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Tuesday, 11 June 2013

Easy? Simple?

「かんたん」とはどういふことだらうか。

まつたく心得がなくてもなんとかなる、といふことか。
ちよつとした空き時間にできる、といふことか。
あるいは労することなくできる、といふことか。

この春はタティングレースの本が四冊も出版された。
#これを「この春はタティングレースの本が四冊も出版した」と書いて平気な人もゐる。
#イヤな世の中である。

タティングレース、はやつてるんだな。
全然実感ないけど、はやつてゐるんだらう。
あるいははやらせやうとしてゐるのか。

タティングレースは、ある意味では「かんたん」な手藝である。
まづ、道具が少ない。
タティングシャトルと糸と鋏があればなんとかなる。
あとは針とかボンドとかあるといいけど、なくてもまあなんとかなる。

また、場所も選ばない。
藤戸禎子の話に、子育てをしてゐるころはエプロンのポケットにシャトルを入れて、こどもが公演で遊んでゐるのを見守りつつ手元でシャトルを動かしてゐた、といふエピソードがある。
先日、「タティングレース(CreAtorクリエイター06) 」出版記念のタティングレース展に行つたときも、店番の空き時間にタティングにいそしんでゐる人がゐた。
タティングレースが「かんたん」だからできるわざだ。

カンタン!タティングレース」は、例によつて、タティングシャトルに糸を巻くところからはじまつて、タティングレースの基礎を詳細に説明した本である。
「カンタン」なので、ひとつひとつのモチーフもそんなに手のこんだものではない。
それでゐて可愛い。
表紙の作品など、「ちよつと作つてみたいな」と思はせるやうな可愛さだ。

これだけタティングレースの本が出版されるといふことは、タティングレースをたしなむ人もそれなりに増えてゐるのだらう。
さうした人々に、「シャトルに糸を巻く方法」は必要だらうか。
スティッチの結び方も、こんなに詳しくなくてもいいんぢやあるまいか。
図の見方だけ載せて、あとはあまり使はないやうな技術だけ紹介すればいいのでは?

類書があまりにも多いせゐか、どうもさう思はずにはゐられない。

確かに、あみものの本には作り目の仕方が掲載されてゐるものだし、かぎ針編みの本には場合によつてはこま編みの編み方とか長編みの編み方なんかが載つてゐる場合もある。
だが、載つてゐるとしても巻末におまけていどについてゐるものだ。
減らし目や増やし目、場合によつては引き返し編みやとじかたはぎかたはちよつと詳細に出てゐたりして、これにはいつも助けられたりするけれども、それだつて主要な内容といふわけではない。

どの本にも糸の巻き方や結び目の作り方が本の冒頭にカラー写真で紹介される、といふことが、タティングレースの現在の姿をあらはしてゐる。
あるいは、「タティングレースの本はかう作らねばならない」といふ思ひ込みが出版社側にあるのかもしれない。
そんな気がする。

この本に掲載されてゐるモチーフやブレードは、その題名のとほり「かんたん」かもしれない。
しかし、たとへば表紙の上から三つめのブレードなど、モチーフひとつひとつについて糸始末をするのだらうか。
さう考へるの気が遠くなる。
糸始末を減らす方法は、この本などでもつとタティングレースに慣れ親しんでから、といふことなのかな。
それはさうかも。

未だ気分上向かず、といふことで、この本からもまだなにも作つてはゐない。
でも、見てゐるだけで楽しいので、とりあへずいいか、といふ気はしてゐる。

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