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Thursday, 03 April 2014

にほんごであそぼ?

NHK教育TVの「にほんごであそぼ」に中村勘九郎とその子息・波野七緒八とが出演する、と知つてはゐた。
知つてはゐて、録画予約を忘れてゐた。
痛恨の忘却、と思ふてゐたら、こはいかに。
我が家の賢い録画機は、ちやんと録画しておいてくれた。
#こんなときばかりは「賢い」と録画機をもちあげるやつがれである。
おそらく、「にほんごであそぼ」の情報のどこかに「歌舞伎」といふ語句が含まれてゐたのだらう。
おかげで、二三年ぶりに、「にほんごであそぼ」を見ることができた。

「にほんごであそぼ」は、その放映開始直後は毎回録画して見てゐた。
出演してゐるこどもがみな可愛かつたからである。
ひとりひとり持ち味も違つた。
いま思ひ出しても、可愛かつたなー。
見続けてゐるうちに、野村万作が出てきたこともあつたつけか。

しかし、だからといつて、諸手を上げてこの番組を誉め称へてゐたか、といふと、さうでもない。
ひとつは、「雨ニモ負ケズ」をやたらと持ち上げること。
さらにいふと、宮沢賢治をやたらと持ち上げること。
そして、一番の理由は、世の国語教育に反してゐるやうに思はれること。

「にほんごであそぼ」のどこが世の国語教育に反してゐるのか。
いまの国語教育は、といふか、戦後の国語教育は、徹底して文語を廃してゐる。
無論、古典の授業はある。
あるけれども、やることといつて、古典文学のほんの一部分を切り取つてきて、読ませるだけである。
文法も多少は学ぶが、それだけだ。

社会も当然それに呼応してゐる。
以前から何度か書いてゐるやうに、ビジネス文書は口語で書くこと、と決まつてゐる。
文語を用ゐてはならない。
したがつて、「午後二時より第三会議室にて会議を行います」は、ビジネス文書としては誤つた書き方といふことになる。
正しくは「午後二時から第三会議室で会議を行います」だ。

だといふのに、「にほんごであそぼ」で取り扱ふ「にほんご」の多くは文語である。
今回見てみたら、以前に比べてその比率が増えてゐるほどだ。
まあ、もしかしたら録画機の録画した回はちよつと特殊だつたのかもしれないけれども、それにしたつて多い。

もしかしたら、昨今では国語教育でも「もつと古文をとりあげやう」といふ風潮があつたりするのだらうか。
さういへば、先日、小学校などで論語の音読をするのが流行つてゐる、といふ記事を見かけたつけか。
これは道徳の一環として読ませてゐるのださうだけれども、素読といふからには読み下し文を使つてゐるのだらう。
まさか「孔子先生はおつしやつた」などと読み上げてゐるわけではあるまい。

さうだとすると、ますます口語と文語との区別のできない人間が増えるんだらうな。
社内のメールに「午後二時より第三会議室にて会議を行います」と書く人は、自分が文語あるいは文語的用法で文章を書いたなどとは思つてゐない。
口語と文語との区別がついてゐないから、といふのも理由だが、一番大きな理由は、「気取つて書いてゐるから」である。
人間、気取つて書くと、文語や文語的用法の用語や文章を用ゐたくなるものだ。
なぜなら、その方が荘重な感じがするし、正式な感じがするからである。
それは、もう、人として仕方のないことなのだ。
「ビジネス文書に文語を用ゐてはいけない」といふ決まりは、さうした人の自然な感情に反してゐる、とは、以前も書いたとほりである。

したがつて、やつがれは口語と文語との区別もつかぬくせにやたらと「から」の意味で「より」を使ふやうな輩を憎んできた。
さう書きたいなら戦へ、と思つてゐるからだ。
なにと戦ふかつて?
もちろん、「ビジネス文書は口語で書くこと」といふ決まりと、だ。
それもしないで「午後二時より」とか書いてんぢやないよ。

かくいふやつがれは、職場では自分のできる範囲で文語は使はずに書くやうにしてゐる。
さうすると、なんとなく格に欠ける文章になる気がする。
仕方がない。
口語とはさうしたものだからだ。
それに、そもそも、文語で文章など書けやしない。
どんなに気取らうとしても、そこにおのづと限界がある。

「にほんごであそぼ」を見て育つた人は、どうなんだらう。
もつと自由に文語や文語的用法で文章を書けるやうになつたりするのだらうか。
それとも、TV番組にはそれほどの力はないだらうか。

その昔、「カリキュラマシーン」といふTV番組があつた。
奇妙奇天烈な学習番組だつた。
「カリキュラマシーン」に文語が出てきた記憶はないなあ。
まあ、算数も扱つてゐたやうな番組だつたからかもしれないけれど。

そこから考へると、世間では「もつと文語を」といふ動きがあるのかもしれない。

………………それはないか。

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