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Friday, 11 October 2013

とくにウソが、ね

"What I want to know is, out of all the stories you told me, which ones were true and which ones weren't."
"My dear Doctor, they are all true."
"Even the lies?"
"Especially the lies."

突然、「スタートレック ディープスペースナイン」の、この場面が脳裡によみがへつた。
質問者はドクター・ベシア。地球人の理想に燃えた若き医師である。物語の後半で、実は遺伝子操作されて生まれた、といふ事実が発覚するが、この時点ではまだ普通の人だ。
答へてゐるのは異星人の仕立屋であるガラック。爬虫類めいた容貌のカーデシア星人である。このせりふの出てくる回で、「エリム・ガラック」といふ名前であることが判明する。

TwitterのTime Lineを覗き、Facebookを見、人々のblogを読む。
目の前に流れてゐる発言の、どのくらゐが本心から吐き出されたことばなのだらうか。
時折、そんなことを考へる。
みな本心から思つてゐることなのか。
あるいは、本心とは正反対のことをつぶやいたものもあるのか。

さう疑問に思ふのは、やつがれ自身が心にもないことをここに書いたりつぶやいたりするからだ。

心にもないことを書く場合、ひとつには、「炎上を避けるため」といふ理由が考へられる。
あるいは、ある人の発言に反論したい、しかし思つたままに書いてしまつては相手や相手に同意する人、相手の友人たちを敵に回すことになる、といふ場合もあるだらう。
ここはひとつ、穏便に書いておけ。
さういふときもあらう。

また、「知られたくない」といふ思ひから、心にもないことを書いてしまふこともあると思ふ。
世界にむかつて発言しておいて、「知られたくない」とはなにごとだ、といふ向きもあらう。
だが、さうやつて仮面をかぶることは、通常の生活でもあることだ。

なぜ心にもないことを書くのか。
人づきあひの潤滑油。
それもある。
以前も書いたとほり、「自分の好きなものを知られるのは弱点を敵に教へることだから」といふのもひとつ。
あとは、まあ、心にあることばかり書いてゐたら、あつといふ間に書くことがなくなつてしまふから、といふのもひとつ。

千野帽子が「俳句いきなり入門」で書いてゐる。
人間の云ひたいことなど、数種類しかない。十七文字の俳句にこめられる云ひたいことなど、「自分を見て」にしかならない、と。

それは俳句にかぎつたことではない。
短歌でも漢詩でも短編小説でも、長編小説にしたつて、さうなのだ。
映画やTVドラマ、まんがにしてもさうだらう。
小説やドラマは、長さがあるからおなじことを何度も云つても、詳細がことなつてゐれば成り立つたりもする。
さういふことなのだと思ふ。

でも、世の中の大半の人は、本心しか、あるいは自身が本心と信じてゐることしか、つぶやかないんだらうな。
だつて、他人の発言をその人の心からの発言だと取る向きが多すぎるもの。

一度、心にもないことをつぶやいてみるといい。
さうすれば、Webの世界に流れる意見もまた、「ああ、この人も、思つてもみないことを書いてゐるのかもしれないなあ」と、受け取れるやうになるだらう。
自分とは意を異にするつぶやきを見ても、心穏やかに過ごすことができる、そんな風にもなれるかもしれない。

それにしても、「Especially the lies.」といふのはいいセリフだね。
これは本心。

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