衝動に身をまかせる
土曜日のことである。
突如、猛烈にタティングレースで七宝模様を作りたくなつた。
で、作つてみたのがこれである。
糸はLisbeth #40のBoysenberry Dk。今の時期にはちよつと濃すぎるだらうか。
シャトルはDavid Reed Smithに頼んだ2インチのbrass spikeつき。木はbirdseye mapleである。
「あまちゃん」の録画を見ながらひたすら結んだ。
日曜日も結びつづけて、なんとか一周完成した。
それで満足するかなあ、とも思つたが、勢ひで次の一列に手をつけてしまつた。
なぜいきなり七宝模様だつたのか。
いまかぎ針編みで七宝模様に近い模様を編んでゐるから、かなあ。
似て非なるものなので、もつと七宝模様に近い形を作つてみたかつたのではないか、と、思つてゐる。
ほかに理由が考へられるとしたら、日々七宝模様を目にしてゐるから、なのかもしれない。
いまを去ること三年前、「筒井康隆、筒井康隆を読むvol.2」といふイヴェントがあつて、ここで山藤章二のイラストのついた筒井康隆の手ぬぐひを入手した。
この手ぬぐひに、七宝模様が染め抜かれてゐるのである。
まだ使つたことはないのだが、最近ちよつと出してきて、日々目につくところにおいてある。
せつかく買つたんだから、使ふかなあ。
そんなことを考へてゐる。
もう一カ所、よく行くところで七宝模様を目にする。
渋谷ヒカリエだ。
川本喜八郎人形ギャラリーに行く際、エスカレータに乗ると、天井といふかエスカレータの下部といふかに、七宝模様が彫り込まれてゐるのだ。
金曜日も、見てきたばかりだつた。
いづれにしても、かういふ衝動は大切にしたい。
作りたいと思つたときが作りどきだ。
完成しやうがしまいが、心のおもむくままに作る。
また楽しからずや。
ところで、冷静になつて考へてみると、一番根源となる理由は、藤戸禎子の「華麗なクラシックレース タッチングレース」なのではないか。
そんな気がしてきた。
この本には、七宝模様の替襟が掲載されてゐる。
以前から一度作つてみたいと思つてゐるのだが、「替襟? 使ふか?」と思ふと、二の足を踏んでしまふ。
去年あたりから、かぎ針編みのレースの替襟の本はずいぶん出てゐて、「クロッシェレースの衿飾り」などは思はず買つてしまつて、この本からなにか編みたいなあと思つてゐたりするのだが。
しかし、替襟。
使ふか?
否。
答へは否、である。
「衝動は大切にしたい」と書きながらなんだが、ブレーキを踏むところは踏む、といふことも大切だ。
時間は有限だ。
衝動を活かすためには、ブレーキを踏むことも必要である。
ま、云ひわけだけどね。
そんなわけで、この週末に作つてゐた七宝模様は、「華麗なるクラシックレース タッチングレース」の替襟を参考にしてゐる。
五模様ごとにリングとブリッジの目を二目づつ増やしてゐるのである。
藤戸禎子の替襟では一模様ごとに増やしてゐたやうに思ふ。
さうすると、まあ当然ながら末広がりといふか、さういふ模様になる。
衝動的に作りながら、この末広がりの模様を活かせないかなあ、とか考へてゐる。
問題は、ブリッジが長くなつてくると、きれいに形をととのへるのがむづかしい、といふことだ。
それと、最初のうちは一つめのリングのピコをどのくらゐの長さにするか、といふことにも悩んだ。
そんなわけで、できあがつたものは、かなりへろへろしてゐるが、それでも最近自分が作つたものに比べたら、ましかな。
猛烈に作りたい、といふ衝動が、いつもより気を遣つたタティングのもとになつてゐる。
そんな気がする。
昨日買つた「カンタン!タティングレース」については、また日を改めて。
« 「クールビズ」は夏の幻想 | Main | 敬して遠ざける黒インク »
Comments