飯田市川本喜八郎人形美術館 玄徳の周辺
六月に見に行つた飯田市川本喜八郎人形美術館についてのつづき。
次のケースは、「玄徳の周辺」。赤兎に乗つた関羽の背中が見えただけでテンションあがる。
ケースの後方一番左側にゐるのは馬超。かうして見ると、やつぱり馬超はほかの人とはちよつと違ふ感じだな。馬騰と馬休とは親子でよく似てゐたけれど、馬超はそれほど似てゐない。馬騰も馬休も目が大きかつたけれど、馬超はさうでもないんだよね。でも顔立ちは他の人と比べるとどこかエキゾチックなのかもしれない。
ちよつと、野球選手にこんな感じの人ゐるよね、といふ感じもする。ターコイズの衣装が似合ふなあ。
その手前が赤兎に乗つた関羽。とにかく背中が広い。まづはその大きな背中を眺めながら、ゆつくりとまはりこむ。鼻の先と頬のラインの見えるあたりで一旦立ち止まる。このアングルがいい。そこからさらにまはりこんで、横顔がまたいい。その関羽の横顔と赤兎の顔とのあひだ、V字になつた部分に沈思黙考の態の孔明が見える。この位置が今回の展示のベストアングルと見たね。立派な関羽と赤兎に、物思はしげな孔明といふとりあはせがいい。すこし視線を動かせば、馬超と白竜とも見える。関平が赤兎に隠れてしまふのがチト惜しい。
赤兎はやはり他の馬とはちがふ。立派。でも、ヒカリエにゐた赤兎の方が大きかつたな。たてがみや尾の感じが豪華だつたんだよね、ヒカリエにゐた赤兎の方が。しかも、ヒカリエの呂布と赤兎との方が動きがあつたんだよなあ。
といふわけで、その隣が関平。正面向いて立つてゐるとちよつと阿呆面。人形劇の関平さんは「いい人」だからなあ。あまり賢しげな感じはないんだらう。前回の展示のときも書いたけれど、関平はちよつと衣装が褪色しかけてゐて、それもチトあはれな感じ。
その後ろが孔明。ちよつとうつむき加減なところがいい。黒い衣装。ヒカリエにゐた孔明のものよりもさらに薄地のやうに見える。薄地だけどちやんと模様が入つてゐる。前回の展示ではちよいと上向き気味で、しかも勝手に「死に態の孔明」と呼んでゐる白い衣装だつたから、今回の方がいいと思ふなあ。
中央は白竜に乗つた玄徳。髭のかしら。前回も髭だつたし、今回はなくてもいいのに、と思はないでもないが、五虎大将勢揃ひだし、さういふわけにもいかないのか知らん。
白竜の横顔がとても可愛い。こんなに可愛かつたらうか。目がつぶらで、王子さまの白馬つて感じ。なんてーんですか、Prince Charmingの馬はかくもあらんかといつたところだ。馬上の玄徳がまたやうすがいいんだよね。凛々しい。玄徳のかしらの元は源太だと思つてゐたけれど、髭ありは孔明かもしれないなあ、なんぞと益体もないことを考へたりした。
その前に淑玲。これが実に可愛い。淑玲は、人形劇のときも、ものすごく可愛いときと、なんだかもつさりとしたときとあつたものだが、今回の展示では文句なく可愛いな。ちよつと上を向いた感じ、胸のあたりで腕を抱いたやうな感じ。可愛い可愛い。
さらにその前は、左手に趙雲、右手に孫乾が、片膝をついて控へてゐる。
「孫乾!」と、個人的にかなり盛り上がる。実は飯田に行くちよつと前に突然孫乾を見たくなつて「玄徳の失敗」の回を見返したところだつたんだよね。
趙雲は槍を手挟んでいる。これがまた惚れ惚れとするやうないい男で、なあ。ちよつとうつむき加減なところがまたいいつて、うつむき加減が好きか、ヲレ! どうやら好きらしい。かしこまつてゐるわりにはどこか勇壮な雰囲気もある。
一方孫乾は、趙雲に比べるとかなり大人しげな印象。肩当てがないから、かなあ。肘の張り具合もおとなしいのか。あと、孫乾は剣を腰から下げてるだけだしね。ちなみに、孫乾の兜には「大吉」の文字が刻まれてゐる。他の人の兜も確認したが、文字が刻まれてゐるのは張角の「黄」だけで、他の人は花模様だつたりした。うーん、なぜ大吉? しかも孫乾。人形劇の孫乾は、ちよつと困つたやうな「いい人」つぽい顔つきがいいねえ。
そのうしろは龐統。今回はなにも銜へてゐない。ぐるりとまはりこんでもよく見えないやうな位置にゐるのが残念である。そのとなりにゐる黄忠とあはせて、今回はあまりよく見えなかつた。残念。
淑玲の横に美芳。張飛の方を見てゐる心、なのだらうか。まはりこんでちよつと後方から見たときの美芳が実にいい。見る角度によつて全然ちがふんだよねえ。
一番右手前方が馬上の張飛。赤兎・白竜と比べるとチト落ちる馬なのが残念といふか可哀想といふか。あと、蛇矛の構へかたのせゐか、いろんなアングルから見るのがむづかしい、といふのがチト惜しまれる。
その後ろが黄忠。
前回の展示のときも思つたけど、かうして見ると、黄忠つてダンディなおじ(い)さま、だよなあ。思慮深さう。あんな、老いぼれと云はれて怒つて出陣するやうな、そんな短気なところは微塵もないやうに見える。ふしぎなものである。
この玄徳のケースと曹操のケースとのあひだに、メカ馬のケースがある。
#妾馬ぢやないよ。
はじめて見るかも。
騎馬での行軍を実現するための、コンピュータ制御の馬の一群、とでも云ふべきか。サイズは、人形アニメーション用の人形よりさらに一回りくらゐちいさいと思ふ。
各馬の足下にあるモータを入れたケースも見られる。これが、一頭一頭中身がちがつてゐる。ただ走るだけだつたり落馬させたりといつたちがひによつて、中身もちがふ、とのこと。
騎馬兵もひとりひとり装ひも頭の形などもちがふし、馬も尾の感じから装飾品まで異なつてゐる。馬にはいろんなブレードが用ゐてあつた。人間は表情もひとりひとりちがつてゐた。
実によくできてゐる。動いてゐるところも見たかつたなあ。
« 野望と無謀との間で | Main | 飯田市川本喜八郎人形美術館 曹操の王国 »
Comments