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Monday, 29 July 2013

勤め人は手芸をたしなんではならぬのらしい

あみもの教室は、なぜか平日にしか開催されない。

「あみもの教室」と書いたが、手芸系の「お教室」は全般的にさうである。
カルチャースクールであつても、土日に教室のある手芸は少ない。

教室ばかりではない。
原毛屋に顕著だが、なぜか土日は休みといふ店が多い。
日曜日も営業してゐるといふ店はまれである。

土日には生徒や客は来ないのだらうか。

それが以前からふしぎでならなかつた。

なにを隠さうやつがれは、「お教室」のたぐひが苦手である。
「お教室」形式よりも「授業」形式の方が落ち着く。
さういふたちである。

それでも、once in a while、「お教室に通つてみやうかなあ」と思つたりすることもある。

そこからあれこれ調べると、通へさうな日時にやつてゐる講座はほぼないことに気がつく。

平日の午前中や昼下がりに、そんなに人が集まるのだらうか。
さう思ふくらゐ、月曜日から金曜日のどこかで開かれる教室ばかりである。

ヴォーグ学園を見てもらふと一番わかりやすいかもしれない。
ヴォーグ学園くらゐの規模になると、土曜開催のクラスも当然あるのだが、圧倒的に多いのは平日の昼間のクラスだ。
しかも、ヴォーグ学園は、日本各地にある。

そして、ほかの手芸系のお教室やカルチャースクールも、おなじ傾向にある。

もしかして、月曜から金曜に勤めに出てゐるやうな人間は、手芸をたしなんではいけないのだらうか。

そんな気持ちになるくらゐだ。

まあ、さうなのだらうなあ。
と、東京駅は八重洲口を出たあたり、地下鉄でいふと京橋付近にある、越前屋に行くと思ふことがある。
越前屋は日曜日は休み、といふことで、土曜日に芝居見物の帰りにふらりと立ち寄ることがある。
いつ行つても、それほどにぎはつてゐない。
そもそも、土曜日のあの界隈がにぎはつてゐない。
ちよつと行けば高島屋や丸善がある。そちらはまあまあの人手だ。
また、反対方向にちよつと行けば銀座だ。
越前屋付近はどちらかといふとオフィス街なのかもしれない。

ずつとそんな風に思つてゐたのだが。
あるとき、平日にちよつと時間ができたので、越前屋に寄つてみたらばこはいかに。
なんだか店内が込み合つてゐるではないか。
どうやらおなじお教室に通ふ奥様方が何人かでつれだつて来店してゐるのらしい。そんなグループが二つくらゐあつた。
しかも、そのうちの一つのグループは、お教室の先生も同行してゐて、なんだかものすごい量の刺繍用の布を購入してゐた。

さうなのか。
土曜日の越前屋は仮の姿。
ほんとの姿はこれなのだ。
あなたの知らない越前屋。
まさにそんな感じであった。

それでちよつと謎がとけた。
手芸系のお教室が平日にしか開かれないのは、その方が生徒さんが集まるからだ。
土日しか時間のないやうな人間は、そのたいせつな時間をつぶしてまでお稽古ごとに通はうなんて思はない人が多いのだらう。
考へてみたらやつがれだつて、土日がつぶれたら芝居に行けなくなる。
芝居とお教室とどつちをとるか、と云はれたら、いまはまだ芝居だものなあ。

また、手芸系のお教室や原毛屋などが土日は営業しないのには、教へる側や店側の都合もあるものと思はれる。
先生や店主には家族がある。
土日は休みで家にゐたりするのだらう。
それで、土日は家族と一緒に過ごしたいとか、あるいは単に目が離せないとか、さうした理由があるのにちがひない。

どうやらやつがれがお教室に通へるやうになるには、まだまだ相当時間がかかりさうだ。
そして、そのころには頭も手も指先もすつかりかたくなつてしまつて、通ふ意義も見いだせなくなつてゐることだらう。

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