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Friday, 31 May 2013

飯田市川本喜八郎人形美術館の展示室 その六

飯田市川本喜八郎人形美術館に行つたのは、先月末。
ここ以外とくにおとづれたところはないが、ぶらぶら街歩きなどはしてみた。意味もなく飯田線の踏切をわたつてみたり、とか。
牛乳とリンゴジュースがめちやくちやおいしかつたなあ。牛乳は、前日の夕方からその日の朝しぼつたものを低温殺菌した牛乳、といふことだつた。
りんごの季節に行つて、りんごを食べてみたい気もする。

さて。
展示室の一番奥には、人形アニメーション用の人形が飾られてゐる。
リカちやんよりさらに小さい印象があるのは、頭身のせゐかもしれない。ここにゐる人形の方が、実の人間の頭身に近い。すなはち頭がちいさいので、頭の大きいリカちやんよりずつと小さく見える。

来館したをり、上映会のあつた「道成寺」から女が飾られてゐた。
通常、道成寺ものでは僧・安珍に娘・清姫が惚れる、といふことになつてゐる。
川本喜八郎の「道成寺」では、僧に惚れるのは若き寡婦だ。
その方が、情念だとか執着だとか、さういふものを表現できる、と思つたのかもしれない。
映像からはわからないが、実物はかなりちいさい。
眉はそりおとされてゐて、眉根がすこし寄つてゐるやうな感じがする。
人形アニメーション用の人形は、自立しないと撮影できないので、躰のバランスもむづかしいし、動かすために服の裾や髪の毛などにはワイヤが仕込んであるのだといふ。
よくよく見ると、たしかに髪の毛から髪の毛とおなじくらゐ細いワイヤがとびだしてゐるのが見える。事前に仕込んであるといふ話をきかなければ見逃してゐただらう。それくらゐ細いワイヤだ。
女は、三つ鱗の衣装をつけてゐる。蛇体のこころなのだらう。
「道成寺」では、僧を追ふ女は、日高川に飛び込んで、蛇体になる。頭部は竜のやうだが、手といふか足といふかがないので、やはり蛇だらう。
僧の潜む鐘に巻きついて燃やしてしまふが、このとき、血の涙を流す。おそろしいはずなのに、泣く姿はなんともあはれだつた。

映像では、最後、鐘を持ち上げると、中には白骨となつた僧があらはれる。すでに粉々になつてゐたのだらう、風に吹かれて、骨は散り散りになつてしまふ。
ここは、ピンセットですこしづつくづしながら撮影したのださうな。

女のとなりには「いばら姫またはねむり姫」の姫がかざられてゐる。
椅子に腰掛けて刺繍をしてゐる。
さう、刺繍をしてゐる。
実際には、ちやんと布地に針を刺して、刺繍をするさまを映像にしたのだらう。
こまかい。
刺繍の模様とか刺しかけのやうすとかをぢつくり見てしまふ。

一番奥にゐたのが「鬼」といふ作品から兄と弟。
今昔物語から着想を得た作品、とのこと。
兄の顔は文楽のカシラにそのままありさうな感じ。文七、かなあ。弟の方は、まちつとアレンジされた感じの顔をしてゐる。
病気の母を置いて猟に出た兄弟は、森の中でなにか獣に襲はれる。退治てみると、家で臥せつてゐるはずの母に似てゐた、といふ話。
兄も弟も、身長自体はリカちやんより高い。顔がちいさいからそんな気はしないけれど。
どちらも手の造形がすばらしい。手の形がすてきなのだ。指の関節まで再現されてゐる。この指がまがつて弓を持つたり矢を射たりするのだらう。

その隣が「冬の日」から芭蕉と名古屋の連句好きたち。
こちらの人形は、リカちやんとシルバニアファミリーの中間くらゐの大きさ。シルバニアファミリーに近い、かな。
どれもどれもユーモラスでとても可愛らしい。三国志の人形などは、番組への愛ゆゑに「ほしい」と思ふけれど、「冬の日」の人形はその愛らしさゆゑに「ほしい」と思つてしまふ。
もとが連句といふことで「冬の日」といふアニメーション自体も連句仕立てになつてゐるといふ。
見てみたいなー。

出口の一番そばに「火宅」。
地獄に落ちる莵名日処女は、しかし、うつくしく佇んでゐる。その表情も穏やかだ。
莵名日処女に激しく求愛する血沼丈夫と小竹田男は、その両脇で、思ひつめたやうな表情で立つてゐる。手にはそれぞれ紅梅と白梅とを持つてゐる。
ちよつと出づらくなつてしまふ。

展示室はこんな感じ。
展示室の外には、トロフィーや川本喜八郎の年譜、人形のできるまでのパネルと実際の型や衣装などが飾られてゐる。
人形としては、こども向け番組やCMなどに用ゐた人形が飾られてゐる。

こども向けとして、ヤンヤンムウくんや三匹のこぶた、「風の子ケーン」、「シンデレラ」、「おおきなかぶ」の人形が並んでゐる。
ヤンヤンムウくんは、通常の顔と泣き顔、笑つた顔の三点が並んでゐた。
横にヤンヤンムウくんを操演する若き日の川本喜八郎の写真がかざられてゐた。この川本喜八郎が実になんといふか、可愛いのである。あやつる人形が可愛いからか知らん、とか考へてしまつた。

写真だけだが、ゴロンタくんなど「おかあさんといっしょ」の着ぐるみ人形もあつた。
ゴロンタくんは川本喜八郎作だつたのか!
「おかあさんといっしょ」の着ぐるみキャラクターの中で、オールタイムベストはじゃじゃ丸くんなんだが、次はゴロンタくんなんだよなあ。

展示室の外の人形などは、それほど入れ替はらないと聞いたので、あとは次に行つたときに書くつもり。
学芸員の人が教へてくだすつた話なんかも、なにかの折りに。

その他の展示については以下のとほり。
飯田に着くまでと、エントランスの謎
紳々竜々と「特異なキャラクター」、「江東の群像」
「玄徳の周辺」
「曹操の王国」
「許昌の都と漢中・蜀・南蛮」
女人平家 義経をめぐる人々

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