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Wednesday, 03 July 2013

ほんとのことを云へばいいのに

店員と会話をしなければならない店は苦手である。
具体的には美容院とか化粧品売り場のカウンタとか役所とか銀行とかである。
分類としては、美容院や化粧品売り場と、役所と銀行とにわかれる。
美容院や化粧品売り場では、なぜかついついウソをついてしまふことが多い。
役所や銀行ではさういふことはない。
さういふ違ひがある。

さういや、自動車の教習所でもさうだつたな。
はじめてあたる指導員は、まづ書類を見て、「どこそこ出身なんだ。いいところだよね」と云ふ。
やつがれの本籍は祖父の家のあつたところで、その祖父自身も祖母と暮らすやうになつたころには上京してゐた。
本籍地には行つたことがない。
その住所にはもう家なんかないのださうである。
最初のうちは、いちいちさう説明してゐた。
そのうちめんどくさくなつた。
「いいところだよね」と云はれたら、「さうなんですよ」とかなんとか、いい加減なことを答へてゐた。
「ぼくもそこの出身なんだよねー」とか云はれることがなくて、幸ひだつた。

美容院とか化粧品売り場はまたこれとはちよつとちがふ。

「かういふことを云つた方が、喜ばれるだらうか」
返事をするまへに、そんなことを考へてしまふのである。

こちらが相手をentertainする必要はまつたくない。
まつたくないはずなのだが、気がつくと、「かう云つておくべきか知らん」などと考へてゐるのである。
疲れる。

正直に話せばいい。
わかつてゐて、それができない。
ありのままを話すと、相手を不快にするのではないか。
さういふ不安がある。

はじめて美容院に行つたときに、美容院さんと話をして、「ムースとか使ふといいですよ」と云はれ、「さうなんですかー」と受けたら、相手は非常に微妙な表情をした。鑑越しに見た。
「それくらゐ、当然だらう」
「そんなことも知らないのか」
さういふ表情に見えた。

考へてみたら、この「さうなんですかー」も、半ばはウソである。
整髪料を使つたらいいことは、わかつてゐた。
わかつてゐたが、専門家のことばだから、ひとまづ「さうなんですかー」と受けた。
すなほな態をよそほつたのである。

さうか、そこからすでにまちがつてゐたのか。

なるほど、相手をentertainするため、といふよりは、相手にあなどられないやうにするために、ウソをついてゐるのだな。

そりや疲れるだらう。

blogに書いたつもりで、書いてゐないことがある。
去年博多座に行つたときのことだ。
夜の部の終演後、せつかく博多に来たのだから、と、居酒屋に寄つてみた。
ひとりだつたこともあつてカウンタ席にとほされた。
このとき、席をゆづつてくれた二人連れがゐた。
店の大将に、「観光ですか」と訊かれて、一瞬迷つた。
ほんたうのことを云ふべきか。
あるいは、「さうなんですー」とか答へておくべきか。

いつもだつたら、「さうなんですー」とか「ともだちを訪ねて」とかウソを云ふところである。
芝居を見に来たとか云つたら、芝居好きだとバレてしまふではないか。
どうも昔から好きなことの話を避けたがつてしまふ。
好きなことの話をしやうとして、どうもタイミングをつかめずに話せぬままになつてしまふ。
さういふところがある。

このときは、しかし、正直に、「博多座に芝居を見に来た」と答へた。
すると、さきほど席をちよつとゆづつてくれた客のひとりが、「ありがたうございます」とか云ふてきた。
なんだらう、わざわざ芝居を見に来て、博多にお金を落としてくれてありがたうといふ意味なのだらうか。
話をして、謎が解けた。
その人は、博多座の音響さんだつたのだ。

そのあとは、問はず語りに、そのときの公演のこと、その他の公演のこと、役者のことなど、いろいろ話してくれた。
正直に「芝居を見に来た」と云はなければ、聞くことのできなかつた話である。

このときに、「正直に云つた方がいいんだ」と学んだはずだつたんだがなあ。
気がつくと、またウソをついてゐる。
これはもう習ひ性なのか。

だいたい、本籍のところでも書いたが、「めんどくさい」といふのが問題だよな。
人と会話をするのに「めんどくさい」つて、どういふことよ。
また、自分のことを知られたくない、好きなことを知られたくない、といふ思ひが先走るんだらうな。
どうせそんなに会ふ相手ではない。
知られたつてかまはないのになあ。

柴田元幸が書いてゐた。
世界中どこに行つても本屋とレコード屋(いまはCD屋か)は落ち着く、と。
なぜなら、店員がちかよつてきて、「いまこれが売れてるんですよ」とか「お客さんにはこれがお似合ひですよ」などと云つたりしないからだ、といふ。
ほんとにそのとほりだ。
本屋やレコード屋、それに文房具屋では、店員がちかよつてきて、「こちらがお似合ひだと思ひますよ」などと云ふことはない。
なんていい店なんだ。

本屋とレコード屋との問題は、買ふものによつてなにが好きなのかバレてしまふ、といふことか。

だからバレたつていいぢやんよ。

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