川本喜八郎人形ギャラリー 「黄巾」と「桃園」
渋谷ヒカリエの川本喜八郎人形ギャラリーに行くと、人形劇三国志は物語序盤の登場人物を見ることができる。現時点では。
「黄巾」といふことで張宝、張角、張梁の三兄弟、「桃園」といふことで、関羽、玄徳、張飛の三兄弟がならんでゐる。
張宝、張角、張梁は、現在飯田市川本喜八郎人形美術館に、人形劇に出てゐた面々が飾られてゐる。
比べてみると、ヒカリエにゐる三兄弟の方が立派に見える。主に衣装、かな。ことに沓はヒカリエの方がいいものに見える。
人形劇三国志に出てくる親子兄弟は互ひに似てゐない場合が多い、とは、以前も書いた。
曹嵩と曹操、曹操と曹丕・曹植、孫堅と孫策・孫権・貞姫、玄徳と劉禅、いづれも似たところがないやうに見受けられる。
張宝、張角、張梁も一見似てゐるやうには見えない。
張宝はどちらかといふと切れ者のやうな顔立ちで、張角はとらへどころのない尊師タイプ、張梁はソンブレロをかぶつたらそのまま西部劇に出てきさうな顔をしてゐる。
だが、よくよく見てみればこはいかに。
三人とも、顔の輪郭がそつくりではないか。
えらの張つたところが実によく似てゐる。
さうなのか、さういふ細かいところを見ないとダメなのか。
ほかの親子兄弟の似てゐるところはまだわからないが、今後探していきたいと思つてゐる。
玄徳、関羽、張飛の鎧がお揃ひのやうに、張角、張宝、張梁も衣装はちよつとお揃ひつぽい。
鎧の前垂れとでもいふのだらうか、その部分の模様がうろこのやうなのだ。張宝だけはちよつと模様に丸みが足りなくて煉瓦のやうに見えなくもないが、でもお揃ひ感が出てゐる。
飯田の人形との比較で云ふと、張宝は、飯田にゐる方が妖術使ひつぽい。といふのは、目の下にうつすらと藍隈を描くときに使ふやうな色で線が入つてゐるからだ。渋谷の張宝にはその線がない。
張角は、飯田の方がとらへどころのない尊師つぽい。渋谷の張角は、もつと強い表情を浮かべてゐる。
張梁はどちらもそんなに変はらないかな。上にも書いたけれど、飯田の張梁も渋谷の張梁もソンブレロが似合ふラテンな男だ。
「桃園」は、桃園の誓ひの場面を再現したやうになつてゐる。
関羽、玄徳、張飛の背後に桃の花の絵を描いたバネルがはられてゐて、三人とも座してそれぞれ杯を手にしてゐる。
関羽は、人形劇でこんな衣装で出てきたことがあるかなあ。ちよつと記憶にない。緑といふか黄色といふか、カーキといふかそんなやうな色合ひの、丈の長いガウンのやうなものを着てゐる。これがお大尽然としてゐて、実にやうすがいい。顔も、前回ヒカリエに飾られてゐたものとちがつて、かなり人形劇のときに近い。
玄徳の衣装は人形劇のときに近いが、もつとやはらかさうな素材である。色は水色。あのやはらかさうな感じはなんだらう、もともとこどもの着物ででもあつたのかな。顔も人形劇のときよりもつと大人しげな感じだ。
張飛の衣装は人形劇のときとあまり変はらない。鎧を脱いだらこんな感じだつた。胸毛もの見えないなあ。顔は人形劇のときよりずつとおとなびてゐる。ひとりだけ杯を高くかかげて、乾杯の音頭を取つてゐるかのやうに見える。
上にも書いたけれど、この三人のところだけ、物語の中の一場面を再現したやうになつてゐて、実にいい。前回もこんな展示はなかつた。場面の再現にはスペースが必要だつたりするのかもしれないが、かういふ試みは今後も見てみたいなあと思つてゐる。
先日も書いたが、玄徳、関羽、張飛の前には「(有)川本プロダクション」といふ札が見える。川本プロダクションから借り受けたものなのだらう。
前回の展示のときにも当然この三兄弟はゐたわけだが、前回の展示はチト期間が長過ぎた。見る側からすると、もつと見たいといつたところではあつたけれど、照明であちこち傷むからね。定期的に入れ替へてあげないとかはいさうだ。
さうわかつてはゐても、玄徳・関羽・張飛のゐない人形劇三国志なんて、といつたところだつたんだらう。この三人がゐないとしまらない。
これも以前書いたが、放映当時のNHKセンター入り口の展示にはさうした心遣ひはなかつたけれどもね。出番の終はつた人形が有名無名に関はらず飾られてゐた。
さういふ展示もありかなあ、といふ気もする。
NHKセンターの場合は、収録中だつたといふこともあるし、一月に一度くらゐは人形の入れ替へがおこなはれてゐたやうに思ふので、それで成立してゐたのかもしれないが。
ところで、展示替へと同時にギャラリーの中に液晶のモニタがおかれるやうになつた。
ずつと「調性中」といふ紙が貼られてゐたが、つい最近、「スライド準備中」に変はつた。
いつから見られるのか、楽しみにしてゐる。
また、去年は八月に人形劇の中から選りすぐり(だらう)の話を五つ上映する会があつたけれど、今年はないのかな。
あつたとしても、「DVDで見ればいいんぢやない」といつたところではあるのだが。
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