゐる。
一度使ひはじめると、長いことおなじかばんを使つてゐるのがわかる。
週末には平日と違ふかばんを使ふことが多い。これは、社員証の入つたかばんを持ち歩かないやうにと考へてゐるからだ。週明けにさらに別のかばんに持ち替へることもあるし、金曜日まで使つてゐたかばんをそのまま使ふこともある。
そこの切り替へ加減がおもしろいんだなあ。自分のことなんだけれどもさ。
記録をつけてゐると、できるだけ満遍なく手持ちのかばんを使はうとするやうだ。
かばんの記録をつけはじめたのは、いらないかばんをあぶり出すためだつた。
でも、基本的には手元にあるかばんといふのは気に入つて買つたものである。
手放すのはしのびない。
さういふわけで、たまにSCHOTT'Sを見返しては「あー、あのかばん、最近使つてないなー」といふのでひつぱりだしてくる、といふ寸法なのである。
そこらへんの心の動きの透けて見えるあたりがおもしろさの所以であらう。
萬年筆のインキ補充の記録なんかもそれに近いかな。
だいたい中屋万年筆の十角軸は一ヶ月くらゐで補充してゐて、でもたまに遅れることがあつて、さういふときは「書けてないんだなー」と思ふ。
かういふ時は、読書記録も少なめで、さういへばこのころ仕事が忙しかつたんだよなあ、などと思ひ出すよすがになる。
こんな感じで、事実の記録だけでも、いろいろと思ひ出したり類推したりする材料になるものだ。
まあ、自分のことだからわかる、といふこともあるけれど。
「中世ヨーロッパの農村の生活」といふ本を読んだときも思つた。
事実が延々と書き連ねられてゐるだけなのに、この本はひどくおもしろい。
読書メーターの感想を見ると、統計ばかりでつまらない、とか、論文のやうで読んでもおもしろくない、といふやうなことばが並んでゐる。
人によつてまざまなんだなあ、と思ふ。
この本は、下手に物語仕立てになつてゐる本よりも、絶対におもしろい。
統計や裁判の記録などから、「人間つてやつぱり昔から変はらないんだな」といふことがよくわかる。
多分、事実の記録からその裏を読み取れる人、事実と事実とのあひだを埋める想像力のある人にはおもしろい本なのだと思ふ。
自分の手帳につけた自分の記録といふのは、想像しなくても記憶で事実と事実とのあひだを埋めることができる。
だからよりお手軽に楽しめるのだらう。
そんなわけで、来年もSCHOTT'Sはおなじやうに使ひつづけるつもりだ。
まちつと予定と記録との書き分けはしたいと思つて現在試行錯誤をしてゐるところである。
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