My Photo
September 2024
Sun Mon Tue Wed Thu Fri Sat
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30          

« 今年入手した萬年筆 中屋万年筆の昇龍 | Main | 飯田市川本喜八郎人形美術館 漢末の群雄と連環の計 »

Monday, 30 December 2013

飯田市川本喜八郎人形美術館 桃園の誓ひ・黄巾の乱・宮中の抗争

今月の頭に、飯田市川本喜八郎人形美術館で展示替へがあつた。
うかつだつた。
展示替へは来月だと思つてゐた。
考へてみればわかることだつたのに。
前回の展示替へは六月だつたのだ。
半年周期とすれば、今月だ。
むー。

来月以降、行けるときに行かう。
さう思つてゐたけれど、来月以降、暇があるかどうかわからない。
いまだつたら行ける。
そんなわけで、十二月の三連休に急遽飯田に行くことにした。

今回も、人形劇は「人形劇三国志」の人形ばかりである。
人形アニメーションは複数の作品から人形が集められてゐる。

展示室に入つて、最初にゐるのは玄徳・関羽・張飛の三兄弟である。
この美術館に飾られる人形劇三国志の人形は、基本的には人形劇に出てゐた面々である。
この三人はちがふ。
左隅に、「故小川英夫人所有」といふやうな説明が書かれてゐる。
人形劇三国志の脚本家だつた小川英に、川本喜八郎が送つたものらしい。
そして、おそらく、この三人は、つい先月までは渋谷ヒカリエの川本喜八郎人形ギャラリーにゐた。
ヒカリエでは「川本プロダクション提供」とかいふやうな説明がついてゐた。
並び順もひとりひとりの恰好も、ヒカリエにゐたときとほぼ変はらない。椅子に座して手に手に杯を持つて、乾杯するやうに掲げてゐる。そんな恰好である。
背景に桃の絵が飾られてゐて、これもおなじものだと思ふ。
ヒカリエにゐたときよりも、人形と人形との間隔が広いかな。
今回おもしろいのは、奥に入ると人形劇に出てゐた三兄弟もゐる、といふことだ。
比べて見ることができる。

ヒカリエで見てゐるといつも思ふのだけれども、おなじ人間がおなじ人物をもとに人形を作つても、一体一体全然ちがふ。
作る側の、作る対象のとらへ方が変はるんだらう。
あるいは、もともとこども向けの人形劇用に作つてゐたものと、さうでないものとはおのづと作り方も変はるのかもしれない。
また、人間が作るのだから、まつたくおなじものを二体三体と作ることはできない、といふこともあらう。
そんなわけで、中には「これはヲレの玄徳ぢやない」と思ふやうな人形もゐないわけではない。
今年は「これはヲレの軍師殿ぢやない」といふやうな孔明にも出会つた。
さういへば、飯田市川本喜八郎人形美術館の入口にゐる孔明もなんかちがふなー。

展示室の入口付近にゐる三人は、人形劇に出てゐた三人にくらべて、なんとなく大人つぽい感じがする。
とくに張飛に顕著にさういふやうすが見られる。
人形劇の張飛は可愛いからなあ。
髪の毛や髭も人形劇に出てゐた張飛の方がくせがある。
顔の形も人形劇に出てゐた方がまるつぽく感じる。目なんかもさうだな。

玄徳も、人形劇に出てゐた方がなんとなく可愛い。
やつぱり人形劇に出てゐたカシラの方が顔がちよつと丸いんぢやないかなあ。
目も人形劇に出てゐた方がぱつちりした印象がある。
もつと云ふと、人形劇に出てゐた玄徳はいかにも「主人公」である。それも、こども向けの英雄譚に出てくるやうな主人公然としてゐる。
展示室の入口付近にゐる玄徳は、よくも悪くも「すつとした顔立ち」である。
いまとなつては髭のないカシラの貴重な玄徳なのかとは思ふけれども、どうにも表情に乏しい。
表情の乏しさは飾り付け次第なのかもしれないとは思ふけれども。
この玄徳の衣装は好きなんだけれどもね。ちいさな子の寝間着かなにかに使はれてゐたのではないかと思はれるやうなやはらかさうな甘い水色の生地で作られてゐる。渋谷で見てゐたころから、いいなと思つてゐた。

張飛、玄徳と比べると、関羽には文句はない。
実はヒカリエで見てゐたころは「人形劇に出てゐた関羽の方がやうすがよかつたなあ」と思つてゐた。
今回、比べて見て、展示室の入口付近にゐる関羽も悪くない、といふことがわかつた。
もしかすると、ヒカリエで見てゐたときよりも、いろいろな角度から見られるので、さう感じるのかもしれない。
ヒカリエで作りなほした関羽を見てゐると、人形劇の関羽の方が目周りがすつきりしてゐるやうな気がする。人形劇に出てゐた方が切れ長の目をしてゐる。さう思ふ。
さう思つてゐて、しかし、今回飾られてゐる人形劇の関羽はさうでもないんだよなあ。
まあ、それも、見る角度ひとつでずいぶん変はるものなんだけれどもね。

三兄弟の次のケースにも三兄弟、ただし、張角・張宝・張梁の黄巾三兄弟である。あと盧植。
ケースの位置と中にゐる人間は前回と変はらない。
ただしポーズは若干ことなつてゐる。
全体的になんとなくおとなしい感じになつてゐる気がする。
張宝なんか、前回の方が妖しい感じがしたもんな。照明の関係か、前回の方が目の下の藍隈色のアイラインがよく見えたのだ。
張梁も、前回の方がラテンな雰囲気だつた気がする。
張角だけが、動きのある恰好をしてゐる。右手の人差し指をたて、腕を掲げてゐる。左手は腰のあたりにあてられてゐる。これでぐつと腰が入つてゐたら、トラボルタだ。

盧植は、全体的に前回とさう変はらないと思ふ。
思ふのだが、前回のやうな「ダンディなをぢさま」な雰囲気に欠けるんだよなあ。
前回の展示の感想でも書いたのだけれど、盧植は人形劇では厳格な感じのする人だつた。それを考へると、今回の展示の方が人形劇で受けた印象に近いと思ふ。
でも、前回の「ダンディなをぢさま」風な盧植が好きだつたんだよなあ。
うーん、おなじ人形だし、衣装も変はらないし、なにがちがふのだらう。
ほんたうに、ちよつとした飾り付けの変更が原因なのだとは思ふ。
それでこんなに変はつちやふのかー。

次のケースには十常侍の四人がゐる。
左から趙忠・張譲・蹇碩・段珪である。
張譲以外の三人は、先月までヒカリエに作りなほした人形が飾られてゐた。
趙忠は、ヒカリエにゐた人形とあまりかはらないやうに見受けられる。衣装も含めて、似てゐる。
飯田にゐる趙忠の方が若干ユーモラスな表情かな。
ここにゐる四人のうち、蹇碩をのぞく三人は白つぽい地に朱色の模様の衣装に黒に近いやうな深緑の衣装をかさねてゐる。趙忠と段珪とはヒカリエにゐたのもそんな衣装だつた。

張譲は、四人の中ではひとりだけ顔が白い。
しかも、ガラスかアクリルで作つた目が入つてゐる。
人形劇を見てゐるときは全然気がつかなかつたなあ。
これまで見た中では、黄蓋もおなじやうな目だつた。
なんか効果があつたか知らん。あとでみなほすことにしやう。
顔が白いせゐか、はたまた特徴的な表情をしてゐるせゐか、能面のやうな顔にも見える。
見てゐて「誰かに似てゐるなあ」と思ひ、ぢつと見つめてゐるうちに、江守徹に似てゐることに気がついた。
ただし、漆原教授のときの江守徹に、だ。
やはり「お面」みたやうな顔なんだらうな、張譲は。

その背後に蹇碩が立つてゐる。
ひとりだけ赤紫色の衣装だ。これはヒカリエにゐた蹇碩もさうだつた。
人形劇に出てゐた蹇碩は、先代の河原崎権十郎によく似てゐる。少なくとも、人形劇を見てゐたときはさう思つてゐた。
飯田にゐる蹇碩はそれほどでもないなあ。真正面を向いてゐるからだらうか。流し目をするときの表情なんかは山崎屋にそつくりなんだけどなあ。

段珪はヒカリエにゐた人形よりも老けて見える。
目の下の涙袋がより強調されて見えるからか。はたまた、皮膚の感じが疲れて見えるせゐか。
段珪も、飯田にゐる方がユーモラスな感じだな。
全体的に、ヒカリエにゐる作りなほされた人形の方がより「リアル」な感じで、人形劇に出てゐた方がデフォルメがきいてゐる気がする。

十常侍の隣は何后と親族。
ここの一群は前回の展示のときにもゐた。
何后は、どこか不満のあるやうすで立つてゐる。さういふ表情に見えるんだよね。前回もそんな風に感じた。

今回いいなと思つたのは、弘農王だ。
左手を真横にあげて、ちよつと動きのある感じがよい。
人形劇に出てゐたときの、わがままでなまけものなセリフを云ふときの恰好に近い。
カシラの角度もちよつとちがふのかな。
その横にゐる陳留王は、前回とほぼ変はらない。
どこか賢しげな感じのするところもおなじだ。
前回は陳留王の方がいいなあと思つたけれど、今回は弘農王の方がいいな。

何進は、前回よりも前垂の模様がよく見えてよい。
赤い前垂には、鳳凰の模様がほどこされてゐる。
前回は袖が邪魔をしてよく見えなかつた。今回は前垂を遮るものがない。
何進のくせになまいきだぞー、とは、前回も書いた。
今回はよりさう思ふぞ。

董太后は、前回は胸に一物あるやうな感じがしたものだつた。
今回はさうでもない。
これもまた、ふしぎな感じがする。
前回とさう変はつたやうすがあるやうには見受けられないからだ。
ただ今回は「太后」といふ雰囲気はあまりないかな。
孫たちの行く末を気に止む老婆、といつた感じがする。

といふわけで、以下つづく。

« 今年入手した萬年筆 中屋万年筆の昇龍 | Main | 飯田市川本喜八郎人形美術館 漢末の群雄と連環の計 »

Comments

Post a comment

Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.

(Not displayed with comment.)

TrackBack

« 今年入手した萬年筆 中屋万年筆の昇龍 | Main | 飯田市川本喜八郎人形美術館 漢末の群雄と連環の計 »