黒に紫
9/17から9/26までスウェーデンとフィンランドとに行つてきた、といふ話はすでに幾度か書いたとほりである。
道中の友はタティングレースであつた。
Lisbeth #40のMintでMary KoniorのMasqueradeを作つたり、佐賀錦の黒に黒いスリーカットビーズを通して七宝模様もどきを作つたりしてゐた。
タティングレースを持参したのは、荷物が最小限ですむからだ。
道中あみものをしやうかとも思つたが、航空会社に「機内に編み針を持ち込んでも問題ないか」を問ひあはせるのが面倒だつた。
なぜ道中あみものをしやうかと思つたかといふと、以前のヴェヴメッサについて書かれたblogなどを見て、ヴェヴメッサの会場ではあみものをしてゐる人もたくさんゐる、といふやうな話を見たからだつた。
まあそりやあ、会場でおりものをはじめるのはちよつとむづかしいよね。ヂヤンテイ織でもない限り。
と思つてゐたらこは如何に。
ヴェヴメッサの会場では、ベルトを織つてゐる人がゐた。
デモンストレーションではあつたやうだが、初日は髭のお兄さんが織つてゐて、二日めもおなじお兄さんが織つてゐたが、途中でお姉さんに代はつてゐた。織つてゐるものもお兄さんとお姉さんで別だつたやうに思ふ。
そんなわけで、やつがれも負けじと会場でビーズタティングなどしてみた。
どうしてここで「負けじと」になるのかが我ながら疑問である。
勝ち負けの問題ぢやないんだけどなー。
しかし、さう思つてしまふのだから仕方がない。
ところで、スウェーデンには蚕はゐないのださうである。
アルムグレン絹織物博物館で確認したから間違ひではあるまい。
養蚕の北限はもつと南なんだらうな。
一説によると桑の北限が樺太だといふことなので、まあ、スウェーデンでは無理だらう。
といふわけで、スウェーデン産の絹糸といふものは存在しない。
スウェーデンには絹糸の製糸工場もないだらう。
あるとしたら繭を輸入してゐるんだらう。
そんなことしたら、途中で成虫になつたりしない? するよねえ?
冷凍するといふ手もあるのかもしれないがそこまでするかなあ。
それでは、ヴェヴメッサに出展してゐた絹糸屋はいつたいなんだつたんだらうねえ。
確認はしてゐないが、売られてゐた絹糸自体はどこかよその国で紡がれたものだらう。
「絹で伝統的なものを織つたり編んだりしてね」といふことなのだらうか。
いまとなつては、わからぬ。
ウメオでは、「今年のマイブームは赤と黒ね」などと思つてゐた。
ウメオに行く前からさうだつた。
以前もちらつと書いた「赤は血の色 黒は罪の色」つてな感じだらうか。ヘドロの歌ぢやね。
北方民族博物館でも、それは変はらなかつた。
北方民族博物館の、織物や編み物をおさめた引き出しを開けて、百年以上前に編まれたものなどを見ると、赤と黒のものが多い。
解説によると、白と黒とで編んで、あとで赤く染めたのだといふ。赤い染料が貴重だつたから、とのことだ。
いいよねえ、赤と黒。
さう思つてゐたのだが。
アルムグレン絹織物博物館でちよつと変化した。
絹織物博物館にも引き出しがあつて、開けると工場だつたころに生産された織り地のサンプルがおさめられてゐた。
ここにあつた黒地に紫の織り地がとてもすてきで、ねえ。
光の加減ではほとんど紫には見えないやうな、茶色といふか、黒とあまり変はらないやうな色に見える。
それがやはり光の加減によつて、あでやかな紫色に見えることがある。
黒に紫。
いいぢやあないか。
しかし。
赤と黒の場合は、とくに素材にこだはららなくてもいいやうに思つてゐた。
毛糸でもいいし、綿の糸でもかまふまい。
だが、黒に紫は違ふ。
黒に紫は、絹でなければならない。
それも、光沢をもつたものでなければならない。
あやしく光る黒い地にほんのり紫が漂ふやうでなければならない。
あみものではむづかしいかなあ。
手元には佐賀錦の黒い糸がもう一巻ある。
紫を買ひに行かうか知らん。
そんなことを考へてしまふくらゐ、よかつたんだよなあ。
佐賀錦といふことは、当然タティングレースに使ふつもりである。
黒をメインに紫を散らすやうな感じのデザインを考へてゐるのだが……なにかよいものはないかのう。
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