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Thursday, 02 January 2014

飯田市川本喜八郎人形美術館 劉備と曹操 のうち曹操

12月21、22日の飯田市川本喜八郎人形美術館行きの話がつづいてゐる。

「漢末の群雄と連環の計」の向かひには、曹操と玄徳とのそれぞれの仲間たちがなかよく(?)並んでゐる。
そのあひだに、紳々竜々のゐるケースがある。
曹操軍時代の衣装だらうか、なにかへまをやらかしたのか紳々は片手を頭にやつてちよつとへこたれてゐるやうな恰好で立つてゐる。
そんな紳々の肩に手をおいて、竜々は励ましてゐるかのやうに見える。
紳々竜々は、ご存じ紳助竜介をもとに作られた人形だ。
それゆゑか、今回の飯田行きではそれほどでもなかつたけれども、大抵展示室に入つてきた人の反応はとてもよい。
「人形劇三国志」がなかなか再放送されないのは、この人形たちゆゑ、そしてモデルのふたりゆゑ、といふか、具体的にはその片割れゆゑ、なのではあるまいか、と、さう思はないでもない。
しかし、人形に罪はない。
「人形劇三国志」には「ことわざ三国志」といふおまけ的な番組があつた。
三国志由来の故事名言をとりあげて、「人形劇三国志」からその場面を流すといふ番組だつた。立間祥介が出演して解説してゐた。
このときスタジオに紳々竜々が出てきたことがあつた。
これが、とてもよかつた。
スタジオだし、とくにセリフのあるわけでもないから聲はなし。純粋に人形と人形遣ひとだけの世界である。
いやー、可愛いぢやん、紳々竜々。
これ以降、やつがれの紳々竜々を見る目が変はつた。
時折、音声を切つて、「人形劇三国志」を見る。
いいなあいいなあ、紳々竜々。
音声を切つて見ると、曹操なんかも妙に可愛いときがある。
おもしろい。

「劉備と曹操」のケースの一番左端にゐるのは許褚だ。
ここが定位置なのだらうか。位置からいつても人形からいつても、まるで仁王さまのやうである。
許褚は現在渋谷ヒカリエの川本喜八郎人形ギャラリーにもゐる。
ヒカリエの感想にも書いたやうに、ヒカリエの許褚はかなりリアルな顔立ちをしてゐる。
全体的な印象は変はらないんだけれどもね。ちよつとアンパンマンを思はせるやうな丸々とした顔で、ごまのやうな髭をはやしてゐて、目はちいさい。
「アタックNo.1」なら石松的なキャラクタ。そんな感じがする。
飯田の許褚の方がデフォルメが効いてゐる。ゆゑにより可愛い感じがする。
許褚が可愛くてどうする、といふ話もあるけれど、人形にはどこかしら可愛げのあるものなのであるよ。

その左後方が郭嘉。
うわー、郭嘉、前回と全然違ふ。
前回は「皮が乾いてひきつれちやつたやうな表情をしてゐ」た。
をかしい。
なにしろ我が家では孔明が出てきたときに「前の人の方がいい男だつたね」と語りあつてゐたほどなのだ。
つて、この話は何度も書いてゐるけれど。
ここでいふ「前の人」とはすなはち郭嘉である。
軍師で聲がおなじなので「前の人」といふ感じがしたのだらう。
「人形劇三国志」を見てゐると郭嘉はいい男なのである。
とくに第15回「関羽の決心」の、関羽とふたりだけでことばを交はす場面の郭嘉のやうすのいいことといつたら。
ここは関羽も実によくて、「男たちはわかりあつた」的なよさがある。お互ひに相手の云ひ分はわかる、受け入れられないけど、みたやうなところがいいんだよなあ。
それが、前回の飯田の展示では「いい男」のかけらもなかつた。
いやー、郭嘉、さうぢやないでせう。ちがふでせう。
ずつとさう思つてゐて、二度目に見に行つたときにやつと「ああ、ここからなら、なんとか記憶にある印象に近いかも」といふ位置を見つけたものだつた。
今回はそんな苦労をしなくてもいい。
なーんだ、やつぱり郭嘉さん、いい男なんぢやーん。
安心してさう思へる。
ところで郭嘉は今ヒカリエにもゐる。
作りなほされた郭嘉の方がいい男、かな。多分に歯がどれくらゐ見えるかによつてこの「いい男度合ひ」といふのは変はつてくるやうに思はれる。

歯の見え具合、といふと、その郭嘉の前にゐる曹仁のことも考へてしまふ。
曹仁のカシラの傾き具合といふか、顎の上げ加減はおそらく前回とそんなに変はらない。
前々回の展示のときは、曹仁は実に「ふつー」に見えたものだつた。
普通、といふか、おとなしさう、といふか。
周囲にゐる人形が個性的すぎるのだ、と、当時は書いてゐる。仲達とかさー。
しかし、前回の展示のときに曹仁の印象は一変した。
武将らしい猛々しさがあつた。
前々回と前回となにがちがふのかつらつらと考へてみるに、おそらくは顎の上げ加減とそしてそれによつて見える歯のやうすとなのではあるまいか。
さう思ふやうになつたのは、前回の展示を二度目に見に行つたときのことである。
顎があがつてゐるから目の前にゐるだらう敵をあふつてゐるやうに見える。
食ひしばつたやうな歯が見えるから々しく見える。
さういふことなのだらう。
といふわけで、今回の曹仁もそんなやうな見える。

郭嘉の隣は曹操。
今回の曹操はめづらしく目が前を向いてゐる。
さういへば今ヒカリエにゐる曹操もさうだな。
曹操の印象といへば、目は左右どちらかを睨むやうにしてゐる、だ。
これは目の動く人形全般にいへることかもしれない。
真正面を向いてゐる呂布とか、あんまし考へたことないな。今ヒカリエにゐる呂布はそんな感じだけれども。
周瑜も同様だ。キリキリと今にもキレさうなやうすで睨みをきかせてゐる印象が強い。
曹操が正面を向いてゐるとどう見えるのか、といふと、うーん、「もしかして、困つてることとか、ある?」と訊きたくなるやうな表情をしてゐるやうに見える。
多分に眉根が寄つてゐるからだらうな。眉根に藍隈を描くときの色で縦にちよこつと皺が描かれてゐるのだ。
ところでヒカリエにゐる曹操にはその皺が見当たらないやうに思ふ。ゆゑに真正面から見たときの印象もまた違ふ。
カシラの全体的な印象は変はらないんだけどね。曹操はかなりイメージのかたまつてゐる登場人物のひとりだつたんだらう。
あるいは放映中に「これだ」といふやうにかたまつていつたのかもしれない。
考へてみたら、人形劇にあまり出てこなかつた人形の方がつくりなほした後と前との印象がちがふ気がする。

曹操の前に夏侯淵。
夏侯淵もかなり眉根が寄つた顔立ちである。したがつて、真正面から見ると、困つてゐるかのやうな顔に見える。
なんでそんな世の中のなにもかもを背負つたやうな顔になつてしまつてゐるのか、とさへ思ふ。
動いてゐるときはそんなに気にならないんだけどね。やはり人形劇の人形は「動いてナンボ」なのかもしれないなあと思ふ所以である。
今ヒカリエにゐる夏侯淵の方がいい男に見えるのも、眉根の寄り具合が若干緩和されてゐるからなんだらうな。

曹操の隣は程昱。
程昱は前回の展示のときにもその衣装に目を奪はれたものだつた。
源氏香なのである。
あらあら、程昱さんつてばなんだかお洒落ぢやん、と思つてゐた。
今回、あらためてよくよく見ると、これまたなんだかいい衣装を着てゐることに気がついた。
焦げ茶だらうか、もしかするともうちよつと薄いでも渋い茶の地に、これまた渋い色の糸でちいさな花を散らした柄の衣装を身に着けてゐる。
ちいさな人形の中でもとくにちいさい程昱が着てゐてこの柄のちいささだ。
人間が着たらどれほどちいさく見えることか。
人形劇を見てゐても、時折程昱はとても可愛く見えることがあつて、「なぜだらう。ちいさいからかな」くらゐに思つてゐた。
おそらく、かういふちよつとしたところが可愛さを醸し出してゐるのだらうなあ。
程昱といへば八尺三寸の大男だけどね。だいたいマイケル・ジョーダンくらゐ、だらうか。マイケル・ジョーダンはNBAの選手の中にゐるとそんなにおほきくは見えないけれど、平均から考へたら大男だからね。
程昱は現在ヒカリエにもゐる。つくりほした程昱もまた小男だ。
梶原景時は拝領の頭巾を縫ひちぢめるが、人形劇の程昱はその背を盗んだのかもしれないなあ。殿様に遠慮して。

程昱の前が典韋。
典韋も現在ヒカリエにゐて、程昱の隣に立つてゐる。
偶然か、それともヒカリエの展示に引つ張られたものか。
ヒカリエの典韋は胸に八本の短剣をはさんでゐる。飯田は六本。そして、ヒカリエの短剣の方がなんとなく立派に見える。そのせゐで、「それぢやあいざといふときに抜けないだらう」と思つてしまふ。
概ねヒカリエにゐる人形たちの方が得物や沓などは立派だ。
照明もあるとは思ふけれども、ヒカリエの典韋の方がseriousな感じがする。とは、ヒカリエの感想のところに書いたとほりだ。
人形劇の典韋はかなり後々まで活躍するからね。そんな明るさが飯田の典韋にはある。

玄徳一行にたどりつくまでに長くなつてしまつた。
曹操とその仲間たちは魅力的だからなあ。

そして、まだまだつづく。

桃園の誓ひ・黄巾の乱・宮中の抗争についてはこちら
漢末の群雄と連環の計の前半についてはこちら
漢末の群雄と連環の計の後半についてはこちら

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