春の別れ
いつかこの日が来る。
遅かれ早かれ来る。
いや、近い将来、来る。
わかつてゐてもショックのやはらぐことはなかつた。
渋谷ヒカリエにある川本喜八郎人形ギャラリーに展示されてゐる人形が入れ替はるのだといふ。
先週行つたときに知つた。
現在の展示は4/18まで。4/19から4/25のあひだ休館して展示替へをし、4/26から再度開館する。
本来は、もつと早い時期に入れ替へを行ふ予定であつたといふ。
客から、「できるだけ長いこと見たい」といふ要望があつたとのことで、入れ替へがこの時期になつたのださうだ。
わかつてゐる。
照明で、人形は傷む。
できれば、長いこと展示しない方がいいのだ。
川本喜八郎人形美術館も、定期的に展示替へしてゐるのらしいし。
でもなあ……
足しげく通つて馴染んだ相手がゐなくなると思ふと、どうしやうもない喪失感に襲はれてしまふ。
ギャラリーには、展示がどう変はるのか説明はなかつたが、上記リンク先には書かれてゐる。
平家物語は、保元の乱や平治の乱を中心にした27体を展示する。
三国志は、桃園の誓ひと黄巾の乱を中心にした14体。
現在は、平家物語がギャラリー入り口の金王丸も入れて14体、三国志が18体だから……あれ、だいぶ増えるな。どうするんだらう。ケースを増やすんだらうか。
この情報を知らなかつた先週は、「平家物語は僧形の清盛とか、平家の公達、頼朝や義経とかいろいろ考へられるけど、と思つてゐた。
#実際はこの予想は裏切られたやうだが。
#それとも牛若丸とか、出てくるかなあ。
しかし、三国志。
もう何度も書いてゐてくどくで恐縮だが、ギャラリーにゐる三国志の面々は人形劇に出てゐた面々ではない。
川本喜八郎がその晩年あらたに作りなほしてゐたものである。
ほかに、作りなほしてゐた人形がゐるのだらうか。
どこかで、「張遼を作りなほしたいと云つてゐた」といふ話を聞いたことがあるのだが、ほんたうかなあ。
人形劇三国志では、張遼は活躍しなかつたからなあ。
また、おそらく平家物語の人形はもともとは川本喜八郎人形美術館に飾られてゐたりもしたのだらう。
でも、三国志はどうなんだらう。
この、作りなほした人形たちも、飯田にゐたのだらうか。
渋谷を去つたのち、飯田で会へる日もあるのだらうか。
それに、玄徳とか、人形劇序盤の髭のない若者の姿のものも、作りなほしてゐたりするのか知らん。
総入れ替へしたら、玄徳・関羽・張飛も、曹操も、孔明もゐなくなつてしまふのか知らん。
さういへば、放映当時のNHKセンター入り口の展示はそんな感じではあつたけれど。
NHKでは人形劇を放映してゐるあひだ、NHKセンターの入り口に人形を展示してゐたものだつた。三銃士のときもしてゐたと思ふ。だいたい五体くらゐ飾られてゐて、定期的に入れ替へられてゐた。だから、脇役ばかりのときなどもあつたりした。撮影もあらうから、主要な登場人物を飾るわけにもいかない場合もあつたらう。
そんな感じになるのかな、と思つたが、どうやら玄徳・関羽・張飛は残るやうだな。
さうだよなあ。玄徳のゐない人形劇三国志なんて、考へられない。
正直云つて、玄徳の死んだところで番組を終へるべきだつたと思つてゐるくらゐである。
すると、三国志も今度は人形劇に出てゐた面々をつれてくるのだらうか。
曹操なんかは衣装が照明に焼けてかなり色褪せてゐるといふ話だけれど、玄徳・関羽・張飛ならそんなこともないのかもしれない、衣装の色的に。
いづれにしても、楽しみ半分さみしさ半分、といつたところか。
全然関係ないけど、友との別れをうたつた漢詩ばかりが思はれる。
広い中国のことだから、今度はいつ会へるかわからない。
これが今生の別れかもしれない。
そんな詩をいくつもいくつも思ひ出してしまふ。
ただ水の流れの行く果てと空とのあはひを見つめるのみ。
そんな心持ちなのだつた。
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