五年目
四年前の今日、中屋万年筆のピッコロモデル十角軸碧溜細軟を買つた。のらしい。
碧溜などはだんだん漆がすけてきて、下の碧の色があらはれてくる、ときいてゐたのだけれども、やつがれの手元にあるペンは、買つてきたときのままのやうに見受けられる。
ちなみに上の写真は買つてきて即撮つた写真だ。
これとなんら変はつたやうすは見えないんだよなあ。
毎日のやうに使つてゐるのに。
これはやはり後生大事に写真の袋の中に入れてゐるのがいけないのだらうか。
いけないのだらう。
使つてゐないときは基本的にこの袋に入れてゐるんだよなあ。
なぜといつて、くるくると紐をほどいてペンを取り出すやうすが、御殿女中が懐剣を取り出すときのやうすに似てゐるからだ。
「伽羅先代萩」で、八汐が千松を刺したとき、沖の井と松嶋とが、懐から懐剣を入れた袋を取り出して、紐をくるくるとほどく、あの様か好きなんだよねえ。
袋に入れてゐるのがいかんやうだ、と、遅まきながら気がついたのが去年くらゐで、それから日々なるべく袋から出しておくやうにはしてゐる。しかしあまり効果はないやうだ。
まあ、書きやすいから、いいか。
さう、書きやすいのである。
十月に見てもらふまではチト書きづらい状態になつてゐた、とは書いた。
しかし、それ以降は見違へるやうに書きやすい。
見てもらふ前だつて、このペンが一番自分らしい字が書ける気がしてゐた。
今もしてゐる。
色の方は、ほかの方々のやうすなどを聞くと、かなり時間がかかるもののやうなので、気長に待つことにしたい。
このペンを買ふときにペン先は細軟と中軟と悩んで、細軟にした。
その中軟のペンも、去年手に入れてしまつた。
もう買はないぞ、と、心に誓ひつつも、自分を信じられずにゐる。
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